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ドンブラザーズの縦軸について考える

ドンブラザーズって縦軸がどうこうって話題が結構多かったですよね。
公式ブログやら演者さん達の間でもよく話題になってたし、それに伴って巷でも見かけてたイメージがあって。多分縦軸って「話が進むこと」の意味だと思うんですけど、そしたら確かに猿原さんは縦軸ないとか言われるのわかるなーって。

そんでこないだね、タイムレンジャーを観てたんですよ。そしたら1話からもう綺麗に面白くてですね。正確には、面白いってことが1話の時点でもうわかるって感じ。導線があまりに綺麗だったから。

タイムレンジャーって1話目から目的とか視点がしっかり提示されてるんですよね。未来人が過去にきちゃったけど、現時点で帰る手段がない。彼らが未来に帰るにはドルネロってやつを倒す必要がある。それを現代人である主人公が手助けする形。で、色々わからんところは確かにあるんだけど、主人公もまだ何もわかってないから、とりあえずこのレッドの子と一緒に物語を見ていけば良いんだなって視聴者が安心できる仕組みになってる。

この1話見てすっげぇ~って感心した後に、「あれ、そしたらドンブラザーズの縦軸ってそもそも何なんだろ?」って疑問が芽生えたんですよね。

縦軸ってのは、もともとゴールありきの概念じゃないですか。
戦隊で考えると、「敵の組織を倒す」ってのがゴールでそれを目指していく過程が縦軸。それに関係のない、例えばイエローが原始人になる回とかが横軸になる。タイムレンジャーで言えば「未来に帰る」ってのがゴール。その為に必要な過程として「ドルネロを倒す」ってのがあって、だからドルネロに関わる、あるいは直接未来に帰る手段が示唆されるような回が縦軸になる。たぶんね。

コナン君でいうと「高校生の姿に戻ること」がゴール。その為に「身体を縮める薬の事を知る」ってことが必要になって、それに黒の組織が関わってくるから、コナンくんの縦軸は概ね黒の組織が関わることになる。それ以外の通常の事件は横軸になるから、コナン君は縦軸がありながらほぼ横軸で構成されてる、と思う。

サザエさんとか、ちびまる子ちゃんとかは縦軸がない物語ですね。もっと言うと縦軸というゴールがないことが縦軸というか。時間を進ませてはならないという禁則事項がある感じ。カツオが成長してサザエさんをからかわなくなったら、それはもうサザエさんじゃないもの。同じ事を繰り返すのがサザエさんの良さであって、その変わらなさこそが人々を安心させてくれるものだから。

あー、だからドンブラザーズも変わらずそこにいる。っていう状態で止まってたら、サザエさんみたいにあり続けられたんだね。サザエさんというかおじゃる丸に近い気もするけど。

脳人が仲間にならなかったら半永久的におじゃる丸ができたかもね。ソノイはタロウの宿命のライバルとしているけど本当は仲良くなりたいを維持して、ソノニと翼も絶妙な関係のまま止まってて、ソノザとはるかは仲間達にちょっと隠しながら漫画を指導していく感じで。で、たまにシゴロクがきて、その時だけはイニザがドンブラ側についたりしてね。映画のロケット団みたいに。そういうの、確かにずっと観ていたいよね。


でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ……。


さて、話を戻しまして。
ドンブラザーズのゴールって結局何だったんだろうね。倒すべき巨悪というか、こいつを倒したら物語が終わるってのがずっといないんですよね。ドンブラって。
ヒトツ鬼も誰かが裏で糸を引いてる訳じゃ無くて、勝手に欲望に取り憑かれて勝手に鬼になってるわけだから、自然現象みたいなもんだし。対ヒトツ鬼に対するアンサーって共存か隔離か、しかないし。共存を選んでるのがドン家率いるドンブラザーズで、隔離を選んでいるのが元老院率いる脳人なんだけど、じゃあここがわかりやすくグループ間の対立構造になってるかといえば別にそうではないじゃないですか。タロウとソノイは途中まで対立構造だったけど、それでもあくまで個人間の諍いだったしさ。戦闘になれば戦うけど、おでんだってみんな一緒に食うし、サンタさんの時とか普通に協力しちゃうし。

ドンノー会議らへんのシンイチには人間側からの脳人やヒトツ鬼に対する見解みたいなものが見え隠れしてたけどね。そんでソノイにもその思考はあったと思うけど、いうて2人だけだし。9分の2という分の悪さ(内1人欠席)。そしてこの9分の2も割と大義よりも自己を優先する人たちなんだけど。

ドンブラザーズという一つの塊ではあったけど、意志は全員バラッバラだったもんなぁ。全員一丸となって目指してるゴールはなかったよね。アバターパーティではハッピーエンドを目指してたけど、あれはあくまでメタ視点であって、作中の登場人物がみんなを幸福にしたい、世界中の洗濯物が真っ白になるように、って言ってたわけでもないもの。
……あーでも、幸せを届けたいってのはタロウが言ってたか。ただドンブラザーズってタロウがいたお陰でみんながハッピーになったね!って物語でもないからなぁ。幸せをどう定義するかにもよるけど。銀河鉄道の夜の「ほんとうの幸い」を目指すみたいな、そういう?


ただ視聴者にわかりやすい縦軸として「鬼頭はるかが天才漫画家に返り咲く」「犬塚翼が愛する女性を救い出す」ってのはあった。だからドンブラの縦軸っていうと、多分みんなここらへんをイメージしてるんだとは思います。それはそれで間違っては無いんだけど、でもそれがドンブラザーズの縦軸か?って言われたらちょっと違うと思いません?

誰かにドンブラザーズってどんな話?って聞かれたときにさ、ドンブラザーズという物語は「鬼頭はるかが天才漫画家に返り咲く物語だ」とは言わないと思うんですよね。「犬塚翼が愛する女性を救い出す物語だ」という説明もしないと思う。これらの縦軸はドンブラザーズという物語に内包はされているけど、幹の縦軸ではなくて、あくまで枝の部分の縦軸だと思うんですよね。枝にしてはぶってぇ枝だけど。

あくまでドンブラザーズって桃井タロウが主人公の物語ですからね。普通の戦隊と違って倒すべき巨悪が縦軸に設定されていない以上、主人公の縦軸こそが、物語の幹の部分の縦軸になると思っておりまして。

じゃあ桃井タロウの縦軸ってなんなのかって話ですが、これはそのまま桃井タロウの成長なんじゃないかなって。これはどっかで井上先生か誰かがおっしゃってたと思うんですが……ソースが曖昧で申し訳ない。まぁ成長っていうとざっくりしすぎてるからアレなんですが、私の個人的な妄想だと、桃井タロウが夢を見れるかどうかかなって。アンドロイドは電気羊の夢を見るか?みたいな。……もっというと「桃井タロウが夢を叶えることができるか」だと思ってます。私が。個人的に。

作中でもタロウの夢に言及してるところがあって、タロウ自身は「夢などない」みたいなスタンスでしたが、もうすでに夢はあると思う。だって作中でタロウ本人が言ってたもん。タロウが宅配業者になった経緯もタロウ本人がちょっと勘違いしてるとこあると思う。タロウが本当にやりたかったことは、みている夢は、人に幸せを運ぶってことではないんじゃないかなーってちょっと思ってます。……繰り返しますがこれは私の妄想ですよ。

ってことで、更に妄想を重ねていい?いいよ。

タロウの夢が縦軸だとすると、この縦軸に関わってんのは猿原さんだと思ってます。だって彼だけがタロウの夢に言及してるから。未来別時空と現在時空の両方で。君は夢を見るほど不幸では云々と、良い夢が見れるようにって。あとここはソノイも関わってると思ってるし、正直一番近かったと思うんだけど、こっちは根本がちょっと違ってた気もする。

猿原さんの存在ってタロウにとってのバグみたいなもんだと思うんですよね。タロウは嘘をついたら死ぬという完璧なシステムの中で生きているけれど、タロウって猿原さんに嘘ついてるから。しかも嘘ついて死んでない。嘘と言うよりは隠しているとか、そういう感じの方に近いけど。前に48話に関する妄言で語った「それは……答えたくない」も間接的にそうだと思ってるし、あともう一個本人にしっかり嘘ついてるのもある。

もっというと、お供という括りの中にいないんじゃないかなって思ってます。なんかこう、彼だけが法の抜け穴をくぐってそこにいるって感じ。桃太郎がお供を定義する絶対的なシステムがあるとして、その条件に絶妙に合致してない気がするんですよね。グレーゾーンの猿原真一。
ドン引きかぞくも抜け穴をうまく利用した話と見えなくも無いし。偽物家族という嘘はつくし、猿原一家は主従だとしたら逆転してるもん。猿原タロウになってるわけだから。

同じ事が最序盤の鬼頭はるかにも言えるんだけど、はるかちゃんは最初に「忠誠を誓う」って言ってるから早い段階でお供認定されてるんだと思う。雉野も犬塚もお供認定されてると思ってます。

……うん。なんか、すげぇ曖昧に言ってますね。
これらの話はあの、もしもキンドンで読みが当たってたらちゃんと言います。今言わないのは、当たってなかったら恥ずかしいからです。実は私、わかってたんですよ!って後から言うのもそれはそれでイタい奴だけど。実は私はこうだと思ってるんですよまぁ今は言わないですけどね|ω・)チラッみたいなね。鬱陶しいやつですね。ごめん。
でも、もしも仮に当たってたらキンドン観るときにノイズになるかもしんないし。

タロウの夢に関しての妄想はね、これは本当に私が見たいだけです。もし見れたのなら、これまで見たこと無い形のものだと思うから。見たいの、本当に。キンドンで。びっくりするぐらい楽しみにしてっから。でもドンブラザーズに関しては私の予想が当たってたこと一回もねぇから。いまのとこ勝率0%。こうなるんじゃない?ああなるんじゃない?ってうきうき積み上げた砂の城を、高笑いで蹴り飛ばされてきてっから。


でもドンゼンで終わらせにかかってきてる感じもしたからどうだろうなー。
TTFCで井上先生祭りしようと思ってジェットマン、シャンゼリオン、アギト、ファイズ、キバ、響鬼をみたんですが、物語に対して誠実な印象を受けたもの。今「え、どこが?」って突っ込みを多少受けた気もしますが、私の感覚ではそうってだけです。そりゃ出来の違いは勿論色々あるんでしょうが、この物語ならこの終わらせ方だろうな、っていう感覚に対して誠実って感じ。そこに私情があんまりないイメージ。中盤は好き勝手してるかもしれないけど、終盤はね、まとめるのがめちゃくちゃうまい印象。シャンゼリオンは話数的に致し方ない部分があるだろうからアレだけど。あれはちゃんと結末までしっかり観たかったな。

ソノイが生き返るかどうかは微妙なとこなんですが、井上先生って歴代の作品見てて死をエンタメにしない人だと勝手に思ってるんですよね。いやまぁ、タロウめっちゃ死んでるし、ソノイもその前に一度死んでるんだけど。なんというか、難しいな。井上先生ご自身の死への覚悟とか向き合い方みたいなものがちゃんと作品を通しても滲んでるのがわかるから信用できるというか。鶴の獣人とかがそうだったし。作品に死が滲んでないものを私はあんまり信じられないから。

個人的にはソノイは生き返るより、生まれ変わる方が可能性高そうだなって勝手に思ってます。そしたらタロウも死ぬかもだけど。嫌な予感~。

てか脳人って死ぬんかな、そもそも。高次元の存在の死が、我々の次元の死と同じとは限らないもんな。いや、ドン家滅んでるからやっぱ死という概念はあんのかな。寺崎さんは……人間と同化してたからちょっとイレギュラーだもんなぁ。わかんねぇな。脳人のことってほぼ説明されてないし。でもタロウがずっと生きてるのは想像できないこともないけど、ジロウくんがずっと生きてる想像はあんまりしたくないからやっぱり人間寿命を全うして欲しいかもしれない。ジロウくんが哀しい目に遭うのに耐えられない。見てるこっちが。ジロウくんはお饅頭を美味しそうに頬張っていて欲しい。おせんべいもあげようね。

てかそうだよ、そしたらソノニちゃんも翼と同じペースで歩めないじゃん。それはよくない。やはり人間寿命にしよう。彼らはだって肉体を持っているからね。うんうん。ただの願望になってきちゃった。


キンドン、すげぇ見たい気持ちと見たら終わっちゃうって気持ちがせめぎ合ってます。終わって欲しくなーい!でも終わらぬ物語なんて、ない!

どんな結末だとしても、受け入れていきたいよね。