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「チェキ女」

最近、最近、地下アイドルを応援している1人の青年が居ました。
ライブでは、アイドルのチェキを積極的に購入し、推しに貢献しようとしていました。

ある日のライブ終わり、今日も沢山のチェキを購入した青年は帰り道の路地裏で、推しのアイドルが知らない人とキスしている現場に遭遇してしまいました。アイドルは口止め料としてサイン入りの特別なチェキを青年に渡しました。

「このことは決して誰にも言ってはいけないよ。」

青年は少なからずショックを受けて、やがてアイドルの応援をやめました。
アイドルの言いつけは守り、目にしたことは誰にも話しませんでした。

それからしばらくして、青年は雪のように肌の白い女性と結婚しました。
家庭と仕事に追われつつも、子供にも恵まれて幸せな日々を送りました。

青年が家を掃除していると、何枚かのチェキが出てきました。
かつて自身が購入したものかと思いましたが、違う人が写っているようです。

「懐かしいね、それは私のだよ。」

妻も自分と同じアイドルが好きだったことを初めて知った青年は、
応援していた頃の思い出話を語り、流れで目撃したスキャンダルについても話してしまいました。

「誰にも言ってはいけないって言わなかったっけ?」

青年の妻はあの時のアイドルでした。悲しみに暮れた彼女は、子供達と共に姿を消しました。

その後、青年は養育費を払い続け、子供達の誕生日の時だけに我が子と会うことが出来ました。

会う時に子供は母親と一緒に撮ったチェキを持ってきてくれますが、青年が妻と会うことはありませんでした。

END

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