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ハイジさん作オーブン陶土造形「クラウン・スワン」による竹久夢二・作「遠山に寄す」の再現〜恋人・彦乃への鎮魂〜

「遠山に寄す」は、岡山出身の総合芸術家、竹久夢二(1884〜1934)が、昭和6年(1931)、48歳のときに発表した、二曲一隻の屏風作品です。シルクハットとステッキ姿で背筋が伸びた、若々しく見える夢二と、結核を患い死別した恋人、彦乃が寄り添っているのが描かれています。

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竹久夢二・作「遠山に寄す」(1931) 夢二郷土美術館(岡山市)・蔵 1)

二人は、大正3年(1914)に出会っていますが、彦乃の父の猛反対によって手紙のやりとりも思うようにならず、彦乃が「山」、夢二が「川」の暗号で文(ふみ)を交わしていました2)。
彦乃は大正9年(1920)に、25歳で結核で亡くなります。「遠山に寄す」は、晩年の夢二が、彦乃への鎮魂を込めた作品になっています。画中で、山を見つめるのは夢二、川を見つめるのは彦乃です。山と川はお互いの暗号を見つめていることになります。

再現にあたって、彦乃・役には、ハイジさん作のオーブン陶土による造形「クラウン・スワン」を登用しました。クラウン・スワンは、首が短い異形(いぎょう)の白鳥です。

夢二・役には、木村陶峰・氏による、屹立した真っ直ぐな備前焼の花入れを用いました。

彦乃が見つめる川は、江戸時代の藍染めの古布を敷いて表現しました。夢二が見つめる山(榛名山)は、垣内真希子さんによる山を描いた小さな版画で置換しました。佇んでいる二人の近くに立つ木は、小橋順明とQuiet Houseによる花差しに、我が家のベランダで育てている山椒の枝を挿して表しました。

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この空気感はいかがでしょうか?

とりわけ、クラウン・スワンによる彦乃の演技には、迫真に迫るものが感じられます。

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彦乃の表情

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クラウン・スワンの表情

ハイジ作品に込められた深い悲哀に共感してもらえたら、意義深いです。


引用文献
1)古川文子・編:夢二郷土美術館所蔵 竹久夢二名品100選. 東方出版. 2007. P84-85

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2)同 P169

追伸

メーキング映像です。

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