日当たりのよい窓辺では
透明のピンチの連なりはキラキラと目映く、
久方ぶりの乾いた風を左の頬に感じながら、
窓と反対の部屋の奥の暗がりに、
ぼくは大事なものを置いてきてしまった。
3つの箱を開け2つを閉じた。
開いた2つを持って帰る義務がぼくにあったらしいが、
結局それらは打っ棄って、
ぼくの悲しみは白昼の暗い筐の底に沈んで、
きっと上空の衛星から窓辺のおじさんが、
洗濯物を干す日常が保存されるだけだろう。
ぼくの悲しみは本当に独りよがりで、
3つの箱と箱と箱の間では、
記憶までは共有することもできず、
事実確認に追われ混線状態。
ピンチの連なりにタオルと靴下をかけながら、
ぼくは窓辺に立つおじさんとなる。
少年の頃一番成りたくなかった、
窓辺のおじさん。
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