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オンライン版「相京文庫」です。
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憲法記念日、夜更けの読書

憲法記念日、夜更けの読書

日本国憲法は1947年5月3日に施行され、この日は国民の祝日となっている。今日がまさにその日であるが、最高裁判所の長官会見、各党による談話など、憲法にまつわるニュースも多く目につく。同時代的に考えるべきことが沢山あるなかで、落ち着いて学ぶべきことも多い。もちろん、みんなで難しい基本書を読む必要はないけれども、憲法の前文ないし条文に書き込まれた理念に留まることなく、その背景や運用の実際について検討す

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衒学的西洋美術入門

「相京文庫」に関連して。

先日、文庫の片隅に何げなく美術展の図録を並べておいたところ、隣席の後輩曰く「絵のことはどうもわからない、印象派とかよく聞きますが、あれは中世くらいのものですかね」と。こんなことを言われてしまうと、さすがに一言コメントしたくなる。幸い、「プラド美術館展」「北斎とジャポニスム」「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」の3つの展覧会の図録が揃っていたため、19世紀後半の時

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「相京文庫」の本懐

某教室の学生部屋の片隅には「相京文庫」(以下「文庫」)が整備されている。名前は見掛け倒しで、単に、私の引越しに際して新居に収まりきらない書籍を置いておく避難所のつもりである(現在14畳の部屋に数千冊のオーダーで書籍が積み上げられており、7畳の新居には全く荷が重い)。とはいえ、一応先生に認めてもらったものであるから、内容には多少気を使っている。本懐なんてものはあってないようなものである(ブルーハーツ

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「医療」の裾野の広さを知るために。

医学生はしばしば無意識のうちに思い上がっているところがある。すなわち、他の医療従事者の専門性を軽視している。同学年の友人たちの勉強の様子を見ていれば、他の専門職にも相応の専門性があって、それは自分たちには到底把握しきれないものであることくらいわかりそうなものであるが、現実にはなかなか難しいようである。

この問題の責を医学生だけに負わせるのは必ずしも公正ではない。他の専攻の学生も、医学科の学生は「

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「熊本大学の倫理学教程」に私淑する。

四か月ほど、CBELの『入門・医療倫理Ⅰ』『同Ⅱ』を用いて医療倫理学の勉強会を行ってきた。このテキストは医療倫理と銘打っているが、より一般的な意味における倫理学のオムニバス形式の入門書としてもよくまとまっており、総論部分に関しては『入門・倫理学』として別途編集・刊行されているほどである。本書では、次のような倫理学の体系が提示されている。(CBELのサイトから転載)

この体系については、見る人が見

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教科書まとめ (消化器系)

1,2は標準的な構成の教科書。3は体系的な参考書。4,5はテーマ別リファレンス。6,7はまさに「ノート」。8-10はイロモノ。もちろん、これらの他にも医学生向け・研修医向けのシリーズものの教科書が色々あるので、必要に応じて。

1. 『消化器疾患診療のすべて(日本医師会生涯教育シリーズ)』(2012)
イチオシ!commonな消化器疾患の診断・治療が一通りまとまっている。レイアウトもスッキリしてお

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