プレイ記録_Shirley

地球の皆さんこんにちは。
おえかきとゲームが大好きな地球外生命体VTuber、眩ねもです。

今回はすてきだと思ったゲーム、「Shirley」についてお話します。
ネタバレになってしまうため、短めなゲームなので気になった方はぜひ先にプレイしてみてください!


ゲーム概要


▼Shirley
https://unityroom.com/games/shirley

▼作者さま
プログラム:ITSUKI様( https://twitter.com/itsuki_develop
サウンド:いいよ様( https://twitter.com/wasurenaide__ne
美術+シナリオ:nomi様( https://twitter.com/yunomi03

▼操作
プレイはクリックのみで進めることができ、
1プレイもさくさく読んでいけば短いと思います。

▼あらすじ
くたくたに疲れた主人公・杏は、ある日自動販売機で懐かしいジュースを見つけした。
幼きあの日々を思い出していき、古い友人・シャーリーに再開して彼女の部屋でふたりでおしゃべりをしていきます。


感想


はじめに


グラフィックがとてもすてきでした。
絵本や童話のようなビジュアル、大きな本棚のある部屋、本の頁をゆっくりとめくる古い友人…という空間で、杏とシャーリーの物語が展開されます。
ずっとこの場所にいたいと思うようなうつくしい部屋に、ゆっくりとした時が降るようなBGM。
クリックできるものをクリックし終わってしまっても、まだこの場所にいたいと思って本を読むシャーリーの姿を眺めてしまいました。

彼女の部屋

素敵な調度品が印象的なゲームです。
そのひとつひとつは、ただ「かわいいから」というだけで置かれているのではなくて、それぞれにシャーリーと杏の思い出が詰まっています。

部屋に飾られた写真は、真ん中のおおきなふたりの写真以外杏の写真のほうが多いように見えました。
シャーリーが杏のことを思って写真を配置していったからそうなったのだろうと思って胸がぎゅっとなりました。
部屋の中には横顔のシャーリーの写真と杏の写真が対になるように飾られていたり、ケーキの写真はふたつ並んでいたりと、ふたりが互いに大事であったことが伺えます。

シャーリーはきっとこの部屋の中で、杏との思い出をずっと反芻していたのでしょう。
「杏はあのときに天蓋つきのベッドを欲しがっていたな」
「あのときにふたりで作ったいちご水はおいしかったな」
「杏が読んでいた本を自分も読んでみよう」
天蓋つきベッド、木苺やレモンの木、大きな本棚、くまのぬいぐるみ…と思い出をなぞるように家具を配していきあの柔らかな光の差す素敵な部屋ができているのだなと思います。

幼いころだけに出会えたともだち、シャーリー。
杏の空想の友達は、ずっと美しいまま、
ひとりぼっちで杏を見守ってくれていました。

物語のモチーフ

ふたりでひとりの杏とシャーリーは、赤毛のアンをモチーフとしています。
いちご水はアンが親友のダイアナと一時の別れを得るきっかけの飲み物。
シャーリーが読んでいた本は赤毛のアンの初版本と同じ淡い緑の表紙。
杏とシャーリーは、ふたりでひとりのアン・シャーリー。
忘れてしまっていたこの物語をもう一度読みたいと思いました。
思い出すことが主題の一つであるこの物語で、「思い出せないからまた読んで思い出したい」という気持ちが浮かんだこともうれしい体験だと思います。

思い出してくれたあなた

思い出のいちご水を飲んで幼いころの思い出を思い出していくところから物語は始まりました。
眠りに落ちるように、過去に落ちていくような始まり方が印象的です。

幼い日々を思い出していき、忘れてしまっていた古い友人に出会います。
対して古い友人は、今までずっと「忘れられてしまっていた」側にいました。
きっと寂しかったと思います。
二人の思い出を反芻しながら、隣に自分がいなくなった杏のことをひそやかに見守っていたとしても、きっとずっと寂しい。

彼女は、自分だけが全部覚えていて杏が全部忘れてしまったとすら思っていたのではないでしょうか。
けれどシャーリーにもまた忘れていた思い出がありました。
そんな彼女がふたりの記憶を思い出すことができて、
ふたりで同じことを思い出したからこそ、
ふたりはまた対等な友達になって、あの終わりにたどり着けたのかなと思います。

忘れてしまうということ


ひとって忘れてしまう生き物です。
つらいことを忘れることで生きていけるのかもしれないけれど、
ぜったいに忘れるわけがないと思うくらいにうれしかったことですら忘れてしまうことがあります。
どうして忘れてしまうのか、どうたって不思議なくらいなのに。
忘れてしまうことは寂しいけれど気づけないことが多いと思います。
そして忘れられてしまうことは、気づいてしまうからこそ、ひどく寂しい。

けれど、忘れてしまったらその日々がなかったことになってしまうわけじゃありません。
いつか何かのきっかけで思い出せるのかもしれません。
きっかけになるいちご水は、生きていれば出会えるのかもしれないし、出会えないのかもしれません。
思い出せなかったとしても、
きっとその忘れてしまった優しい愛たちがあなたの明日の幸せの一部になっていたら、それは素敵なことだと思いました。
あなたは忘れてしまっただけで、愛があなたの人生の中にたくさん込められていますように。

そしてきっと思い出せたのなら、今度こそ忘れないように、
思い出を反芻して刻み込めたらいいなと思います。
本をどこまで読んだか忘れないため、栞を挟みこむみたいに。

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