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「姥ステルス山」

最近、最近、とある姑がとある夫婦と同居することになりました。
共通で使える家具や家電は1つに揃えようと夫婦は考え、姑が使用している古い方を捨てようとしましたが、姑がゴネました。

「どれもまだ使える。捨てるなんて勿体無い。」

それならフリマアプリで売って、少しでも生活費の足しにしようと夫婦は提案しました。思い入れがあって、使い慣れたモノを売ることに姑はまだ抵抗がありましたが、最後には折れました。レトロ家電の中には意外に高値を付けたものがあったのが、決め手でした。

加えて姑は簡易で便利になった夫婦の家電にちょっと興味がありました。
同居後、姑はすぐさま夫婦の家電の使用方法をマスターして、便利さを堪能しました。それどころか、家電にハマり量販店にちょくちょく足を運ぶようになりました。

ある日、夫婦が帰ってくると家の中に大きな段ボールが幾つか届いていました。事前の相談もなく大きな買い物をされるのは結構困るのですが、姑は得意気に、

「こいつはテーブルと一体になった冷蔵庫だ。便利で1つ2役だから場所も取らない。凄い世の中になったもんだね。」

正に今、そのテーブルがリビングで場所を取っているので、夫婦は返却するように説得しましたが、

「今あるテーブルと冷蔵庫を売っちまいなよ。こっちの方が便利なんだ。」

と聞く耳を持ちませんでした。その後も姑は続々とステルス家電を購入し、
古い家電は売るよう夫婦に指示しました。夫婦は便利な家電を使えることを最初は喜びましたが、段々ステルス家電同士で機能が甘被りし、未開封の箱の山も増えてきました。

「便利とは言え、無駄に数を増やすのはやめてくれ。」

とうとう我慢の限界に達した夫婦は、姑に購入を辞めるように訴えました。
姑はようやく我に返り、流石に爆買いが過ぎることを反省しました。
自宅用の家電は厳選し、使用しないものは人に譲ることにしました。

せっかくなので、今まで蓄積した知識を披露した動画をアップしたところ、
予想以上に反響があり、「家電ばあちゃん」として一躍有名になり、かなりの収益を得ました。

「これで、前に諦めたあの最新家電も買えそう…」

END

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