「煽り鳥」
最近、最近、チルい兄妹のチルチルとミチルは魔法使いの依頼で煽り鳥を探していました。幸せな人に近づいて煽り散らかす迷惑な鳥で、旅先の国で2人はそれらしき鳥を見つけました。
おじいさんとおばあさんの運転が遅いと鳥がガミガミ怒鳴っていました。
チルチルとミチルが鳥かごに入れると鳥は大人しくなりました。
本当の煽り鳥は鳥かごに入れたぐらいでは大人しくならないので、この鳥は違うようでした。
また別の国で2人は鳥を見つけました。そこはとてもスポーツが盛んで、
2つのチームの応援している沢山の鳥があちこちで罵り合っていました。
チルチルとミチルは幾つかの鳥を鳥かごに入れましたが、すぐに大人しくなったのでいずれも違うようでした。
更に別の国では沢山のマイクがあり、それらを通して人も鳥もお互いに、
自分の主張の正しさを言い合っていました。
ここでも何羽かの鳥を捕まえましたが、いずれも違うようでした。
疲れ果てた2人は諦めて、空の鳥かごと共に家に帰りました。
家には2人の帰りが遅いと文句を言う一羽の鳥がいました。
それは、2人がかつて飼っていた鳥でした。鳥かごに入っても憎まれ口は止まりませんでした。
この鳥こそが、魔法使いが言っていた煽り鳥でした。
不思議なもので、様々な国で聞いてきた鳥の声は嫌なものばかりでしたが、
チルチルとミチルが飼っていた鳥には何を言われても、懐かしく微笑ましくなるのでした。
喧嘩の末に一度は家を去った煽り鳥でしたが、失って初めてチルチルとミチルの大切さに気付いたのでした。2人と1羽以外には、ただの醜い喧嘩にしか見えませんが、彼らにとっては本音であり、照れ隠しであり、時々ちょっと意地悪なだけのかけがえの無い交流のひと時なのです。
END
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