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私に「ハウスメーカー」という選択肢は、ない

一応言っておくと、「ハウスメーカーが向く人」もいる。
なので「私に」と付けておいた。
私が思う「ハウスメーカーが向く人」は↓この2点が当てはまる人、かな。
・ブランド志向
・選択肢が絞られているほうが楽

私が住む街は住宅街。
歩いてみても8割以上がハウスメーカーの家。
ということは、世の8割以上が上記2点に当てはまるというわけで、私はそれなりの変わり者という前提で以下、お読みくださいませ。

「この家、素敵だな、おうちの中も見てみたい」と思う家は1軒もない。
もし中を見せてもらったら機能的だろうしそれなりに素敵なおうちもあるんだろうけど、心が惹かれない。
旅行に行った先々で「うちの近所と景色が一緒」ってげんなりする要因の一つが「個性のない家(と車)」だと思っている。

日本から「大工さん」を奪う企業に加担したくない

昔、大工さんといえば0から家を建てられる人だった。
ものすごい知恵と技術の要る職業。
築40年超の我が家。何度もリフォームを繰り返してきて、いつもお願いしているかっこいい大工さんがいる。
母が「ここに窓を付けたい」「縁側を取っ払って増築したい」って要望を伝えると、「この柱は抜けないからこういう感じはどう?」「ここを窓にするなら出窓にして、下を収納にしたらどう?」って現況を見てその場で判断して提案してくれたり、「次までには材料作ってくるね」って自分の工房で材料を準備してくる大工さん。
3代。
メインは40代のおじさん。母とやりとりする方。
70代くらいの現役を退いたおじいちゃんは、車から手際よく道具を準備したり綺麗に掃除したりする動きが素早く寡黙な方。
20代のヤンチャでしたけど風な息子さんはお父さんと一緒に動いていろいろ教わっていた。
お茶の時間にそれぞれに話を聞くと、2代目のおじさんは「息子がまだまだ使えねえ」って言ったり、3代目のヤンチャ息子は「父親がいちいちうるさい」って愚痴ったり。
それでもいつも大きなトラックの前に3人狭そうに乗ってやってくる。

ある時から息子さんが来ていなくて。
おじさんが「ハウスメーカーの新築の手伝いに駆り出された」って。
そのうち息子さんは来なくなった。
大工さんは、収入のある月は何百万も入り、ない時は全然ないってムラのある仕事。
「ハウスメーカーの仕事を請け負うと収入が安定する」って誘われたらしい。
最初は、「急に1人必要だから来てくれたら日当10万払う」って。
父親の仕事抜けられない日に断ろうと思ったら「1回断ったら2度と声かけない」って言われて渋々そっちに行ったら、ガッツリスケジュールを抑えられて。今や日当2万も出ないらしい。
プレカットされたプラモデルみたいな家は数日で上棟できる。
効率的。
人件費、安く済む。
昨日まで自販機メーカーに勤めてジュースの配達と補充をしていましたって人と仕事をしている。
墨付けもできない人が今や「大工」という職業になって、0から家を建てられる人が「大工さん」だった時代はもうとっくに終わっている。
おじさんは今60代。
あの素晴らしい知恵も技術も誰にも引き継がれない。
私はこの話を聞いてからハウスメーカーが大っ嫌い。

夫がハウスメーカーを毛嫌いする理由

夫は以前、補修屋だった。
大工さんが家を建てた後、引き渡し前に施工中についた傷を直す仕事。
手先が器用でセンスがあって、木目を描いてもらうとビックリする。
その仕事自体は気に入っていたようだけど、あらゆるハウスメーカーの新築の家を見てきていつも憤っていた。
「何千万もローンを組んで一生に1回買う家があんないい加減な建材であんないい加減な作りだなんて信じられない」と。
それは、ろくに調べもせずに契約している施主も半分悪いって私は思う。
自分が35年もがんじがらめになる買い物に対して勉強不足すぎ。

夫が怒っていた理由はもうひとつ。
ハウスメーカーの担当の無知さ加減。
1人が何棟も担当するようで、スケジュールの管理はぐちゃぐちゃ。
図面にしても施工のことについても、夫の質問に何一つ答えられない。
夫が現場に着いてから質問の電話をしても「確認します」のまま半日も返答がないなんてザラで。でも態度は上からっていう。
あの温厚な夫を毎日あれだけイラ立たせるのだからよっぽどなんだろう、そんな人しかいないのか?って思ってたけど、営業さんだけでなく現場監督さんでも「話が通じない」って、毎回別の人なのに本当にいつも怒っていて世のハウスメーカーの印象はさらに悪くなった。

私は不動産業界 経験者

って言っていいのかなレベルだけど。
20歳で初めてひとり暮らしをする時に、お部屋探しが楽しすぎて本業のかたわら土日祝だけ不動産屋で副業をしていた。
東京にある新築戸建て専門の会社。
土日祝は支店の営業マン全員が担当する現場に出向く。
「現地見学会」というやつ。
折り込みチラシを撒いているので、反響の電話番をするバイトを8年くらい。
誠実な営業マンもいました。
が、そうじゃないというか、もし自分が客だったら、この人から・この会社から買いたくはないと思いながら働いていた。
建売がメイン、用地仕入れの時点で客付けできる稀な場合のみプランからってケースもあった。
「2年くらい土地を探していてここぞという場所が見つからなかった、ようやく!」という夢が膨らんだ方。
うちの営業もハウスメーカーさんもあからさまにめんどくさそう。
「キッチンはここのコレがいい」「お風呂はここのコレがいい」ってお客さんは2年の間に予習していらっしゃる。
でもハウスメーカーさんはお付き合いのあるシステムキッチン・ユニットバスのメーカーさんがある。「機能は同等なのに、すんごい値段が変わりますよ」って体で話を持っていく。

そしてハウスメーカーさんは営業担当が間取りのプランを描く。
社内で建築士の資格を持った方は少数。
強度とかの面では有資格者がチェックをしてハンコを押す係みたいな感じで、さすがに建築基準法とかは遵守するんだろうけど、お施主さんの間取りの理想を鵜呑みにするだけで専門家としての提案とかほぼ無し。
だって知識ないもん。
平屋ならまあ大丈夫かな。3階建てなら構造計算されるけど、最悪なのが2階建て。直下率低めでも通っていく。構造計算、必須じゃないので。
うちの会社は仲介なので売ったら終わり、メインの仕事はローンを通すこと。
ハウスメーカーさんも引き渡したら終わりみたいな感じだった。

重説も営業マンからすればやっつけ作業。
とっとと終わりたい雰囲気で、お施主さんが質問をしても返答は適当だった。まともに答えられる知識ないと思う。
宅建の資格も全員は持っていない。各支店、店長だけは宅建持ってたけど。
話が聞こえてきて「お、お客さんいいこと聞いた!」と思っても「そんな返答でよく納得したな…」って感じで流れていく。
ちなみにお付き合いのあったハウスメーカーさん、普通に有名な会社です。
私がいた会社が特別ヤバいわけじゃないし、法律的にはなんの問題もない。
会社全体の姿勢が微妙でも、誠実な営業マンに当たればどんな小さな疑問にもちゃんと調べて回答するっていう人もいた。50人に1人くらいの割合で。
施主=お金払う人じゃない、そこに何十年も暮らす人。
ならそれなりの知識ないと後から「聞いてたのと違う」ってことになるんだなって学んだ。

私は東日本大震災の後、オフグリッドに興味を持って趣味で勉強している。
住宅展示場とかも若い時からいっぱい巡ってきた。
性能が第一、デザインが第二。
大手ハウスメーカーさん、数値は立派なこと言っていても、建てたあと個別にチェックしないっていうところが多かった。(当時)
聞けば聞くほど、それって机上の計算ほど実測出なくない?体感だと意外と夏暑くて冬寒いんじゃ…って素人ながら感じてしまい。
そしてやっぱりもろもろ「この中から選んでもらいます。それ以外も選べるけど値段が全然違います」だし、「施主支給はできるものが限られます」です。予想通り。
石っぽい・木っぽい・タイルっぽい「ビニール」って仕上がりが好みでなく。
断熱材の素材や厚み、工法とか、販促用のボードに書かれていないことに即答できる人はいなかった。

性能とか自由度、窓口の人のレベルも当時より上がっているとは思うけど、私が払うお金の中に立派な本社や全国各支店、豪華なモデルハウスの維持費、CM制作費、スポンサー費用、出演者のギャラ、よくわからないホワイトカラーの人たちのお給料も含まれるんだろうっていう構図も私の考えとはフィットしない。
(一つメリットを加えておくと、大量に発注する分安くなるものはある。)
私は私の家のために知恵も技術も時間も使ってくれる人に、ダイレクトにお金を払いたい。

「ハウスメーカーは「家を売る会社」、僕らは「家を建てる会社」」

お願いしたい会社は決まっている。
お話を聞きに行ったら「ハウスメーカーは「家を売る会社」、僕らは「家を建てる会社」なんです」って言われて、腹落ちした。
引き渡し直前の完成見学会も、既にお施主さんが暮らして何年も経つ家も見せてもらえた。
私は性能とデザイン、両方のレベルの高さと家と会社が近いこと、どんなことを聞いても素人相手に本当に丁寧に説明してくださるので心は決まり、父は人柄に惹かれていて、夫は建具や、なんか角っこの“おさまり”に、「これはスゲエ!」って目を輝かせていた。
初めて見学会に行ったのは4年前。
その後、お知らせをもらう度に(まだ建て替え計画なんて立つ前から)足しげく見学会だけ通っていた。家族全員で。
先方からしたら「この人たちいつか建てるの?」って思っていたと思うけど、下手したら毎回2時間近く説明してもらってた。
前出のお施主さんと同じ、私、業者さんからすると相当に夢が膨らんだめんどくさい客なんで、先方から断られる可能性は孕んでいる。
私がお願いする会社、先方からOKもらえたらいずれお知らせしようかと。

ちなみに、こういう本もあります。

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