下手すりゃ半年練る
小学1年生くらいまでの子供にとって、信用してる大人の言葉は100%真実と言っても良いと思う。少なくとも自分には確実にそうだった。
幼少の頃『ねりあめ』という駄菓子が好きだった。
色付きの水飴である。
ある日親の前でこれを喰らわんとしたところ、母は僕にこう言った。
「水飴は練れば練るほど美味しくなるよ」
これが母にとっては、正しい水飴のお作法を伝授したに過ぎないのは今となっては明白だが、
アホすぎる幼少の僕にとっては
練れば練るほど美味くなっていく、つまり練り続ける事でその美味しさはケーキを超えるし、ステーキも超えるし、鰻重も超える。
と言っているに他ならなかった。
僕は練った。
メチャクチャに練った。
比較的柔らかく休む事が許されない『ねりあめ』を練りに、練りに、練りに練った。
どれほど練ったかは記憶にないが、母が僕に
「え!?あんた!!まだ食べてなかったの!?え!!!???」
と驚愕していたのはハッキリ覚えている。
それほどに混ぜたという事だと思う。
その後、味が普段とさほど変わらない事にガッカリしたのも覚えている。非常にふんわりとはしていたが。
あまり子供に気軽に「◯れば◯るほど◯◯」などは言ってはいけない。半年やりかねない。
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