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「王様の耳は論破の耳」

最近、最近、とある国の王様が散髪に行きました。
床屋さんは王様の頭を見て驚きました。何と、ロバの耳が生えていたのです。

「一体何があったんです?」
「ちょっと神様に怒られちゃって。」

神様に会えるのも驚きですが、怒らせるようなことを言ったのも驚きです。
聞くと正直に感想を言っただけのようですが、正直すぎてカンにさわったそうです。

王様が帰った後、この一大トピックを話さずにいられない床屋は、夕食で早速家族に話し、週刊誌に売り込み、SNSでも発信しました。

一夜にして王様は国中の注目の的になりました。外に出れば、ロバの耳を一目見たいと大勢の人が集まってきました。

正直に噂を聞きつけて見に来たと言ってくれればまだマシですが、中にはあれやこれやと最もらしい言い訳で王様に近づいてロバ耳を除き込もうとする輩もいるので、

「嘘をついて近づくのはやめなさい。」

と王様は彼らを窘めて、子供達のように正直に話すように促しました。王様も別に隠しているわけではないので、動画を配信して一度に多くの人に見られるようにし、チャットでの質問にも応じました。言い方はちょっとひどい時がありますが、王様なりに国民に寄り添おうとしました。

チャットにはアンチも少なくありませんでしたが、王様は時に受け流し、時に論破し、さくさくとあしらい涼しい顔をしていました。その姿を見て、増えたり熱くなったりするアンチがいる一方で、爽快に感じたり、カッコ良く感じたりする信者もいました。

しだいに「ロバの耳」はこの国では「論破」を指すスラングとなっていきました。国の外にもじわじわと広がり、神様の耳にもそのうち入るかもしれません。

END

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