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小河原常美さんによる羽島焼の陶器の紹介

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羽島焼きは、倉敷の東の郊外にあって、昭和二十一年(1946年)に始められました。小河原 常美さんは窯元の三代目です。飾り気のない用の美を追究した器でしたが、常美さんは新たな表現を…
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小河原 常美さんによる羽島焼きの器〜悲しみとの対話〜

倉敷では、倉敷市玉島の円通寺で修行をした禅僧・歌人、良寛さんにちなんで、芸術祭が行われました(全国良寛大会記念作品展:令和3年5月9日〜20日)。会場のひとつである倉敷本通り商店街のギャラリー・メリーノに訪れてみると、とても悲しい器と出会いました。 小河原 常美さんによる、羽島焼きの「大葉天目釉茶盌」です。漆黒の肌の上に、落葉樹の落葉が焼き込まれた茶の湯用の天目茶碗です。両手に取って眺めていると、悲しみが降り積もってきます。この器は、なぜ、こんなに悲しいのでしょうか。 同

5人の作家(小河原常美、小島陽介、阿部眞士、岡本達弥、白神典大)の器を用いた、鏑木清方による美人画の抽象的再現

鏑木清方(かぶらき きよかた)、1878(明治11年)-1972(昭和47年) は、江戸時代の浮世絵が生んだ美人画を、現代の美人画として展開し、情と品を感じる格調高い作品を遺しました。その代表作の2点、「築地明石町」と「朝涼」を抽象的に再現してみました。 まずはじめは、「築地明石町」1)です。 朝霧の立ちこめる背景から、文明開化を経た流行の出で立ちで、内面に教養を兼ね備えた女性の姿がくっきりと浮かび上がっています。朱色の鼻緒と、わずかにのぞいた被服の裏地の紅絹と、口紅とが

倉敷の花屋・アトリエトネリコおすすめのアネモネ、モナリザブルーです。倉敷・羽島焼き三代目、小笠原常美さんによる空色の花器に生けたところ、みるみる颯爽としたブルーの花びらが開きました。まるで花器に込められていた色香が、勢いよく湧き出したかのようです。

倉敷の新しい色彩

倉敷美観地区に隣接した、倉敷市鶴形にある建築です。建物の色どりが、初夏の風のようにさわやかです。 伝統の色あいを踏襲しながら、新しい色あいを創造しているのが解ります。 倉敷を中心に活動する、ガラス作家・平井宏明さん創作の器(右)と、倉敷の隣、矢掛町にある陶磁工房よし野・横山ゆきえ さんによる木蓮を描いた磁器(左)です。 お二人がそれぞれに苦労して創造した色は、江戸時代に織られた藍染めの古布によく映えます。 倉敷酒津焼・兜山窯の岡本達弥さん(左)と、倉敷・羽島焼窯元の小

くすんだ花、テナチュールの美しさの探究

倉敷市西中新田の花屋、アトリエ・トネリコでは、ちまたで人気のある鮮やかな花ではなくて、あえて、もの思いに沈んだような、落ち着いた花を扱っています。 店内の、中間色の花々のなかで、特に気になったのが、テナチュールという、くすんだ色のばらでした。店主の岬 美由紀さんによれば、花の名は、フランス語で「ストレートティ」を意味するのだとか。佐賀県のFINE ROSEさんが栽培されているそうです。 さっそく買い求め、谷𠮷孝之さんによる備前焼の花入れに生けてみました。 花は、梅鼠(う

芸術文化都市・倉敷を支える「あわい」の力〜倉敷本通り商店街、ギャラリー・メリーノと喫茶ウエダ〜

JR倉敷駅南口に降り立ち、天満屋側から道路を渡ると、倉敷センター街商店街の入り口があります。 アーケードに入って南に進むと、えびす通り商店街へと続き、いつも観光客が大勢並んでいる、とんかつの人気店「かっぱ」があります。 アーケードの屋根を抜けたところに、阿智神社の西参道入り口があり、そこから倉敷美観地区まで続いている屋根のない通りが「倉敷本通り商店街」です。 ですから、倉敷本通り商店街は、倉敷の商業ゾーンと芸術文化ゾーンとの「あわい」位置しています。 「あわい」とは、