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「車の運転だけはやめて!」と言われながら

「車を買った」と友達に伝えたら、「車の運転だけは、お願いだからマジでやめて!」と言われた。
思えば、ダイエットのために自転車通勤を始めようと決意した時、私は自転車に乗れなかった。
隅田川のほとりで練習するも、漕ぎ出すことさえうまくできずに。
競輪好きの友達が「俺が教えてやるよ」と練習に付き合ってくれたけど、「見るのと教えるのは違うな〜」とサジ投げられて。
何着の服に穴を開けたことか。
それでも1日も早くチャリ通したくて、思ったところで止まれもしないのに「走り出してしまえばどうにか到着するはず」と、自分を追い込み、墨田から築地あたりまでチャリ通を始め。
1ヶ月もすれば、ちゃんと止まりたい位置で停車できるようになった。

車だっておんなじじゃん?
慣れれば乗れるようになるはず。
まずは、近所の教習所でペーパードライバー講習。
1パック?たったの5時間。
これで無理だったら、マイカーが既にあるわけだし出張してきてくれるタイプのペーパードライバー講習を追加で受けてもいいかな、と。

1時間目に当たったキリッとした女性の教官。
まずは構内を走ってみることに。
20kmくらいの速さでも相当怖く感じる。
自分でアクセルを踏みながら「速い速い速い!」と叫び、教官が隣で呪文のように「速くない速くない速くない」と呟く1時間。
「なぜ今ペーパードライバー講習か」みたいな話になり、「母が亡くなったから実家に戻って父と暮らすことにした。父に何かあれば自分で運転できないと困るので」的な重たい話を、必死に運転しながら明るめにサラッと伝えた。

2時間目は路上へ出ることに。
「教官が隣に乗る状態でできるだけ路上を走った方がいいでしょ?」と、言われ。
確かにな、とは思ったものの。
相当怖い。
走りながら出身校を聞かれ答えると、急に「なんだー、俺の後輩じゃん」とタメ口に。
走り出す前に挨拶をした時は、パッと見、私より若そうに見えていたので「どっちが後輩じゃ」と、気になり出す。
ガッチガチでブルッブルの私をリラックスさせるためだろうか。
前だけ見てしっかり運転している私に、「ねえ校歌覚えてる?歌ってみて」と。
え!!」急に頭が真っ白に。
私の高校、当時めっちゃヤンキー校で。
校歌なんて歌わされる状況なんてあったんだっけ。
出だしもサビも歌詞の欠片も思い出せない。
「覚えてません」と言ったら「えー、ダメだなー」と絡まれる。
黙らせようと思って「覚えているんですか」と尋ねたら、歌い出しちゃった。
聞いてるうちに、「あ、なんか聞いたことあるかも」とは思ったものの、歌わせてしまったことを後悔する。
隣で熱唱され、「次の角はどっちか曲がるんですか!!」みたいな状態に。
シーンとした車内で、ピリッとした教官と乗るよりはリラックスできたのか。

構内で車庫入れの練習をしたり。
ただ、タイヤのあとがクッキリと路面についているし、あまりにモタモタしていると教官が「はい、ここで目一杯ハンドル切って」とか言ってくれるので車庫入れできちゃう。

ラストの5時間目。
1時間目に当たった女性の教官、偶然もう一度当たった。
「最初よりは、怖がらないようになりましたね」と言ってもらい、「そうですか!安心しました〜」って言ったら「私もです」と。
世間話とかしなさそうにお見受けしたいたのだけど、路上を走りながら静かに「同年代」と言われ。
こちとら路上じゃいっぱいいっぱいなんで。
「左様ですか」。
ちゃんとした内容は忘れちゃったけれど、「行動力があって前向きですね、もし自分なら、その状況で実家に帰り父親との同居はしないだろうな」とか、少しだけご自身の考え方というか話されていて。
同年代ということで思うところがあったのだろうか。
教官と生徒として出会ったけれど、違うところで出会ってたらもっと別の話ができたかもとチラッと思った。
けれど、こちとらハンドル握っている間はいっぱいいっぱいなんで。
あっという間に5時間なんて終わり。
放り出されちゃったよー

家に帰って愛車のパジェロミニで、歩いて5分のコンビニまで行ってみる。
曲がる場所は2ヶ所、信号もない。
すると!
どういうことでしょう。
8分もかかった!
歩いた方が速いのに車に乗る必要があるのだろうか。

あれから5ヶ月。
まだ不安なので、父は助手席に必須。
まだ死にたくない」と言いながら、渋々乗ってくれる。
だいぶ遠回りでも極力右折を排除したルートで。

あと問題は、車庫入れ。
どうにか前には進めても、これが出来ないと行きたい所に行けない。
自分の意思と車の動きがサッパリ連動しない。
前進で車庫入れできて、そのまま前進で出られる駐車場を選んで駐車。
父に「練習してみろよ」と言われ、バックし始めると「切りすぎだよ!速すぎだろ!なんでわかんねーんだよ」って突然キレ出す。
なんで出来ないかが理解できてたら、こんなにマゴつきはしない。
車庫入れのたびに、車内では小競り合いがすごい。
車線変更もできないに等しいので、曲がりたい時に曲がれない16号は走らない。

さ、私のドライバー人生の始まりです。
絶対に加害者側にはなりたくない。
どちらかというと慎重すぎるタイプ。
度胸をつけて、周りの車の迷惑にならないように頑張る。
まさか、私が運転する日がくるなんて。

私が運転するとか、母が生きていたら絶対反対しただろうな。
でも、私が運転できるようになるんだったら、隣に母を乗せてギャースカ言いながらお買い物とか行きたかったな、とか思ってしまう。
今1番、何がつらいってCMとか町でとか見かける母親と娘のツーショット。
いいなあ。なんで母いなくなっちゃったんだろって涙吹き出す。
まだそういう日もある。

ルートとか駐車場とか下調べせずとも、好きな所に1人で行けるようになりますように!

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