OOUIというデザイン手法がチームにもたらすもの

この記事はGoodpatch UI Design Advent Calendar 2019の16日目の記事です。
Goodpatchでは1年ほど前から「OOUI(Object-Oriented User Interface)」を含めたソフトウェアデザインを研究するチームが存在しており、社内外に向けたナレッジの発信、ワークショップの提供等の活動を行ってきました。その結果、OOUIは社内の共通言語のひとつとなり、今年のAdvent CalendarでもOOUIについて触れられているものがいくつかあります。

この記事では、OOUIをデザイン手法として捉えたときにそのプロセスの中で生まれるもの。その効果について個人的に感じたことを書きたいと思います。

OOUIというデザイン手法がもたらすふたつのもの

ひとつはユーザビリティです。
名詞→動詞という「オブジェクトベース」な操作環境を構築することで「モードレスなUI」を実現すること。それによって得られる、高い操作性がOOUIが生む価値のひとつと言えるでしょう。

そしてもうひとつは、プロダクトチームで使える共通言語です。
ソフトウェアをデザインするにあたって、3つのモデルを定義する必要があると考えています。

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この3つのモデルを作る上での共通言語としては以下のようなものがあります。

脳内モデル:ペルソナ
表現モデル:デザインガイドライン
実装モデル:ユビキタス言語

OOUIのプロセスの中に「オブジェクトモデリング」と呼ばれる工程がありますが、このモデリング作業が表現モデルを構築する新たな共通言語を生み出します。

共通言語を生み出すオブジェクトモデリングとその効果

ソフトウェアをデザインするという行為は、以下のようなことだと考えています。
1. 事業ドメインの中にある「概念」を発見する
2. ソフトウェア環境の中にその概念を「オブジェクト」という形で定義する
3. オブジェクトを具象化し操作可能な環境を創造する

そして、オブジェクトモデリングは上記の1と2にあたるプロセスです。Goodpatchではこのモデリングの記法を独自に「UIクラス図」として定義しています。
UIクラス図については、こちらの記事を参照ください。

では、モデリングしたオブジェクトをどのように共通言語として機能させるのか。
そこで参考になるのがnoteのCXOである深津さんのこちらの記事です。

深津さんの記事では、ユーザーの行動という側面から事業の成長サイクルが書かれています。
ここで着目したいのが「ユーザーの行動」です。
GUIアプリケーションにおけるユーザーの行動とは、「スクリーンに具象化されたオブジェクトの選択」と「選択したオブジェクトに対するアクションの実行」です。

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noteであれば、「記事」というオブジェクトに対して、「作成」、「削除」、「公開」、「スキ」というアクションがあるという感じです。
そして、「スキ」という概念もユーザー、記事という関連性を持ったオブジェクトとして定義できるでしょう。
記事というすでに存在しているオブジェクトに対して、スキというアクションを実行することで、「スキ」というオブジェクトのデータが増えることになります。

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ここでは「ユーザー」というオブジェクトとしていますが、「作者」と「読者」というオブジェクトに分けるというのもあるでしょう。

成長サイクルとオブジェクトモデリングで定義したオブジェクトが一致していれば、「事業の成長」と「アプリのUI」で観点が一致します。
そして、アプリのKPIは「ユーザーの行動の結果生まれるオブジェクトのデータ数」として定義、観測することができます。
目標となるオブジェクトを共通の認識として持ち、それを事業の成長と一致させることができればグロースのための数々の施策は点ではなく、線や面となります。

クライアントワークで様々なプロダクトのお手伝いをしていて感じるのは、
「事業の成長」と「アプリのUI」に同じ観点を持てていないことが多いということです。
そこにこのような観点を持ち込むと、定義したオブジェクトを中心とした対話が異なる職種間で生まれます。
また、このオブジェクトとロードマップを見ながらどこに拡張性を担保しておくべきか。という対話をすることもできます。
オブジェクトというひとつの共通言語を使って、事業の成長、デザイン、開発を進めていくことが可能になります。

『デザイナーはビジネスを分かっていない。技術を分かっていない。』と言われることが多いですが、ひとりに対して様々な視点を求めるのではなく、様々な視点を持った人たちが同じ観点を持って対話することが大切だと考えています。

UIデザイナーが作る、「使いやすいUI」、「分かりやすいUI」はこのような環境の上でこそ、その効力が発揮されるのではないでしょうか。

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