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彼岸花

!注意事項!
こちらは創作シナリオです。いじめや死を連想させる内容となっております。不快感を覚える方はご遠慮ください。

上記ご理解の上、お進みください。

人物
黒崎薫(17) 高校生
宮野聖歌(17) 高校生
浜田鈴音(17) 高校生
平野美緒(17) 高校生
黒崎香苗(47) 薫の母
黒崎奏人(3) 薫の弟。写真。
石黒幸喜(48) 医者
生徒

〇学校・教室(夕)
   終礼中。窓際の席に黒崎薫(17)。
生徒の声「きりーつ」
   ガタガタと音を立て、生徒が立つ。
生徒の声「れー」
   形だけの礼をする薫。終礼が終わり、生徒は各自行動を始める。
   薫の斜め前、宮野聖歌(17)の席。浜田鈴音(17)、平野美緒(17)が聖歌の傍に寄ってきて、話をしている。
   薫、帰る準備をしている。
聖歌の声「黒崎さん」
   無表情で聖歌を見る薫。
聖歌「今日、これから暇? どっか遊びにいこーよ」
鈴音「ほら、プリクラとか行かない?」
   薫、無視し、淡々と帰る支度をする。
聖歌「ねぇ、無視は無いんじゃない?」
   聖歌、鈴音、美緒を見下ろす薫。
薫「何の意味がある」
聖歌「は?」
薫「そんなものに、何の意味があるの?」
美緒「何、その言い方」
薫「お金使うんなら、もっとましなものに使いなよ」
   薫、教室を去る。
   聖歌、鈴音、美緒、顔を見合わせ、
鈴音「何、あいつ」
美緒「せっかく誘ってあげたのに」
聖歌「あんなんだから入学してからずっとひとりぼっちなんでしょ」
美緒「ムカつくー」
   聖歌、薫の席に移動し、引き出しの中を漁る。
聖歌「ねぇ」
   聖歌、引き出しの中から薫の教科書を取り出す。
聖歌「(笑いながら)いたずらしない?」
鈴音「乗った」
美緒「何書く?」
   聖歌、鈴音、美緒、教科書に群がる。

〇学校・教室(朝)
   薫が登校してくる。聖歌の席に集まっている聖歌、鈴音、美緒。笑っている。
   席に着き、引き出しの中に手を入れる薫。教科書を引っ張り出す。
   教科書。シャーペンで書かれた落書き。罵倒の文字が並ぶ。
   怪訝な表情の薫。大きくなる笑い声。
   聖歌、鈴音、美緒を見る薫。
薫「アンタたち?」
   美緒、鈴音、馬鹿にしたように笑いながら、
美緒「私しらなーい」
鈴音「何のことー?」
   聖歌、薫の後ろに回り込み、教科書を覗き込み、
聖歌「全部アンタにぴったりじゃん」
   聖歌、鈴音、美緒、爆笑。
   薫、冷ややかな目で見つめる。
薫「かわいそうだね」
聖歌「(笑いながら)はぁ?」
薫「こんなことしかできないなんて」
   聖歌、鈴音、美緒、笑いを止める。
   薫、消しゴムで落書きを消し始める。
鈴音「今どういう状況かわかってんの?」
   薫、無視し、消し続ける。
美緒「何か言いなよ!」
薫「……」
聖歌「ねぇ‼」
   薫の肩を掴む聖歌。
   薫、手を止めため息をつき、
薫「アンタたちなんかと話す意味ない」
   薫、聖歌の手を振り払い、消しゴムで消し始める。

〇学校・廊下(夕)
   人通りが少ない廊下。
   薫が歩いている。前方から聖歌、鈴音、美緒がひそひそと笑いながら歩いてくる。すれ違いざまに、
聖歌「(小さな声で)死ね!」
   聖歌、鈴音、美緒、くすくす笑う。
   薫、立ち止まり、前を向いたまま、
薫「なら、あんたが殺せばいいじゃん」
   廊下に薫のハッキリとした声が響く。
   聖歌、鈴音、美緒、立ち止まる。
   薫、そのまま歩き去る。

〇病院・病室・外(夕)
   廊下を歩き、病室の前で止まる薫。
   室内から黒崎香苗(47)と石黒幸喜(48)の声が聞こえる。
石黒の声「名前、年齢は?」
香苗の声「黒崎香苗、35歳です」
石黒の声「今年は、何年?」
香苗の声「2014年、です」
   俯く薫。

〇病院・病室・中(夕)
   ベッドに座る香苗。ベッドわきに座り質問する石黒。
石黒「……家族は?」
香苗「家族……いません。奏人が死んで、夫とは離婚して、薫、は、妹の所に……まだ9歳なのに」
   静かに涙を流す香苗。
石黒「テレビや新聞などは見ますか?」
香苗「いえ……外の世界で何があっても、関係ないですから」
   ベッド傍の小テーブル。黒崎奏人(3)の写真。

〇病院・病室・中(夜)
   ベッドの上で眠っている香苗。ベッドのそばで本を読んでいる薫。
   扉が開き、石黒が入ってくる。
石黒「薫ちゃん、今日の面会時間、そろそろ終わりだよ」
薫「ああ、そうですか」
   帰り支度をする薫。
石黒「お母さん、思い出しそうにないね」
薫「ええ……また、明日来ます」
   香苗を見る薫。

〇病院・廊下(夜)
   薫と石黒が歩いている。
石黒「お父さんとは、会ってるの?」
薫「いえ……私たちを捨てた人にあまり興味がないですし」
石黒「そっか……」
   薫、数秒俯き、かすれるような声で
薫「あたし、は、どこにいるんでしょう?」
石黒「……」
薫「お母さんは私が分からないし、お父さんは捨てていった、おばさんは優しくしてくれるけど、でも、親じゃない……。」
   薫、一息つき、
薫「すいません。先生にこんなこと言っても、困りますね」
石黒「いや、聞くだけでも、いつでも相手になるから」
   薫、俯いたまま
薫「ありがとう、ございます」
   薫、踵を返し、廊下を歩く。

〇学校・教室(朝)
   薫、自分の席に着く。机から教科書を取り出し、捲ると、油性ペンで書かれた罵倒。
薫「(小さな声で)消えないじゃん」
   教科書から紙切れが落ちる。薫、紙切れを開く。
   紙切れ。放課後旧校舎2階踊り場の文字。
   薫、ため息をつき、小声で、
薫「さっさと帰りたいんだけど」
   紙切れをポケットの中に入れる薫。

〇学校・旧校舎踊り場(夕)
   階段を上がってくる薫。
   踊り場に聖歌、鈴音、美緒の姿。
美緒「遅かった……」
薫「(遮るように)赤信号」
   聖歌、鈴音、美緒、眉を顰める。
薫「みんなで渡れば怖くないってか?」
   薫、笑みを浮かべる。

〇病院・病室・中(夕)
   ベッドの上に座っている香苗。
   窓の外に彼岸花が見える。
香苗「薫……」
   石黒が入ってくる。
石黒「失礼します……黒崎さん?」
香苗「彼岸花の季節ですか」
   石黒、窓の外を見て、
石黒「ええ、綺麗に咲いてますね」
   香苗、少し顔を綻ばせ、
香苗「それなら、もう少しで娘の誕生日です」
   目を見開く石黒。
   嬉しそうに窓の外の彼岸花を見る香苗。

〇学校・旧校舎踊り場(夕)
   笑い顔の薫。階段を登り切り、その淵に立っている。
   イラついた表情の聖歌、鈴音、美緒。
鈴音「はぁ?」
薫「一人で何にもできない奴らが他に人が居れば強がっていやがる」
鈴音「何言ってんの?」
   薫と聖歌、鈴音、美緒が対峙する。
薫「だってそうじゃない。あんたたち、いつも一緒。一人で何かしたこと、無いでしょう?」
   嘲るように笑う薫。

〇病院・病室・中(夕)
   香苗と石黒が話している。
   石黒、少し声を震わせ、
石黒「それはおめでたい! ……何歳になられるんですか?」
   香苗、少し首を傾げ、
香苗「今年、何年でしたっけ?」
石黒「……2000、24年、です」
   香苗、目を見開き、
香苗「……18歳! 私、何年薫の誕生日お祝いしていなかったのかしら!」
   驚きの表情を浮かべる石黒。
   笑みを浮かべる香苗。

〇学校・旧校舎踊り場(夕)
   笑顔の薫とイラついた表情の聖歌、鈴音、美緒が対峙している。
聖歌「うるさいってば!」
   聖歌、薫を突き飛ばす。
   階段下へ落ちる薫。
鈴音・美緒「(叫び声)」
   恐怖の表情を浮かべる聖歌。
聖歌「しらない……! わたしじゃない‼」
   バタバタと走る足音。廊下に、血が広がる。


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