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「タダか?の王様」

最近、最近、とある国にとてもケチな王様がいました。
何事も低コストで抑えることを至上と考えており、国の予算を無駄遣いすることはありませんが、かと言って国民に多く還元しているわけでもありませんでした。

そんな王様のもとに国の外から1人の仕立て屋がやってきました。

「愚か者には見えない大変珍しい服を王様の為に持って参りました。」
「それはダダか?」
「え…?」

仕立て屋は大変驚きました。まさか真っ先に値段を、それもタダであるかどうかを聞かれるとは思いもよりませんでした。

仕立て屋は詐欺で高額な商品をお金持ちに売りつけて生計を立てているので、勿論タダで渡す気はありません。服自体はタダ同然の代物ですが。

とは言え、値段を気にしているあたり財布の紐が固い相手である可能性大と踏んだ仕立て屋は、取り敢えず、その服はタダで譲ることにしました。最初に無料で引き付けておいて、いよいよとなれば、財布の紐がゆるくなるだろうと判断したのです。そういうカモを沢山見てきました。

タダで服を貰って上機嫌の王様は、早速その服を着て街中に散歩に行きました。1人の子供が、王様の服を指さして言いました。

「あー!パパが騙されて買わされたのと同じ服を着てるー。」
「何!これはタダで貰ったんだぞ。」

すぐに値段で反論する王様ですが、子供とその親から詳しい話を聞き、仕立て屋が国内で暗躍していると知りました。王様はすぐに仕立て屋を呼び出し、国民を広場に集めて話し始めました。

「私の今着ているこの服!この者からタダで貰った!
 着ると賢く見えるらしく、今なら150人限定で同じ服が貰えるぞ!
 また、既に持っている者は弁護士に相談すると現金が戻ってくるかもしれんぞ!」

呼び出された時点でちょっと嫌な予感がしていた仕立て屋ですが、逃げ場はありませんでした。タダでは済まされず向こう半年間、無休無給で服を作り続けることになりました。

ケチではありますが、たまにこういうことがあるから、王様は今でも王様として支持されています。

END

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