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「シンデリバ」

最近、最近、あるところに1人の美しい娘がいました。
娘は大変働き者で、継母のダンス教室の送迎、姉達の子供の学校への送迎をしつつ、フードデリバリーの仕事をしていました。

ある日、近くのお城でバチェラーが婚活の為に舞踏会を開きました。
継母と姉達は再婚のチャンスと見て参加することにしましたが、娘は特に興味が無く、当日はフードデリバリーの届け先として会場に向かうところでした。

舞踏会の参加者は多く、結構な渋滞が周辺の道路で起きていました。
娘をたまたま見かけた魔法使いは、魔法でドレスを提供しようと持ちかけましたが、

「私は舞踏会には参加者ではなく、仕事で向かっています。」

と魔法使いの申し出を断り、代わりに今乗っている自転車より馬力のある乗り物をお願いしました。小回りの効くバイクを魔法で手に入れた娘は渋滞を抜けて、舞踏会に料理を運びました。
バイクは魔法の産物なので、0時には自転車に戻りましたが、その頃には娘は就寝していました。

一方で、舞踏会の日に料理を受け取った際、娘に一目惚れしたバチェラーは、何とかしてもう一度娘に会えないかと毎日料理を注文していました。
この噂は、瞬く間に広がりフードデリバリーの仕事に就く女性が急増しました。

人が増えた分、暇な時間も増えた娘は別の仕事にも精を出すようになり、
バチェラーは中々娘と会えませんでした。ところが、ある日気に入った靴を宅配で注文した際、その配達人として思わぬ再会を果たしました。

バチェラーは娘に思いを伝えましたが、

「はあ、ありがとうございます。では、またのご利用をお待ちしております。」

思いは届きませんでした。
富裕層特有の社交辞令と受け取った娘はそのまま帰ってしまい、
バチェラーは再度同じサイトから靴を注文することにしました。

2人が結ばれるのはもう少し靴が増えた後の話。

END

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