見出し画像

劇団唐組『泥人魚』

劇団唐組の『泥人魚』を観に行きました。久しぶりのテント芝居。新宿花園神社の境内です。

悲しいことに座長の唐十郎さんは2024年5月4日に亡くなりました。寺山修司さんと同じ命日です。84歳でした。

座長代行の久保井研さんは、唐さんのことばを守って、5月5日の花園神社の初日も上演しました。

『とにかく観客が待ってる。何があっても芝居はうつんだ。飯を食うように芝居をやるんだ』

今日5月10日は花園神社の3回目。200人入るテントは満席でした。久保井研さんはじめ、身体を張った芝居に魅了されました。特に人魚の役を務めた、唐さんの娘の大鶴美仁音(みにおん)さんはとても良かったのです。

花園神社の紅テント(2024/05/10)


私が唐さんの芝居を初めて観に行ったのは40年近く前のことです。状況劇場の時代です。アマチュア劇団に入っていた連れ合いが誘ってくれました。演劇の世界を知らなかった私には衝撃的でした。紅いテントの怪しげな芝居小屋。ござ敷きの客席にぎゅうぎゅう詰めになって座り、役者は目の前を走り回って、汗やら唾やら飛んできます。その熱気。しかも唐さんの芝居は機関銃のように言葉が飛んできます。私はすっかり魅了されてしまいました。


しかし不思議なことに印象的なシーンは覚えているものの、物語りはうまく思い出せないのです。話が目まぐるしく切り替わりついていけないからかもしれません。物語りや台詞に埋め込まれている背景を理解していないからかもしれません。

しかしこの非日常の異空間と不条理な物語りが心に直接的に響いて中毒性があります。

そして、その非日常の体験は日常に元気を与えます。テント芝居は椅子席じゃないので、お尻が痛くなりますが、翌日になっても気持ちは昂っています。

さて唐組の観客は唐さんの現役時代からのファンと思われる中高年から、若い人たちまで多様です。万人受けするエンターテイメントではないですが、ちょっとしたシークレットな体験。アングラ(アンダーグラウンド)とか言われていましたからね。根強いファンがいます。

唐さんが亡くなってこの演劇はどのように継承されていくのでしょうか。久保井さんは唐組を継続していくとは思いますが、懸念するのは若い役者がなかなか根付いていないこと。若い人には唐さんの芝居は厳しいのかな。古典芸能のように続いていくことを期待したいです。

「スキ」ボタンを押していただいたり、SNSでシェアしていただけると、とてもうれしいです。