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イヤな上司との少人数の会に招かれたら腹をくくるしかないか Well, they will get over it 【元外交官のグローバルキャリア】

時間を共にしたくない上司や職場の先輩に自宅に招かれたらどうするだろう。私なら腹をくくる。腹を括って一度限りと思って参加するか、腹を括って断る。でも、腹を括って参加しても、そんなに良いことはない。それなら逃げるが勝ちだ。

上司からの召集

とある海外の都市で、役所の上司の節目の誕生日にレストランに召集された。上司は遠慮なく高めのワインを頼んで一人無礼講で盛り上がっていた。会が終了して、上司の分を除いた人数で割勘をした。仕事と割り切っていたが、上司の分まで自腹を切って自分の時間を犠牲にする、というのは珍しい。日本の上司たる者は大体、部下との会には多めに払って一足先に会を後にするはずなのに。

英語社会だと、上司の家に招かれがちだ。(「お越しいただいてありがとう。Thank you for coming!」「お招きありがとうございます。Thank you for having me/us.」)職場でなくても、仕事での関係で夫婦や家族単位で招かれる。よほどのことでなければ、とりあえずは参加する。期待しないで行くと結構為になることや、楽しめることもある。

自分が主催する上司だと

主催する側になると分かるのだが、声をかけた部下や後輩の返事が遅かったり、断られたり、あっさりドタキャンされると結構傷つく。主催する方も仕事だと思って義務感から会を開催している。バランスを見て、プライベートではそんなに招きたくない人を招いていることもある。

前述の上司の節目の誕生日でもあったが、出席者を労うよりも「なぜあいつはいない」みたいな話題が出る。「〇〇さんは仕事です。」と仲間を庇う。自宅主催だと尚更その欠席は目立つこともある Where is such and such?。それを見越して、嫌でも参加するべきか。

頑張っても良いことはない

一つ言えることは、職場の先輩や、上司主催の会合に何回参加したからと言ってスタンプカードのように特典が付いてくるものではない。上司の会にいつも声がかかる人に、仕事上の恩恵があるわけでもない。他の人だけに声がかかることが面白くなかったとしても、部下と連みたがる上司の会から得るものはあまりない。

会を欠席して、相手が不満に思ったとしても、それは仕事で挽回できる。They will get over it.それを根に持っていても仕事が進まないし、その会に出た結果、素晴らしいことが待っているかというとそんなことはない。二、三人での食事は別だ。「誰々さんとはたまに飲むんですけど。We get together once in a while for a drink.」はポイントカードのダブルポイントやトリプルポイントになる場合がある。そして、そこで重要な裏情報が聞けたり助言をもらえることもある。

ドタキャンした後輩

私が主催した会をドタキャンしおった一回り下のアメリカ人の後輩とも、その後も仲良く付き合った。総領事の秘書であるその後輩と私は、職場で姉妹のような関係だった。振り回されている彼女の机に、「深呼吸して。Breathe.」や一歩前に出られない彼女に「オトコだったらどうする?Be a dude.」とメモを貼ってメンタリングをした。同僚についてぶちぶち言う私に擬妹は「彼女はあなたの改善プロジェクトじゃないのよ、そっとしておきなさい。She is not your project to fix. Leave her alone.」と諭し、新任の同僚が日本から来た時には「そんなに期待をかけないの。Drop your expectations.」と私をリバースメンタリングで諌めた。

逃げ場のある誘い

「明日うちに来ない?Would you like to come over to my house tomorrow?」と後輩たちを誘って、大いに盛り上がった夜もある。シカゴの我が家に届いた村上隆のリトグラフを一緒に開梱しよう、と突発女子会が開催された。3人で一緒に帰宅して、Trader Joe'sの冷凍おつまみを温めて、立場を超えて、本音を語って笑い合った。We let our hair down. またやろう、と言ったっきりの一度だけの幻の飲み会だった。

断る時の大義名分

きちんと招かれて断る時には、大義名分を作っておくと良い。日本文化で、「仕事の都合で」、と言うように、欧米文化であれば、「家庭や個人の事情」に突っ込む人はいない。とりあえず「Thank you for the invitation. I will be there.」と参加表明をしておいて、どうしても出たくなければ、相手の準備に支障がでないタイミングで、こういう理由で断っても良いだろう。「本当に申し訳ないですが、個人的な事情で伺えません。I deeply regret my absence. I have a personal issue to take care of that just came up. 」「家庭の緊急事態に対処しなくてはなりません。I am so sorry that I can't make it. I have a family emergency that I need to address.」

個人的な事情は、自分自身をゆっくり休ませることかもしれない。家庭の緊急事態は母親の愚痴を聞くことかもしれない。詳細を明かす必要はない。Personal reasons と family reasonsの二つは英語社会の切り札だ。日本でも「子供の迎えがありまして。I have to pick up my kids.」と子供を理由に挙げる人がいる。「家庭の事情」とは、子供の世話、親の介護、婚活、妊活、パートナーとの危機、はたまたペットの危篤と、その重みは変わらないはずだ。

嫌だと思っていても、億劫でも、行ってみると楽しめることもある。嫌なものはどうにもイヤ、なこともある。自分に嘘をつかずに、攻撃をかわしながらも流されずに生きるのが、しあわせとワーク・ライフ・バランスの秘訣だろう。ちょっとしこってもその内解消する。They will get over it. 


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