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『天国大魔境』大研究 その1 『天国大魔境』の魅力

注意!

※『天国大魔境』に関しての記事は、このページのみネタばれなし(と言える程度)に留めます。
 その2以降は、ネタばれ全開で書きます。
 ですから、原作マンガだけでなく、アニメしか見ていない人も、その2以降は決して見ないで下さい。謎解きが面白い物語なのに、その謎を解説されたら面白みの大半が消えてしまいます。


『天国大魔境』とは

 石黒正数氏によるマンガです。2023年にはアニメ化もされています。
 これを書いている2024年5月現在、原作マンガは単行本既刊10巻で『アフタヌーン』で連載が続いています。現在の所、7月号掲載の64話まで。
 アニメは6巻までの内容をアニメ化したものとなっています。妙な改変はないため、アニメを見た後で原作を読んでも全く違和感はありません。むしろ、マンガを読んでも声優さんの声が聞こえてくる感じがしてgoodです。  原作が秀逸だからですが、アニメも素晴らしいです。ですので、まずは取りかかりとしてアニメを見るのが良いかもしれません。私自身、このパターンでド嵌まりしました。

 ジャンルとしては現代、近未来SFです。大災害による文明崩壊後の2039年を舞台にした魔境編と謎の閉鎖世界を舞台とした天国編で描かれています。
 また、現実には不可能な技術も可能とされているので、現実とそっくりな仮想世界だと思って読んだ方がいいかもしれません。いわゆるハードSFではないということです。
 作者の石黒正数氏は、影響を受けた漫画家として、藤子不二雄氏、大友克洋氏、小原愼司氏を上げているそうです。絵柄は藤子氏の他、大友克洋氏の影響が大きく、ストーリーは藤子不二雄氏という感じがします。
 秀逸な藤子不二雄氏の短編を長編化した感じでしょうか。

最大の魅力 ”謎”

 さて、冒頭の注意で書いた通り、『天国大魔境』のいちばんの魅力は”謎”です。
 もちろん、魅力が分からないという意味ではなく、謎解きや謎に騙される快感が魅力だと言うこと。

 物語は、一見、何の関係もなさそうな天国編と魔境編が、交互に進行します。その二つの物語は、徐々にその関係を感じさせると共に、謎が謎を呼んでゆきます。
 アニメ化されている6巻くらいまでの内容では、この天国編と魔境編の関係が、最大の謎と言えるでしょう。(7巻で明らかになります)
 その後は、主要な謎がキャラの正体や関係となってきます。判明したものもありますが、まだ大きな謎が残っています。

 物語の構造的には、少々難しく、一読しただけでは良く分からない部分も多いはずです。ですが、良く分からないなりにも、謎を含めて理解させるのではなく感じさせる描写が多く、2度、3度と読み返すことで謎も見えてくるし、より楽しめるという奥深いマンガになっています。
 是非、自分で読み取れた部分を元に、読み返して下さい。最初に読んだ時には注目することなく流してしまった情報が、重要な情報だったと気付くでしょう。
 この気付きが、この作品が与えてくれる快感です。

 ただ、信じられないことに”天国大魔境”で検索するとサジェスチョンに「つまらない」が出てきます。
 つまらないと感じる人が何故なのか見てみると、やはり物語構造が複雑なためか、話の展開が理解できない方がいるようです。そういう方は、②以降を見ても良いかもしれません・・・。もったいないですが。

 何せ、いちばんの魅力が”謎”なので、未読の方には、この点を詳しく語ることが困難ですが、その他の魅力も、できるかぎり伝えたいと思います。

キャラの魅力

 キャラよりもストーリー重視の物語なので、「このキャラが魅力的」と言うのは難しいのですが、たぶんキルコはほとんどの男性にとって魅力的なはずです。
 その理由は、マルが告白した時にキルコ自身から語られますが・・・

10話より 憐れマル撃沈さる!(セリフの黒塗りは筆者)

 ただ、ミミヒメはかわいいです。(石黒正数許すまじ!)

23話より 幸せなミミヒメ

 主人公は・・・マル?、キルコ?
 正直分かりません。群像劇なので、ハッキリと主役と言えるキャラはいないと言ってよいかもしれません。
 アニメ(原作6巻まで)のヒロインはミミヒメでしたね。

5話と3話のトビラ 主人公というよりメインキャラ マル&キルコ

伏線の絶妙さ

 一番の魅力は、物語全体を通した”謎”ですが、その謎を見せるための伏線が絶妙です。そして、とても紹介しきれないほど、山のように伏線が張られています。
 どう絶妙なのか説明するとネタばれになってしまうので、このページには書きません。仕込みの一端を見せるだけにします。

9話 19話 55話より 作品内パロディ”ではない”ところがスゴイ!
9話 19話 20話より これも同じ
10話トビラと11話トビラ トビラ絵なのに伏線です。読者は気が抜けない!
12話の1ページ(見やすいようにコマ割を縦から横に変更してます)
セリフはほとんどないのに、この1ページには大量の伏線が詰まってます!
34話より トラウマは伏線としてよくあるパターンですが・・・

場面転換の妙

 場面転換は、作劇上どうしても必要な部分ですが、読者の興味を続かせる上では邪魔なものでもあります。(私は苦手です)
 ところが『天国大魔境』の場面転換は、小技が仕込んであったり、場面転換自体が伏線だったりと、同じ創作者として目を見張るものがあります。

13話より 左のコマから右のコマに、ページを変えて続いている。
場面転換で、しかも魔境編から天国編への転換
意味は何も無いのだけど、「抜け」という言葉を韻のように使っている。
13話より これも場面転換
「どこかで既に、前の文明が復旧しているとしたら・・・」からの天国編
ところが!(深い)
23話より 同一ページ内の場面転換
天国編から魔境編へ 近くに来ている・・・のか?
41話より 左ページから右ページにめくった時に場面転換
似たような構図 全く違う場面なのに意味がある!

その他

 細かな芸と呼ぶべき細部にも魅力が詰まっています。
 ネタばれにならないものを紹介します。

55話より パロディ(説明は不要でしょう)

最後に

 現在までの進行は、完結まで1/3程度を残すところまで進んでいると思われます。
 一部の謎は明らかになっていますが、もっとも重要な謎はまだです。恐らく、マルとキルコが”天国”に辿り着く時、全ての謎が明らかになるでしょう。

 私としては、やはり物語には”救い”があって欲しいと思っています。
 キルコもマルも、そして他の・・・も、救われて欲しいな、と思います。

 一読者として注目している今後の展開ですが、ぜひ多くの人に読んでもらいたいと思います。
 てか、読め!

以下のネタばれ記事は、マンガを読んだ方だけどうぞ!

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