ドンゼン感想：猿原真一編

正直なところ、ドンゼンで一番変化にびっくりしたのが猿原さんです。ぶっちぎりでバランス崩してて。

そもそも猿原さんってすげぇ概念が詰め込まれてるキャラだと思うんですよね。井上先生による、見えざる概念が。それを語ろうかと思ったけど……なんか、書いてたら量がとんでもないことになったので今回はちょっとはしょります。真面目に語ろうとしたら、私は人間と神様の話とかしだすよ。怪しさしか無いよ。

ぱっと見はあんなにコミカルなのに、奥底に詰め込まれているのは達観した人間の何かだからもう訳が分からない。ニチアサでよくあの手のヒーロー像を表現しようと思ったなぁって。本当に凄い。それを表現できてる中の方も凄い。感服です。見えているところにはマジでなにもないはずなのに、あんなに魅力溢れるキャラになってるんだもんなぁ。

さて、ドンゼンでドンブラザーズに「飽きた」と言っていた猿原さんですが、この言葉に多分嘘はないと思います。実際自由を愛する男が型にはまった生活するのは窮屈だったと思いますし。

この言葉が正しいのだとすれば、ジロウの塾貰って犬塚同様に社会貢献することで地に足着けた生活してたけど、まぁその生活にも飽きたしタロウも帰ってきたしドンブラザーズ辞めようか、ぐらいのテンションなのかなってなりますね。

でも猿原さんもはるかちゃん同様、やっぱり違和感があるんですよね。

だって本編で思ったことは即行動だった男が、飽きたな…って思いながら一年もドンブラザーズ続けるわけがないんだもの。キビポも貯まってたんだしさ。
だから飽きたって言葉は嘘ではないだろうけど、本当のことでもないんだと思います。お金が触れない体質さえも運命として受け入れて、普通の社会性を捨ててご近所の教授を生業にするような男だよ。そんな思い切りのいい男が、そんな曖昧な状態を一年も続ける訳がない。

だから猿原さんがドンゼンで他の誰よりもおかしかったんですよね。サブリーダーとして機能してなくて、自分がかつて命よりも大切にしていた俳句まで詠めなくなって。はるかちゃんも変だったけど、はるかちゃんはそれでも漫画が描けなくなっていたわけじゃないから。

本編の猿原さんに安定感があったのって、自分を犠牲にはしてこなかったからだと思うんですよね。タロウは自己犠牲の男だからそういうところが猿原さんと合わなかったんだろうなとも思うけど、裏を返せば放っといてもこいつは平気だって言うある種の信頼もあったといえるわけで。だからタロウもびっくりしてたんじゃないかな。放っといても平気だと思ってた男が変わってたから。

で、もしも猿原さんがなんかこう、悪い変わり方してたらタロウは真っ先に暴言吐いたと思うんですよ。「よく雇って貰えたな」ってのもまぁ暴言だけど、あれは多分思ったこと言ってただけなので。
なんなら心配すらしてた、俳句は詠めてるのかって。もしも猿原さんが自分本位の嘘をついてたらタロウは秒で指摘するはず。一番容赦なく殴り合える関係だったんだから。

だから猿原さんもはるかちゃん同様、なにか理由があってドンブラザーズを続けていたんだろうなって。ただそれはドンゼンではっきりと明言されていないので、こっから先は妄想の類いになるよ。

猿原さんがとっくに飽きてたドンブラザーズを続けてた理由って「ゆっくり休んでくれ」ってタロウに贈った言葉を真にする為じゃないかなって。ドンブラザーズに入ってどう思ったかも「感謝している」だったから、そこも繋がってるんかなと。それがタロウへの本心からの言葉だったからこそ、初めてあんな風に自分を犠牲にしてまで踏ん張ったんじゃないかなー。

だからこう、タロウの為なんだけどタロウの為じゃ無いというか。自分がやりたいと思ってやったことだけが、その人の為である、みたいな。そういう。

で、休みの終わったタロウが帰ってきたからやっと役目を終えれるっていうね。帰ってきて嬉しかった気持ちもあったんだろうけど、普通に限界だったんじゃないかな。あとはタロウの不在が理由で俳句が詠めなくなったと思われたくない、みたいな気持ちもありそう。きみの所為でこうなったんじゃない、っていう男の意地というか。昔ながらの不器用な男みたいな。

だからこそ、タロウが死んだときに、誰よりも取り乱していたんじゃ無いかなーって。

………そういう、妄想！

FLTも終わってドンブラザーズも一旦幕を下ろしたけれども、なんかさ、猿原真一の物語はまだ続いてる気がするんですよね。本編からずーっと思ってたけど、死ぬほどわかりにくく極弱火で延々と煮込まれ続けてて。おでんだとしても煮込みすぎだよ。仕込みが長すぎて多分もう大根とか原形留めてないでしょ。

私は猿原真一が本当に好きだから、キンドンまで追うより他ないんですよね。だって猿原真一の物語の終わりが見たいもん。これからおよそ一年間、更に煮込まれるわけだけど。私の重てぇ期待と共に。

キンドン、マジで楽しみにしています。頼むぜ本当に！！