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リノベの準備。「片付け」という、現実逃避レベルの宿題でた。が、やってみたら今リノベが必要な意味がわかった気がした。

「3月から作業が始められそうなので、それまでに2階の荷物を片付けておいてくださいね」と、建築家 石井さんがニッコリ。
約1ヶ月あるものの…ぐっちゃぐちゃな状態の倉庫を前に、しばし頭が真っ白。
ちょっとずつ荷物をズラしながら…とかってダメなんですかねえ。

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「終わるわけねえ」と思ったが。

取り掛かってみて、「あ、今リノベが必要な意味があったんだな」とじわじわ。

家電や家具を買った時に入っていた箱、ぜーんぶ取ってあったので、説明書か保証書っぽいものだけ抜き出して潰して捨てた。
たぶん全部で50箱ぐらい。
これだけでだいぶスッキリ。
袋や箱などの紙材は1階へおろす。

重たいものはおじいさんに手伝ってもらい。

というか、ほぼほぼおじいさんにあちこちに運び入れてもらった。

そして、これを機に父がしていた商売の帳簿とかも捨てても問題ない古い書類や伝票は捨てることに。
これまでの分、なんの整理もせずにただただ段ボールにつっこまれていた。
個人情報にあたる部分はシュレッターをかける。
そのためにはひと通り目を通す。
黒い紐で結いてある束をひとつひとつほどきながら。
膨大な領収書やお客さんとの取引の控えとか。
両親が血を吐く思いで働いてきた証を切り刻んでいるような気持ちになり、涙が溢れたり。
捨てて良いものか父にも確認してもらいながら。
「俺らは本当に働いてきたなあ、今思うと信じらんねえな」
「この方たちが来てくれて食事に連れて行った時だ!あの時は興奮したなあ」
「あ、これを完済した時に家の抵当はずれたんだよな」などなど。
父の記憶がよみがえる。

膨大な書類の仕分けや処分が終わり、紙材に手をつける。
そして再び、
「この袋は、お母さんと新商品を考えていた時こんなことがあって大変だったんだ」
「この箱はお父さんが業者さんと進めていたのに、こんな横ヤリが入って頓挫したんだ」
「この商品が売れてた頃、ずいぶんあの人には世話になったんだ」
今まで聞いたこともなかったような話が聞けたり、「手動かして!」とかこぜりあいもしながら、いい時間だった。

そして倉庫の2階にある大きなタンス。
短い間だったけど、事情があって母方の祖母と同居していた。
祖母が亡くなった後、祖母のわずかな荷物を捨てられなかった母。
開けることのなかったタンス1竿。
運ぶためにも引き出しを1段ずつ取り出さねばならず。
貴重な物とか入っていたら後で怖いから、父に開けていいか確認。
父も開けたことなかったみたいで「全然いいよ、だいたい何が入ってるの?」と。
一緒に祖母のタンスを開けてみる。
祖母が愛用していた巾着や眼鏡、メモ帳みたいな小物と、見覚えのあるお洋服が数着、和裁士だった祖母が仕立てたお着物。
引き出しを開いた途端、祖母がいた頃 25年以上前の空気に一気にタイムスリップ。
父と母方の祖母の思い出話をする。
そこに、母もいるようだ。

チラッと期待したへそくり的なものは出てこなかった。

何年も家族の目にも触れず、ひっそりとただそこにあった物や書類。
“物”としてはガラクタはたまたゴミだとしても。
ちょっと手に取ってみるだけで甦る記憶や、当時の空気。
ドラマチックな思い出じゃなくても、何気ない日常の穏やかさや些細なケンカとかそういう時間の積み重ねが家族を育ててきたんだ。
母がいなくなってしまったことは筆舌に尽くしがたいけど、今ここに父とおじいさんと私がいて、えっちらおっちら生活していることへのありがたさ、身にしみる。
父が元気なうちにこの体験ができて良かった。

期日までに片付け終わったぜー!!

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…って、リノベが始まったら怒涛すぎて。
浸っていた時間が、今や幻のように思える。
書きとめておいて良かったー。

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