補聴器デコレーション用カバー「デコチップ」をパクったクラウドファンディングが開始されそうな件についての覚書(追記あり)
9月16日追記
・経緯に現状を追記
・問題となることの意見を追記
・田中氏に求めることを追記
はじめに
補聴器に対して「ダサい」「格好悪い」とデザインに不満をもつ子供や若年の聴覚障害者はかなり多い。補聴器ユーザーとして私も割と同感なのでここ10年で盛り上がっている「デコレーション補聴器」というアイデアについては大いに関心を寄せている。
ところが、ここ数日、 Twitter の補聴器ユーザーの間でこの「デコレーション補聴器」のスピンオフ企画である「デコチップ」に対して「田中氏がアイデアを無許可で流用してクラウドファンディングを立ち上げようとしている」と問題視する声が複数見られた。
調べてみると、アイディアを流用したと思われる「補聴器の着せ替えチップ」には、補聴器の技術的な点から問題があると思われるので問題の経緯及び課題について簡単にまとめておく。
デコチップとは何か
補聴器をデコレーションするという考え方は最近盛り上がっているが、補聴器を直接デコレーションすると、仕事や学校の場ではふさわしくない場合もあるし、気分に合わせてデコレーションを変えられればよい、という声も補聴器ユーザーから上がっていた。
そのアイデアを「補聴器専門店 西部補聴器」の認定補聴器技能者である北村氏が補聴器ユーザーと協力して何度もサンプルを作って開発したのが補聴器の上から着脱できる「デコチップ」である。(開発経緯の詳細についてはウェブサイトを確認してほしい)
当事者
北村美恵子氏:西部補聴器 認定補聴器技能者
田中結布子氏:聴覚障害をもつ心屋認定カウンセラー
問題の経緯
・西部補聴器にて7月よりデコチップ販売開始
・田中氏、デコチップの存在を把握(8月19日のブログ)
ついこの間、
ライオンゲートが開いた日。
登録しただけのTwitterを
何気なくふと開いて見ていたら
補聴器本体に「あるもの」を貼ることで
「補聴器ボディにオシャレをするもの」を
作っている人の投稿に出会ったの。
すごおおおおおおい!!!
こういうもんがあるんだ!!!
わたしの作りたいものに近い!!!
感動して、言葉にならなかった。
・田中氏、北村氏に「デコチップの作り方を教えてほしい」と連絡→北村氏拒否
わたしね
その作り方が知りたくて
どーーーーーーーうしても知りたくて
その方にメッセージを送ったの。
「作り方を教えてください!」って!!
作っている方はプロの補聴器屋さんで
「お客様からの想いを汲んで
試行錯誤して作りましたし
企業秘密なので教えられません」
丁寧に冷静にお返事をくださったのね。
・9月12日、田中氏が「補聴器の着せ替えチップ」のクラウドファンディングを開始したいと表明
補聴器の着せ替えチップを
作成して販売していくためには
材料費や機材や宣材写真など
準備していかなければならないものがあって
そのための資金が必要です
だから
クラウドファンディングを使って
みなさんのお力添えと支援を
お願いすることに決めました
・9月13日、北村氏ツイッターで反論
・9月14日、田中氏が「問題視されるのは誤解である」と釈明
先に作っている方がいらっしゃること、
それがステキなものであったこと、
その方に教えを請うたけれども無理だったこと、
2019年8月20日付けのブログにも
すでに書き綴っています。
→8月20日付けの記事 : 顰蹙(ひんしゅく)を買おう
あくまでも
その方の作るものをヒントに
「自分たちの作る」補聴器の着せ替えチップを
世の中に出していきたい、
そういう前提ですべての記事を書いています。
・9月15日、北村氏と田中氏に記事にしていいかをツイッターにて確認。北村氏承諾。田中氏はツイッターのアカウント削除。
・9月15日(夜)、田中氏はツイッターアカウント復活。田中氏のブログにて謝罪&補聴器着せ替えチップの開発を続行を表明。
西部補聴器の北村さんをはじめ
北村さんを応援している方々に対して、
不快な思いをさせてしまった事に関しましては
大変申し訳なく思っています。
一方で補聴器の着せ替えチップが世に広まることで
たくさんの補聴器ユーザーさんたちにとって補聴器に接することが
もっと楽しく豊かなものになるのではないか
というわたしの想いは変わっていません。
問題と思われる点
1.補聴器は精密機器であるということ。
補聴器は大変デリケートな精密機器であり、補聴器を専門的に扱う「認定補聴器技能試験」が存在するほどである。これまでのデコレーション補聴器も主に「認定補聴器技能者」がいる補聴器店で行われているし、「デコチップ」を開発した北村氏も認定補聴器技能者であり、細かく調整して販売している。
また、補聴器も複数のメーカーがあり、様々な種類のものがある。そのため、あまり補聴器に詳しくない者が着せ替え用のチップを販売することは補聴器のマイクに干渉したり、故障を引き起こすことも考えられる。
田中氏が作るチップは側面のみに貼るとしてるが、側面にマイクがあるものも存在するため、専門知識がないものが細かく判断できるかは疑問がある。
2.道義的な問題について
「デコチップ」は特許や商標登録はされていない。そのため、類似製品を販売することに特に問題はないと思われるが、アイデアを完全に流用し全く同じ用途でクラウドファインディングを開始するのは道義的に問題があると思われる。
田中氏の9月14日のブログで「様々なデザインであればユーザーを助かる」という趣旨の発言をされているが、北村氏と正式にビジネスパートナーになるなど、問題なくデザインを増やす方法はあるはずである。
3.西部補聴器の経営に関する影響(9月16日更新)
デコチップの開発について北村氏に確認したところ、 補聴器ユーザーに何度もヒアリングを行いサンプルを作成するなど開発費用をかなり投資している。販売価格も多くの方にデコチップを気楽に手にしてほしいという思いからかなり安めに抑えている。
そのため、アイデアを完全にパクった商品が何の断りもなく販売されてしまえば、開発費用が回収できず、そのぶんデコチップの価格を高くしなければいけないかもしれない。
繰り返しますが、補聴器は精密機器であって、特に技術を持っていない方が類似品を販売するのは「補聴器をもっと楽しむようにデコレーションする」というそのものに問題が生じる可能性がある。
求めること(9月16日追記)
北村氏が田中氏に求めることは、補聴器の着せ替えチップのクラウドファンディングを実施しないこと、北村氏の許可なく類似品を販売しないことの二点である。
もし、クラウドファンディングなどを強行する場合は法的措置も検討している。
最後に
本来、このような問題にはあまり立ち入らないようにしているが、補聴器のデコレーションを楽しみたいユーザーに問題が起きる可能性があるため、注意喚起の意味を込めてまとめた。
補聴器は大変に高価であるし、障害者手帳を持っていて補助が下りる場合でも5年に1度しか更新されない。そのため、特に技術がないと思われる方が作ったカバーを販売するのは安全性の上でかなり問題があると思われる。
この先、実際にクラウドファンディングを行うかどうかは定かではないが、実際に開始された場合はこのnoteを判断材料にしていただければ幸いである。
妻のあおががてんかん再発とか体調の悪化とかで仕事をやめることになりました。障害者の自分で妻一人養うことはかなり厳しいのでコンテンツがオモシロかったらサポートしていただけると全裸で土下座マシンになります。