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北野礼子さんによる小さなシュールレアリスムの世界

アートギャラリー・ビョルンのマダム、ハイジさんから一枚の油彩を紹介されました。それは、北野礼子さんによる7.3×4.2cmの小品「鍵Ⅲ」でした。

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一見した感じは、雑誌の切り抜きのように見えて、あまり魅力を感じない作品でした。すなわち、鍵を描いた写実的な油絵で、ちゃんと陰影もつけてあるのですが、鍵を写真に写して、さらにそれを印刷物にしたような、のっぺりとした感じです。

かつて、千葉市のホキ美術館で見た、「写実画」は、印画紙に焼いた写真以上にリアリティがあって、輝いていて、飛び出してきそうな躍動感・エネルギー感がありました。

一方、この絵は、忠実に描いてあるのに、現実感が無く、額の向こうの異界にあるかのようです。こちらが引き込まれて行きそうな吸引力があり、恐怖感を惹起されます。

だから、これは「写実画」ではありません。

どんな技法が用いてあるのかを探るために、画像に撮って、画像ソフトでコントラストを上げてみました。

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画像処理前

IMG_1801のコピー

コントラストを上げた後

すると描かれた鍵は現実感を増します。その他にも様々な技法が凝らしてあるのでしょうが、どうも意図的に、超絶技巧によってコントラストを縮小して描かれた作品のようです。

ですからこれは、常識や信念を疑ってみることを提起する「シュールレアリスム」の作品ではないでしょうか!

とりわけ、固定観念を破り、思考の自由さを求めた、ルネ・マングリットに通じる世界だと思われます。

それが、目立たない形で奥ゆかしく秘められているのが、なんとも知性的な作品です。

店内で作者の北野礼子さん、ご本人にお会いして、お話しをする、とても幸福な経験にも恵まれました。


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