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「親ガチャ姫」

最近、最近、チューリップの花から生まれた親指ほどの大きさの女の子がいました。その小ささと美しさからヒキガエルやコガネムシなどによく誘拐されていました。

その都度、周囲の優しい生き物達に助けられてきた少女は、巡り巡って野ねずみの家に居候することになりました。少女は野ねずみに愚痴をこぼしました。

「私が小さくて苦労するのも、美しくて誘拐されて危ない目に遭うのも、
 全部親ガチャに外れたせいだ。子供を育てることも、動くこともままなら ない、チューリップから生まれてきたせいで、辛い思いばかりしている。」

野ねずみは少し困りましたが、あまり親を悪く言うものではないとやんわりとたしなめました。

「それでもあなたは周りに恵まれてきたから今日まで生きてこられたの。
 そりゃあ、そもそも周りにヒキガエルみたいな奴らがいないことが一番だけれど、魚や女王蜂はあなたを助けてくれたじゃないの。環境ガチャはそこそこ当たりじゃない?」

野ねずみも少女を助けてくれたので、それもそうだと少女は思いました。
大きくて苦労する人も、醜くて辛い目に遭う人だっています。
彼らは彼らで親ガチャに外れたと思い、もっと小さければ、もっと美しければ、と思っているかもしれません。

少女は自分と同じような者を、自分が安心して暮らせる環境を探す旅に出て、その旅路の果てに王子様と出会い結ばれました。

式はチューリップの花の下で行われ、野ねずみを始めとしたお世話になった者達が招待されました。

END

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