くらむぼん

Tatsuki Aikyo. なぜか博士(医学)を持っている医学生。 研究テーマは医療…

くらむぼん

Tatsuki Aikyo. なぜか博士(医学)を持っている医学生。 研究テーマは医療倫理、研究倫理。119回医師国試&38回社会福祉士国試受験予定。投稿はあくまでも個人的なメモ。アイコンのラテアートは広島県東広島市のCremaにて。

マガジン

  • 教育

  • 臨床推論

    臨床推論(Clinical Reasoning)そのもの、および臨床推論勉強会に関する諸々

  • 気まぐれ読書メモ

    個別の読書メモは全部このマガジンに放り込んであります。

  • ブックリスト

    オンライン版「相京文庫」です。

最近の記事

高等教育グローカリゼーション?

今月はインドネシアの医科大学で実習している。Universitas Airlanggaというところ。カンファレンスやレクチャーは基本的にインドネシア語だ。私が英語しかわからないので、時々英語でやってくれることもある。専門用語は英語のまま使われているようで、みなさん医学英語に大変堪能である。インドネシア語の参考書もあって、toropical diseaseなどに関しては、下手にインターネットで情報を収集するより、こういった参考書を英語に翻訳して読むほうがわかりやすい。問診ももち

    • はじめての!海外渡航!

      生まれて四半世紀が経った。医学生をやりながら、博士号まで取った。日々所用で全国各地を転々とし、年間の新幹線乗車回数は50を超える。そんな私であるが、なぜか海外に出かけたことは一度もない。「海外旅行なんてブルジョワ!」みたいな気分で生まれ育った。さすがに博士課程のうちに国際学会の一つや二つ経験するだろうと思っていたが、あいにくコロナ禍と被ってしまった。 多少はお金も溜まってきて、そろそろ海外に行ってみたい。しかし海外旅行の暇はない。そんな折、臨床実習を海外でやるチャンスが訪れ

      • 悩みながら一年、そして模索は続く

        私の経歴はちょっと捻くれている。幼いころから眼鏡をかけて「ハカセ」と呼ばれ、見た目に違わず成績優秀、現役で医学部に入ったところまでは世間的にも順調な経過を辿ってきたのであるが、このあたりから少々コントロールが効かなくなり、気づけば大学を休学して博士課程まで行ってしまった。そのぶん周りより三年ほど遅れて臨床実習を始めることとなった。ちょうど一年前のことである。もともとの同期はもうみんな医者をやっている。学生時代の様子とは打って変わってカッコいい姿を見せてくれるやつも多い。いつの

        • 速く読めることのさみしさ

          ある本を読むためにどれくらいの時間がかかるかは、その本が扱っているテーマに対する読者の親しみ度合いに応じて変わってくるものだと思う。よくわからないテーマの本を読むときには、とにかく時間を食うものである。少しわかってくると、書かれている内容はすぐに腹に落ちて、どんどん読めるようになる。その本に書かれたテーマに対して自らコミットメントするようになると、自分が書き手に成り代わって、一つひとつの微細な表現が気になるようになり、かえって時間を要するものである。もっとも、これらの「親しみ

        高等教育グローカリゼーション?

        マガジン

        • 教育
          9本
        • 臨床推論
          8本
        • 気まぐれ読書メモ
          7本
        • ブックリスト
          6本

        記事

          医学の勉強って大変だよね、という呟き

          しばらく前に精神科で実習させてもらった折「共感技法による全人的理解」の重要性を強調されたことが印象に残っている。僕は少々飲み込みが悪いところがあって、結局共感って何なんだ、それはなぜ大事なんだ、ということは十分にはわからなかった。いろいろ勉強して、改めて自分のことばで書いてみるなら、共感というのは、情動を伴って相手のことを理解することなんだろう。情動というからには神経生理学的な背景があって、理性的レベルに留まらない。さらにいえば、治療関係における治療的自己(ワトキンス)の機能

          医学の勉強って大変だよね、という呟き

          春の谷に柳を求めて

          2, 3年前、大阪は阿波座に「水鯨」という喫茶店ができた。ここを初めて訪れたとき、マンデリンを頼んだら、ニッコー「山水」のコーヒーカップに淹れてくれた。このシリーズに採用されているデザインは、ウィローパターンといって、比翼連理の故事を描いたものである。また、ひと月ほど前、鞆のランチで立ち寄った喫茶店がある。古い医院をリノベーションしたところとして有名で、以前から気にかけていた。期待を裏切らない、落ち着きのある良い空間だった。そして何より、ここでも山水である。 柳には、けっこ

          春の谷に柳を求めて

          マイルストーンくらい外から借りてきてもいいじゃないか

          二十年近く前のことである。幼少期の私は、テレビ番組を通して、はじめて学者という職業の存在を知った。エジプト考古学の吉村作治先生である。自ら手を動かし、新たな知見を得て、より見晴らしの良い世界像を描き出す。真摯な態度に惹かれた。同時に、知的に自由な仕事であると思った。幼稚園を卒園する頃には、将来の夢として「考古学者になりたい」と書いていた。もちろん、考古学の何たるかをわかっていたわけではない。考古学にこだわりがあったわけでもない。単純に、学者としての営みに憧れていた。 私は何

          マイルストーンくらい外から借りてきてもいいじゃないか

          「リーダー」になりたい

          実は、ここ数ヶ月間、大阪市某区にて地域子育て支援拠点事業の仕事に関わらせてもらっていました。学部時代の親友の紹介です。子どもの遊び相手をしたり、保護者の方々と色々お話ししたり。同僚の皆さんにも地域の方にも本当に良くしていただきました。大変気持ちのよい職場でしたが、そろそろ広島に戻ることを考えると延々続けるわけにもいかず、いよいよ今週で退職ということになりました。いくら縁故があったとはいえ、保育士資格も持たず、勤務も週一、勤続期間も短いことがわかっていた私のような人間を、よく雇

          「リーダー」になりたい

          苦労の雪だるま式サンプリング

          藤本和子という翻訳家がいる。ご本人の手による文章も多く、昨日は『ブルースだってただの唄』という著作の紹介記事を見かけた。 斎藤真理子×八巻美恵 『ブルースだってただの唄』を今読む意味 | CINRA 詳しくは書かないが、率直に興味を惹かれ、あらためて藤本和子という作家の本を色々と読んでみようと思って調べていたところ、『きもの自在』という興味深い本を見つけた。鶴見和子の著作だが、藤本和子が聞き手を務めている。このとき、私は鶴見和子という名前に全然ピンと来ていなかった。昨晩

          苦労の雪だるま式サンプリング

          「思想のある都会」の魅力

          関西というのは、思想のある都会ですね。 都会というのは、誰も私を知らない街、新しいものに溢れた街。路上ライブを何時間聴いていても、知り合いに出会うことなんてまずありません。気づけば、あるシンガーのファンになっていました。そうやって街を歩いているうちに、行きずりのおじさんやお姉さんと仲良くなって遊び明かしたこともあります。もちろん、腰を据えるのも嫌いじゃないですから、行きつけのようになったお店もいくつかあります。また別のところでは、保育士の真似事のような仕事をやりました。嬉し

          「思想のある都会」の魅力

          公教育で美術教育を行う意義と課題

          美術検定1級という試験を受けた。この試験では小論文が課される。今年のテーマは「公教育で美術教育を⾏う意義と課題」だった。すぐに思いつくのは「美術の自由と公教育の制約との対立」などの構図であるが、少々安易すぎる印象があり、また、地に足の着いた記述も難しくなるように思われたので、あえて教育の観点に着目してトピックを拾うことにした。まずは「多文化社会」というキーワードが思いついたので、これを手掛かりに美術教育領域における最近の話題をいくつか見つけ、これを主題に据えた。公教育の文脈か

          公教育で美術教育を行う意義と課題

          戦略と、その外にある楽しみ

          2022年10月23日、昨年落第した「総合旅行業務取扱管理者試験」に再挑戦した。自己採点も済ませたところ、無事リベンジに成功したようである。 博士課程修了の成否を巡って佳境にある今(※)、あまり余裕のある勉強はできなかったが、嬉しいことに得点には余裕があった。 ※ ノリでドラマチックな表現を選んでみたが、冷静に考えてみると、これは今に限った話ではなかった。 実は今回の試験、ぶっちゃけ十時間くらいしか勉強できなかったのである。この幸運な結果は、もっぱら、これから述べる「戦略

          戦略と、その外にある楽しみ

          感性ないし独創性に見切りをつけないということ

          数年前、友人に薬師寺を案内してもらったことがある。ご本尊の薬師如来を前に、感想を求められた。「如来様の常人とはかけ離れた独特の存在感と衣装のリアリティとの明白なコントラスト。それでいて全てがシームレス。この二つの性質が共存していることには驚きを隠せない」等々と捻り出す。間髪入れず「和辻が古寺巡礼で同じようなことを書いていたね」と返された。彼の相変わらずの教養に感服させられると共に、何とも言えない落ち着かなさがあった。そのときの気分も、今なら少しは言葉にできるかもしれない。ひと

          感性ないし独創性に見切りをつけないということ

          医学生コミュニティにおける「創造的勉強会」の趨勢に関する所感

          先程、久々にTEAM関西の勉強会にお邪魔した。2022年度幹部にバトンを渡してから初めての参加である。「問うチカラ」というテーマで、内容はもとより、皆さんの創造的な勉強会づくりに改めて感心させられた。会の内容については公式の報告投稿を待つことにして、ここでは「創造的勉強会」ということについて少し考えてみたい。もちろん、創造性のある会を実現するためには、それをリードできる人材が必要である。それゆえに「このような会を運営できるのは誰々の企画力、構想力の賜物である」などの言説が生じ

          医学生コミュニティにおける「創造的勉強会」の趨勢に関する所感

          「未完成の本」

          ある本を読み、論旨が一貫していない、整理されていない、という印象を持つことは多々ある。これを仮に「未完成の本」と呼ぶことにする。私は、こういう本は出版文化の文脈では非常に有意義なものと捉えていて、そういう前向きな態度からこのコンセプトを提案したい。 「未完成の本」の定義は、読者の印象に依っている。したがって、読者の印象がどのように形作られているか、ということが「未完成の本」の実質を規定している。少なくとも私にとって、ある本を読むということは、その本を何らかのコンテキストに位

          「未完成の本」

          「帰属意識は必要か」

          「帰属意識は必要か」という問いを見かけた。このことについて少し考えてみたい。 そもそも帰属とは「人や物、財産や権利などが、ある主体に属すること」(新潮国語辞典第二版)らしい。帰属意識については一応「人がある主体に属しているという認識を持つこと」と定義しておこう。「ある主体」というのがミソである。「主体」は「〈思考や行為の自律性〉を意味するコトバとして使われる場合が多い」(新版哲学・論理用語辞典)。人が自らの他に〈思考や行為の自律性〉を持った存在に属しているということは、雑に

          「帰属意識は必要か」