見出し画像

フェルメール作「天秤を持つ女」に秘められた寓意性〜岡島光彦さんの陶器と、maruさんの猫と、藤原康彦・葉子夫妻の立体額絵による再現

フェルメール作「天秤を持つ女」*では、日常の一場面として、女性が天秤をもち、それを眺めているのが描かれています。

IMG_3868のコピー

フェルメール作「天秤を持つ女」(1662-65)ワシントン・ナショナルギャラリー蔵

しかし、女性の背後に画中絵「最後の審判」が掲げられていることから、単なる風俗画ではなくて、寓意性を含んでいると考えられています。すなわち、「最後の審判」は、通常、大天使ミカエルが、死者の行き先を天国か、あるいは地獄か、審判を下すために、人々の魂を天秤にかける情景が描かれるので、女性が行っている行為は、魂を量る行為を暗示するのではないか、と言うのです。

再現にあたっては、画中で濃紺のガウンを着て白い頭巾を被った女性は、岡島光彦さんによる陶器の小物入れで表現しました。青い陶器の本体が濃紺のガウンで、白いガラスの蓋が頭巾です。光が当たっている女性の顔は、蓋に金箔が施されている面で表します。

天秤は、maruさんによる背筋を伸ばした猫の像を天秤棒に見立て、配置しました(猫が乗っている小さな木の箱は、川月清志さんによるものです)。

画中絵は、藤原康彦・葉子夫妻による立体額絵で置き換えました。立体額絵では、窓辺に座っている白い猫が、雲が浮かんでいる昼間の現世界から、月が出ている夜の異界を眺めている様子が描かれています。猫が座っている場所は、二つの世界の境目と言えます。最後の審判が行われているのは、この世とあの世の境目ですから、立体額絵に、最後の審判に通じる世界観が表現されていると考え、セレクトしました。

IMG_3810のコピー

この、ちょっとだけ無理のある空気感は、いかがでしょうか?
日本の古典芸能である能舞台に通じる、と筆者が信じる、見立ての世界像に共感してもらえたら、嬉しいです。


引用文献

*栗原紀行・他編:「静謐と光の画家フェルメール」サンエイムック 時空旅人別冊. 三栄書房, 2018年10月7日発行. P86-87

IMG_3525のコピー2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?