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漫文駅伝『三浦マイルドの田舎暮らし』 第1回 三浦マイルド

どうも。三浦マイルドです。

私、今年の2月から、9年間住んだ東京の街から、生まれ故郷の広島県江田島市に移住しました。

昨年の夏頃から、一人暮らしをしていた母親が体調を崩し、暫くは遠距離介護をしていたのですが、同居して介護した方が良いと判断し、島に戻る事を決意しました。

正直、東京から撤退する事に葛藤はありました。

田舎でスローライフを送っていると、芸人としてのハングリー精神が削がれてしまうのではないかとの懸念、

絶対的に減る舞台数、

周りに競争相手がいないという環境、

自分が芸人としてダメになるのではないかと、今も不安ではあります。

「苦肉祭に出てないと、本当にダメになるかもしれない」と思い、居島さんにお願いし、不定期ですが、今もライブに出演させていただいております。
ありがたい事に、今月から苦肉祭noteでもコラムを書かせていただく事になりました。

18歳で出て行った島に戻り、しみじみと田舎町だなあと感じています。

ネタで島の事を

世間から大分、遅れてる。

島の人達はソ連が崩壊した事を知らない。とか

島の農協ではヒロポン売ってる。とか

島の国民学校では、子供達が竹やり持って訓練してるとか言うてますが、そこまで酷い土地ではありません。

魚も牡蠣も美味しいし、海を一望できる素敵なお店がたくさんある、素敵な所です。

「海辺の雰囲気がイタリアに似ている」という理由でセカンドハウスを江田島に所有してる方がいるとも聞きます。

「この島で子育てがしたい」と都会から移住してきたご家族もいます。

あと、都会に比べて圧倒的に治安が良い
これが利点ですね。

田舎は、街ぐるみで不審者がいないか、余所者がおかしな事をしてないかを、監視して治安を維持してる側面があります。

道を歩いていたら、すれ違う人に必ずと言っていいほど「おはよう」「こんにちわ」と声をかけられます。

そこで、挙動不審な態度をとると「いなげなやつがおる(変な人がいた)」と広まるわけです。

私も先日、島の港の前にある公園のベンチで日向ぼっこをしていたら、知らないお婆様から話しかけられました。

「あそこに、リュック背負っとる奴、おるじゃろ?あんな(あいつ)、人の車ん中、覗いて回りよるんよ。何をする気なんかねえ」

おそらく、このリュックを背負った方(男性)は、犯罪者予備軍として、島のお年寄り達に徹底的にマークされている事でしょう。

この監視が犯罪抑止になっているから心強いなと思う反面、自分はあらぬ疑いをかけられない様に気をつけねばとも思います。

島を歩いていると、おばさま方に、よく質問攻めされます。

「どこ行くん?」とか「仕事なん?」とか
ちょっと踏み込んだ事を聞いてくるんですね。

「月に仕事どんくらいあるん?」

「仕事ない日は何しよん?」

ここまでくると、質問というか、もう取材です。

多分ですが「あの三浦さんとこの息子さん、東京から帰ってきて、毎朝、港の辺りプラプラ歩きよるけど、何しよんかねえ?もう無職なんじゃないんね?」と言われてるのでしょう。

田舎は、都会以上に「ええ歳した者が仕事もせんと」という風当たりが強いところです。

東京では、平日昼間から、公園でビールを飲んだりしていましたが、島でそんな事をするのは自殺行為です。
「いなげな事しよるねー。」
「ふうがわりぃねー(体裁が悪いね)」と悪評がたってしまいます。

私もすでに犯罪者予備軍のリストに入れられてる可能性もあります。

だとすると、今後、島で車上荒らしがあったとすると、リュック背負った男性が容疑者Aで、私が容疑者Bです。

「三浦さんとこの子が怪しいわいね。毎朝、小用港の周りウロウロしよるし、あの子、今、無職じゃろ?あの子、東京で窃盗の技術、学んできたんじゃないんね。」

こんな声が聞こえてきそうです。

あと、「お母さんの具合はどがいなん?」とよく聞かれます。

健康状態も、個人情報だと思うので、正直あんまり、他人に話したくはないんです。

母の状態が良くても、悪くても、そんな事を近所で囁かれるのは、母も不本意でしょうし。

「まあ、良くなったり、悪くなったりですよー。」と濁して答えるんですが、

「お母さんの具合はどがいなん?この頃、見んけど」
と、最近、母を見かけなくなったという事を、しきりにつっこんで来るのです。

この人は、「お前の母親はすでに亡くなっていて、お前は死亡届を出さずに、不正に年金を受給してるんじゃないのか」と、私に対し、疑惑の目を向けはじめているのかもしれません。

江田島自警団、恐るべしです。

先ずはこの島で、社会的信用を得る事から始めていきます。

これから島での生活を綴っていきますので、よろしくお願いします。

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