海藻録 四月十五日〜十九日

15日(月)晴
座学;
・航海(航法)S教官
宮古市における日出没時間並びに潮汐時間算出方法。複雑計算ゆえに注意を要す。
船用機関I O教官
・熱機関(内燃/外燃)、及びレシプロ機関の概要説明。
O教官、温和かつ柔軟な口調な老紳士で熱血かつ大変親切なり。それゆえ不良学生への指導に躊躇なし。清々し。
・機関実技。アセチレン溶接に於ける換気注意
総合訓練実施。避難訓練、及び地震発災時における班編成役割の確認。
予は避難訓練に於いては、「伝令」班、地震発災時は「糧食搬出」班なり。

16日(火)晴
・支給品配布。
(1)警笛、(2)雨合羽、(3)耳栓
支給品への氏名記載の徹底、保管時の留意点の説明
・休日における食堂喫食時の注意説明。
欠食申請者以外は各喫食時に、食事券を提示すること。
・寮部屋机抽斗の鍵番号控え
・各班編成の班長指名
4月19日迄に、各班長推薦、報告のこと。
なお各班長は毎月第3月曜日に定例会ぎを実施、議事を纏める。
予は高齢かつ経験豊富のため之を辞す。有望なる若手学生を推薦す。

17日(水)晴やや曇
座学;
・機械工作 Y教官
教官の南部訛り甚だし。聞き取り極めて困難なり。
岩手県出身の同期に曰く、同地出身者をしても聞き取り困難、とのこと。
参考書等の自学自習を以て是に代替せざるを得ず。
・船舶機関I O教官
内燃機関及び気筒内の「死点」に就いて
ディーゼル機関の行程説明。興味深く、面白い。
「海上法規」復習
海上における衝突の予防のための国際規則(International Regulations for Preventing Collisions at Sea)による定義。
「電気・電子工学」復習
直列・並列回路における電圧、電流並びに抵抗の概念と回路内計算の復習。

18日(木)曇のち雨
・海上実習(座学)O教官
練習船「月山」号(排水量:45噸)の概要説明、及び始動のための一連の講義。発動機の起動から、排水バルブ開放、機関室での諸注意を徹底。一度で覚えるのは困難なり。実技の体験とともに要綱読み直しが必要。

学生1名の自主退学の報あり。極めて残念なり。

第17期の級長として指名さるる。固辞するも拝命せり。
年長者として行動で範を示すのみを方針とし、口やかましくならぬよう心がけるものなり。

19日(金)晴やや曇
海上実習(練習船「月山号」にて
艀の操作から乗船までの一連の所作確認。
船橋(Bridge)、甲板(Deck)、機関室(Engine Room)を3班編成にて確認。
装備及び機材諸元取扱を学ぶ。波穏やかなるも、肌寒し。

放課後、宮古市職業紹介所に出頭。
本校専修課程は厚生労働省指定、専門教育支援給付金対象たるゆえに、申請あれば、入学金一部相当の金額の返納あり、とのことで、都内在住時に準備したる申請書一式を提出す。
無事手続き完了し、安堵せり。同時に雇用保険給付手続きを行うも、制度煩雑かつ申請に時間を要し、疲弊す。なるも温和かつ丁寧なる職員諸賢の親切さに感銘を覚え、帰寮せり。



読書ノート
入学後、最寄りの宮古市図書館にて貸出手続きを完了し、尊敬したるマルクス・アウレリウス・アントニヌス帝『自省録』を借りる。

以後、お前を悲嘆に誘うものにあっては、常に次の原理を役立てるように、心に銘記せよ。ーすなわち、それ(不運な出来事)は不運ではないということ、むしろそれを気高く耐えることが幸運であるということを。
(中略)この世に、生きる時の間は短く、しかも、どれほどのことを、耐え忍びつつ体験し、どのような類いの連中とともに生き、また、その魂はどのような肉体の器の中に入れられつつ生き続けてゆくものであることか」
『自省録』(「世界の名著」中央公論社出版) 449頁

宮古市図書館にて予の老父の漢詩集があり、苦笑す。
ご興味あらば、ご参考までに。


宮古市立図書館より