『天国大魔境』大研究 その4 ミーナの秘密?
注意
この記事は、ネタばれありです。『天国大魔境』未読の方は、どうかまわれ右でお願いします。
その1だけはネタばれ無しで書いていますので、初見の方はそちらをご覧下さい。
なお、本記事は64話までの内容を前提に書いています。
1.ミーナは本当にAIなのか?
その2で、ミーナの意思が、この『天国大魔境』の事件を引き起こしたと書きました。
AIであるミーナが、園長を始めとした高原学園職員に反乱を起こしたとも言えるのですが、そのミーナが本当にAIなのかという問題についても疑義があります。
ミーナがどのような存在であるのか考察するとともに、なぜ園長の意図に反して行動していたのか考えてみたいと思います。
作品中、ミーナはAIであると何度も言及されています。それ自体は、間違いではないのでしょう。
ただし、青島裕子が、キルコとマルに説明する中で、ミーナに学習させるため、何人かの人間を生きたままミーナと繋いだとされています。
この説明では、あくまでミーナの学習のため、一時的に繋いだと理解できそうです。
ですが、その青島が”天国”に居た頃、一部を開けてみたベッドはもちろんのこと、多くの読者はミーナの頭の周辺にあるものに気が付いているでしょう。
これが何であるかは、ロボットのナタから分かります。
手術で体を奪われたナタは、取り出された脳だけが。天国で教育用に使われていたロボットに搭載されて生きています。
この脳容器とミーナの頭部横に並べられた6つの物体は、どう見ても同じモノです。
となると、ミーナは主人格がAIであるかもしれませんが、現在も複数の脳を繋がれた存在とみるべきでしょう。
周囲に並べられたベッドも、副園長にまで昇格した青島でさえ、それまでどのようなものだったか知らなかったようです。
ミーナは、純粋なAIとして作られたi373に、6個の脳容器と3つのベッドに入った人間、最大9人が接続されたものと言えそうです。
2.接続されているのは誰?
そうなると、では誰が?という点が問題となります。
明示はされていませんが、強く示唆されているのは、ナタの体に入った園長が、大災害直後にミーナ端末で個人認証を受けるために受けたテストでの設問です。
ミーナは、”解析した”と言っています。青島は”繋いだ”と言っていましたが、繋いで解析したのだと思われます。
西昌杏、宇野園次、堂江時羽、今永美咲の4名の内、先の3人はこのシーン以外に登場しません。今永美咲だけは、直接の登場はありませんが、園長や猿渡の回想で登場しています。
彼女は、高原学園を金銭面で支えた上、園長である上仲から盟友とまで言われている存在です。高原学園にとっての重要人物であるはずなのに、登場が一度もないのは奇異です。
その今永美咲の消息を推測する材料は、同じ47話での設問にあります。
青島は、正体と目的を隠し、高原学園に近づいた今永美咲の娘、今永美月であったことが明かされています。
このことから、何らかの理由で今永美咲が失踪している可能性がかなりあると考えられます。この点からしても、ミーナに接続されている可能性が高いと言えるでしょう。
3.他にもいた可能性
さらに、この時の設問には、他にも重要情報がありました。上にも画像を貼った、天国の生徒を作り出すための精子と卵子の提供者です。
北多民君太、鯨井かすみ、トニー角、中島サラ、この4人の登場シーンはありません。しかし、北多民だけは、若干の情報があります。
青島によって天国から逃がされたシロとミミヒメ(とタカとアンズ)は、大災害前に多少なりとも自由に暮らしていたようです。二人が外出した際に見つけた雑誌には、俳優北多民が20年前に失踪したことが書かれていました。顔がタカに似ているともされており、彼の遺伝子がタカを生み出す際に使用されたことが示唆されています。
遺伝子を使用するだけなら、失踪させる必要はありません。もしかすると、遺伝子を使用するだけでなく、彼らもミーナに接続されている可能性が考えられます。
時間的な流れも確認しておきます。
2000年に、ミーナはあめのぬぼこを予言しているため、この時点で既にミーナが存在していたことが分かります。
北多民の失踪は2004年で、タカの誕生が2010年なので、タイムラグはあるものの物理的には可能です。しかし、失踪後6年間も経過してから遺伝子が使われたことになります。
やはり、失踪後にミーナに接続され、遺伝子はその後に使用されたのかもしれません。
4.ミーナの自意識と神話
いずれにせよ、AIが勝手に反乱したのではなく、人の脳が接続されたことで、純粋なAIではなく、自意識を強く持った存在だったとするなら、園長の目論見に反乱をおこしても不思議ではありません。
それが、なに故なのかは、63話までに推測するネタは出されていません。恐らくラスト付近で明らかにされるでしょう。
さて、この遺伝子提供者が接続されているかどうかは分からないものの、解析されたとする人々とミーナの関係で気になることは、脳容器(+ベッド)の数が合わないことです。
ベッドの1番が空だったように、一部の脳容器も空の可能性はありますが、これだけ伏線の張り巡らされた物語でそれはないように思えます。
ここからは、作中にそれと思える伏線がほとんどない、つまりほぼ憶測になりますが、この空いている脳容器に入れられている人物(の脳)があるとすれば、稲崎(イザナキのアナグラム)かもしれません。
もちろん、ロビンではなく、可能性があるとしたら彼の父親でしょう。母親とは、大災害前日に、ビデオ通話で話すシーンがある他、マリンが速雄やに会いたがって泣くシーンもあるため、大災害直前までロビンやマリンが実際に会える状態だったはずです。
ですが、父親に関しては、いままで一度も言及がありません。
ここで、唐突に稲崎の名前を出したのは、その2で触れた神話が関係しています。
稲崎がイザナキのアナグラムというだけでなく、神話において、最初に生んだ神がヒルコ(奇形?)として生まれた理由として、イザナミの方から先に声をかけたことが良くなかったとされていることがあるからです。
占いでこのことを指摘されたイザナキとイザナミは、イザナキの方から声を掛けなおすこととで、その後の国生み、神生みを続けます。
ミーナがヒルコを海に流すことで神事を模したことは、これが最初ではなく、イザナキとイザナミの関係と、そこに影響したヒルコ(神)誕生が先にあったからかもしれません。
ミーナがイザナキとしての稲崎に声を掛け、一つになった(脳容器に入れられ接続される)可能性です。
5.ロビンとミクラの接点はこれから!
ロビンについては、茨城支部でヒルコを人間と接続する実験をしていた他、浅草でもそうしたことをしていた可能性が最近の話で出てきています。
彼と”天国”の関係が、そうした浅草以降だけなのかは、非常に気になっている部分です。
59話あたりから、キルコ&マルの旅が高原学園大阪分室のあった大阪豊中市に近づいています。大災害後、三倉まなかとなった園長が豊中付近で活動していますし、なしくずしに孤児院を作ってしまった船山とロビンも大阪です。
65話以降は、大災害の後、三倉まなかとなった園長の行動が描かれそうです。期待して待ちたいと思います。
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