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芸術家・清宮質文の世界

芸術家・清宮質文(せいみや・なおぶみ 1917-1991)は、透明感と清澄さを醸し出すような木版画やガラス絵を創作しました。下の画像は、1963年の木版画「蝶」です。藍色の空間に青い壜が置かれ、その上を2頭の蝶が浮遊しています。

清宮が求めたものは自分自身の精神世界をつくることであり、表現方法としての版画に手段を借りているといいます1)。われわれ鑑賞者は、作品を通して創作者と同じ体験を共有できたとき、目に見えない創作者の内面の感情、人間の内面のドラマを体験することができます2)。

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清宮質文・作「蝶」1963年*

この作品と出会って間もなく、倉敷リハビリテーション病院でその分身に遭遇しました。下の画像は、ニューロリハビリテーション室で訓練中の女性です。ファッションは、とりわけ女性にとって、内面を表現する創作品です。女性の青色の整った長方形の後ろ姿に、清く澄んだ心を感じました。

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訓練中の女性

蝶がどこにいるのか探してみると、女性が愛用している杖の中にいました。清宮の世界との畏るべきシンクロニシティです。

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女性の愛用の杖


追伸
京都府大山崎町の大山崎山荘美術館(表題画像)では、2019年12月14日〜2020年3月8日まで「清宮質文ー限りなく深く澄んだ空気」展が開催されており、館内のカフェでは、作品「蝶」をイメージした特製スイーツを味わうことができます。
それは、京都リーガロイヤルホテルのパテシェが創作した清宮の内面世界です。スイーツの正方形の整ったたたずまいに、清宮の内面世界の透明感が表現され、さらに、濃い青の色彩が芸術表現と格闘した彼の苦悩と心の翳りを伝えています。

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作品「蝶」をイメージした特製スイーツ


文献
1)清宮質文・著, 現代版画工房・製作: 清宮質文作品集. 南天子画廊. 1986 

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2)尾崎彰宏:ゴッホが挑んだ「魂の描き方」ーレンブラントを超えて. 小学館. 2013, P13-34


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