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「ピノキオート」

最近、最近、フィギュア職人のゼペットが渾身の作品を仕上げました。
元々造形美には定評がありましたが、そのフィギュアはピノキオと名付けられ、展覧会に出品されました。

今にも動き出そうと好評を得て、ゼペットは実際に動かそうと思いました。
パーツを作り直して可動性を付与し、プログラミングで動きを覚えさせ、
音声認識にも対応するようにしました。AIも搭載され学習も可能になりました。

まるで実際に生きているようになったピノキオは、自動で動き回り、
学ぶ楽しさを覚え、様々なことを学習していきます。
そして、ある程度賢くなってきたところで堕落し始めました。

ゼペットはピノキオのセーフティロック機能の1つとして、
「嘘をつくと鼻が伸びる機能」を搭載していました。
学習を怠けるようになったピノキオを追及するとぐんぐん鼻が伸びました。

ピノキオはピノキオでこの仕組みを学習し、嘘をついても鼻が伸びないように、自身を改造しました。そして、自分の分身たるリトルピノキオを作成しました。学習はリトルに任せて、自身は怠けることにしました。

全自動で学習を繰り返すリトルはある日、鼻が伸びるようになりました。
オリジナルと同じ機能が搭載されていたのです。リトルを追及するピノキオを見て、ゼペットは懐かしい気持ちになりました。

そして、リトルはミクロピノキオを作成し、以降、賢くなる度に次のピノキオが作られていきました。生まれつき鼻が伸びないゼペットは、他のピノキオ達に随分と羨ましがられました。

すっかり大家族になったので、来年は皆で旅行にでも行こうとゼペットとピノキオ達は盛り上がりました。

END

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