記憶切断装置②

(続き)


ある時、私は

ナニかについて対応しようとした。


今までの経験を基に

どうすればいいかを考えようとしたとき。


あれ?と思った。


過去が、

今までの経験がうまく思い出せないのだ。


霧の中のような

もやの中のような

映像や声がぼやけて


過去、それが起きていたとき

自分がどう対処したのかがよく分からない。


必死になって思い出し、

何とか対処したが

ぐったりしてしまった。


そんなことが何度かあり

私は、過去を思い出そうとするのを

やめるようになっていった。


何しろ、

思い出すのが本当に大変なのだ。


毎回毎回、

ものすごく体力を使う。


そして、過去を使わず生きるようになって数ヶ月たったとき

人生が激変していることに気づいた。


あの金属のせいだ。


あれは、

過去を切断する装置だったんだ。

そう思った。



それまでの私は

過去の失敗が邪魔をして

やりたいことがあっても

怖くて踏み出せずにいたのに

その記憶がなかったことになっているから

何も思わずやることができるようになっている。



過去を忘れて生きるのは

生まれ変わった感覚と似ている。



あの金属は

生まれ変わりの役目をするものだったのだ。


※※


最初こそ、私は女だったが

その後、いくつかの人生を夢に観た。


男だったことが多く、

その人生の多くは

人生を謳歌し、

いわゆる成功者といわれる人生を送っていた。

それらの人生を歩んでいた私は

自分の人生に満足し

満ち足りていて

チャレンジすることを

楽しんでいたようだった。


※※







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?