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家⑬




夢を見た。
生身の肉が入ってない、からっぽの亀の甲羅から蛇が舌をちらつかせながら出てきた。
ただそれだけなんだけど、何でそんな夢みるかな。と思っていた。
蛇の夢だから、金運の夢かなと思ったけど、あんまりメデタそうな夢じゃないな。
そう思いながら、でも妙に気になる夢だった。
御上人にこの話をすると、御上人は少し考えてから、
「自宅から北の方角に何があるか気になりますね」
そう言われた。

北の方角か…。
我が家の北側は、霊能者が霊が集まって真っ黒に歪んで見えるといった家がある。
北の方角。北といってもすぐ隣の家のことは言わないかな?どうなんだろ?

iPadを開いてGoogle マップを拡大していく。すると大雑把だけど、我が家から北の方角には夫の実家があった。
マジか…。
夫の実家とはそれなりにうまくやってはいるが、揉めることもしょっちゅうだった。

待てよ…。思い返してみると夫の実家、揉め事多くないか…?
結婚してからこれまで、私と夫の実家とで色々あったよね。
嫁姑と言えば、それくらい当たり前とも思うけど、我が家と上手くいっている時は、他で、揉めてたような気がする。

義父はたった1人の妹と絶縁状態だ。近くに住んでいるらしいけど、私は会ったことない。
義父の告別式にも来てなかった。そればかりか、私が嫁ぐ前のことだけど、義父の父の告別式にも来なかったそうだ。
義父は早くに母を亡くし、妹の世話は義父がしてたらしいのに…。
兄妹なのに、寂しいよね。

我が家のことや主人の家のこととか、気になることを御上人に相談している。
話を聞いた御上人は少し考えたあと、私たちにこう尋ねた。
「御主人の家系で、過去に稲荷を祀っていたことはありませんか?」
私たちの話を聞いていると、どうしても背後に狐の存在を感じずにはいられないそうだ。

主人の家系の分家に狐に憑かれた芸妓の話があるが、多分それは関係ない。その狐は自分の望みを叶えて人の世を去っていると思われるから。

主人の母に尋ねてみた。
すると、親族の1人が稲荷を祀っていたような気がするがハッキリしないという返事が返ってきた。

御上人に相談の上、稲荷神社にお参りすることになった。


6月某日、私は娘と鎌倉にある稲荷神社へお参りに行った。
蒸し暑い中、赤い鳥居をくぐりながら階段を一段づつ登っていく。
階段の両端には狐の石像が並んでいる。
それぞれ表情が異なり個性的だ。
見られている。
そんな少し怖いような気持ちを抱きながら、汗を拭いつつ階段をあがった。

私は神社であまり願い事はしない。
昔は色々願い事をしていたが、今は挨拶だけに留めている。
ここではご挨拶と、主人の家系で祀っていて、今はどこにいるのかわからなくなってしまった狐の代わりとして、ご挨拶させてもらいにきたことを心の中で唱えた。

近くに白蛇を祀っている神社もあるので、そこには御供物の卵を持ってお参りした。
私は子供の頃から蛇の夢をよくみていた。咬まれることはなく、白蛇の夢は数回しか見たことはないが、そもそも蛇の夢なんてそうそう見るものではないらしい。でも娘も蛇の夢をよく見るらしかった。

娘が、白蛇にこっちにおいでと誘われて踏み潰した夢を見た話を、人伝てで女の霊能者に話したときに、神社にお参りして謝罪しなさいと言われていたので、この時にした。

その後もこの二つの神社にはお参りを繰り返している。

2回目の参拝の時だった。
稲荷神社の鳥居をくぐっていたとき、あと一段で鳥居を抜けるというところで、娘が立ち止まった。
階段はとても狭く、他にも参拝者がいたため私は娘を急かした。

「あの狐だった」
帰り道、娘が言った。
以下は娘の話。

何日か前の深夜。
(この時期、娘は私と同じ、一階の和室で寝ていた)
上から階段を何かが降りてきた。娘はそれを我が家の愛犬だと思ったらしい。
愛犬が二階から駆け下りてきて和室に入り、自分の布団の周りをグルグル回ったあと、お腹の上に飛び乗った。そして、気配が消えた。

それは愛犬ではなかった。
この時娘が騒いだので、私も覚えている。
結局正体は分からず、でも我が家ではこんなことありがちなので、このときはあまり気にしなかった。
この時の愛犬と間違ってしまったナニかが、神社の鳥居をくぐる際の階段の端にいる狐の石像だというのだ。

階段の上から2番目、階段を上がっている状態で左側にいる狐の石像。

「見た瞬間、これだと思った」

娘が言った。

その狐の石像に意味はあるのか?
私たちにはわからない。


※これは2017年に経験したことを2020年2月23日・3月1日に自身のblogに掲載したものを、再編集しています。

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