見出し画像

僕は「町田家 新宿店」で家系に出会った。

日曜の昼間から飲み会なんて日。心地良く飲んだ後の空いた小腹をどこで癒そうかなんて考えながら、京浜東北線、山手線と乗り継いで新宿まで向かっている。

渋谷を過ぎたあたりで、なんとなく今日はヴィクトリア裏の気分に。南口の階段を下りて、薄暗い路地。スタジオの前にミュージシャンがたむろするいつもの景色。その先にはっきりと浮かぶ緑と黄の看板。

まだ家系なんてラーメンが、都心では珍しかった頃に町田からやって来た家系。たぶん初めて食べた家系だったと思う。

普通で頼んだアブラで身体中の血管が逆立ちざわめいてやられた思い出。それでもこのジャンクを欲してかなりの頻度で食べていた。

それからラーメンを食べ歩く幅が広がり、こってり濃厚を食べてついた耐性。なんで、もうここ薄いなんて思った時期もあったんですよ。なんだか濃ゆいに貪欲だった頃。

それでも久しぶりに食べてみた時に、なんだか深み、みたいなものを感じて。そうか、薄いんではなくて、やさしくやわらかな抱擁。なんて感じてからは、ここもまた大切なルーチンの一つになった。

券売機に並ぶカラフルなプラ板たち。このプラ板が町田家で食べる感じだったと思い出す。赤色のラーメン並盛のプラ板を握りしめて、奥に伸びるカウンターに向かうと、兄さんたちが元気に迎えてくれる。

お好みはと聞かれ普通で。も、ルーチン。
ここは麺を柔めにしなくてもいい感じで麺が上がってくる。

青磁に3枚の大判の海苔。赤茶に色づく鶏油の膜がはるスープ。ほうれん草に黄色い麺。いつもの麺顔。いつものように胡麻をたっぷりと振り、ブラックペッパーを振りかけてスープをズと啜る。

炊き上げた豚骨が円やかに染みでるやさしくコクと旨みが広がるスープ。これがね、一時、薄っなんてひねてたんですよ。舌って曖昧。

酒井製麺のデロンと舌にのる柔らかさに抱擁される麺。短いのもいつもの通り。ブルンブルンとスープを飛ばして啜り上げる幸せ。

このさらとイケるULTRA PIG BONE NOODLEが無性に食べたくなる日があるんです。

そんな歳になったんだなってスープを飲み干すと、青磁に描かれるポップな骨の透ける豚のイラストにありがとうと言われているような気分になる。

こっちもありがとうって愛でるイラスト。
うん、また来るね。

【町田家 新宿店】
  新宿区新宿4-1-20




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?