「謎解きそば」
最近、最近、男は屋台でそばを食べることにした。
注文をした後、手持無沙汰な男は店主に謎解きの問題を出題した。
「あんさん、今日は謎解きデーだ。さて、今日は何日?」
手際よく調理を進めながらも店主は悩んだ。
勿論、本当の日付を聞いているわけではない。
謎解きとしての答えを求められている。
「畜生、俺みたいな頭の固いもんには分からねぇよ。答えは何だい?」
「正解は9日さ。あんさん(アンサー)にとって謎解きはクエスチョン。
Qで9日ってわけだ。」
納得した店主は、しばし楽しませてもらったお礼に男にそばを奢った。
男はこのように時折、謎解きで人を楽しませて、お礼に何かを貰うことが度々あった。
そんな話を耳にした別の男がいた。彼は自分も同じように謎解きで得をしたいと考えて、早速屋台に向かった。得意気に出題した男だったが、店主は拍子抜けした顔をした。
「俺はその問題聞いたことがあるぜ。9日だろ?」
男はしまったと思った。同じ人に同じ謎解きを出題してしまったのだ。
すぐに別の謎解きを出題しようとするが、他に取り置きがなく、咄嗟にはいい謎が思いつかない。
考えているうちにそばを食べきってしまい、尚居座る男に店主が迷惑そうにしていると、
「ええい、今考えているんだ。もう1杯食うから待ってろ。」
こんこんと考え、もぐもぐと食べ、男はようやく謎を思いついた。
「ある男がタダでそばを食おうと思ったのに気が付いたら倍の値段を払っちまっていた。一体何故だろう?」
店じまいをしながら店主は答えた。
「阿呆だからだろう。ズルするどころか、ずるずる啜っちまったな。」
END
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