魔女はわたしに、魔法をかけた。
ある日、Twitterのタイムラインにある言葉が流れてきた。
「百合アニメだ!」
……ああ、またか。
わたしはため息をつく。
GL・BL・その他性的指向をカテゴライズして物事を見ることも、
そう制作者が意図した・していないにも関わらず
同性愛者を描く作品を避けてきた。
Twitterでも某宮崎駿作品を視聴前に「BLだ」と
わたしにフィルタをかけた人を今でも恨んでいる。
もしかしたら、わたしが好きになった作品かもしれないのに、
アンタがわたしにフィルタをかけたから、
この作品が観る前から嫌いになってしまった。
同性愛のトラウマは中学時代に遡る。
「みつきちゃん、これすっごいいいよ」
渡されたのは一冊の薄い本。
当時は同人誌の存在も知らなかったわたしが、突然渡されたのが
有名RPGのキャラクターのBL本だった。もちろんきっちり描写あり。
当時性知識も乏しかったが、本能的にダメだった。
わたしは読んだことにして本を返した。
その子とはそれ以来疎遠になった。
さて、何十年も経た現在も、
わたしのSNSのプロフィールには下記の文字が綴ってある。
「CP(特にBL・GL)苦手」と。
なので「機動戦士ガンダム 水星の魔女」放映開始は、
「絶対に観るものか」と心に誓ったのだ。
そんなわたしが先程、最終回を見終えた。
なぜ、ガンダムは(しかも成人してから)
「無印」「W」しか見てこなかったわたしが
「水星の魔女」を観たのか。
それは「親子の確執」、そして「仕事の変化」だと思っている。
わたしは家庭内暴力下で育った。
その傷は深く、未だに癒えない。
おそらく現在も、これからもひとりを選んでいることに、
この事柄は無関係ではないはずだ。
なので興味を持ったきっかけはTwitterのトレンド入りを果たした
登場人物ミオリネのセリフ「ダブスタクソ親父」だと考える。
どれ、この時代に描かれる「クソ親父」とはどのような親の像なのか。
観てみると、学生キャラクターたちの親にひとりとしてロクな親がいない。
「このクソ親どもめ。成敗されろ」
が、わたしを「水星の魔女」に惹き込んだ理由だと思っている。
そしてふたつめ。
わたしの仕事内容が2023年4月から大きく変わったことにある。
自分の趣味嗜好とは別に、客観的な視点と知識を得ることが必要になった。
今描かれる「百合アニメ」が受け入れられるならば、
わたし個人がいくら「ダメ」であろうと、知識として持ちたい。
それに、最近素晴らしい記事を読んだ。
yuzukaさんの「リトルマーメイドの配役が嫌だった」である。
「リトルマーメイド」「怪物」未視聴の方、
LGBTQ+に忌避感を持つ方はご注意願いたい。
この記事を読んでわたしは思った。
「配慮」は、誰のためなのか、と。
怒っている人は「自分向けかどうか」を判断しているのではないか。
そうじゃない。
これから作られる、今これから作られる作品は、
未来に生きる人に伝えるものなのだ。
そして最終回を迎えた今、
ロクに下書きも推敲もせずにこの文字を綴っているが、
「客観的に観る」わたしが一生懸命拍手を贈っている。
よくぞここまで描ききった。
これから大人になっていく子どもたちが、
自分の心に正直に、
好きなものを好きと言える場所が増えていきますように。
2023/7/2 「水星の魔女」リアルタイムを終えて