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依存症という病気(2)

前回は、依存症のきっかけとして、ストレスが大きな要因になっているというお話をしました。

まだ読んでいない方は、こちらからどうぞ→依存症という病気(1)

今回は、反射的に反応する回路が形成された脳の細部を、もう少し詳しくお話しします。

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◎神経伝達の仕組み
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人は、心や体への刺激を受けるとドーパミンなどの、神経伝達物質が分泌されます。
ここでいう刺激は、「痛みや怒りや不安」などのネガティブな刺激や「楽しい嬉しい感動した」などのポジティブな刺激も、同じように刺激として神経伝達物質が分泌されます。

また、アルコールやパチンコや薬物などの”刺激”でも、ドーパミンは放出され、多好感を得られます。
外的ストレスを受けると、そのストレスに対処するための物質(アルコールやタバコなど)や行動(パチンコや買い物など)による刺激を実施し、この刺激を繰り返すうちに、
ドーパミン受容体の感度が下がり、神経伝達がされにくくなります。

すると、体は危険と判断し受容体を増やしにかかります。

増えた受容体では、今までと同じ量の刺激では脳が満足できなくなるため、更に強い刺激を求めるようになります。
その為、アルコールの量は増え・パチンコをする時間や回数が増えます。

すると、強い刺激により増えたドーパミンを、受容体がまた受け取りきれなくなり、感度が下がりまた受容体を増やしていきます。

このような状態になっている中、お酒を飲まない・パチンコをしない状態でいると

受容体の増えた神経は、とても過敏になり
「幻聴」「幻覚」「怒り」「イライラ」「不安」などの状態になります。
いわゆる、離脱症状といわれるものです。

このように、受容体が増えたことにより、精神的にとても不安定な状態になり、強い苦痛や不安などの症状に陥り命の危険を伴うため、これらの症状を治すために(無くすために)お酒を飲み、パチンコをし、、、繰り返し、負のスパイラルに陥っていくのです。

実際、この状態になった依存症者にとっては、アルコールやパチンコは不快な心身症状を改善してくれる、一番の薬にとって代わっているのです。

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◎脳への影響
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次に、脳の影響について、もう少し詳しくお話ししますね。

人間の脳は、大まかな役割分担でエリア分けすると

①原始脳
②哺乳類脳
③人間脳

という3つの進化の過程から分けて考えることもできます。

①の原始脳は、別名ハチュウ類脳とも言われ
生理的欲求(生命を維持するための睡眠欲・食欲・排泄欲・性欲など)、快や不快、後天的な条件反射などの生きるための分野を司っています。
また、過去の経験の反復をする際に働く分野で、より安全でいられることを意識します。

②の哺乳類脳は、感覚や記憶、見る・聞く・手足を器用に動かすなどの感じる為の働きをする脳です。
また、仲間意識を持ち群れで行動しようとします。

③の人間脳は、意思と想像の分野として、意思・意欲・先の見通し・計画性・社会性・コミュニケーション・感動・喜びなど
まさに、”人らしさ”を司る働きを担っている「考える脳」です。

これらの脳を持つ人間が、パブロフの犬のように条件反射で
日常的に体験する、心の痛み(ストレス)を感じたら〇〇する!
(〇〇は、お酒・買い物・パチンコ・薬などなど)という回路を強化するとどうなるかというと

後天的な条件反射は、①の原始脳(爬虫類脳)の働きであり
心の痛み(ストレス)を感じると、反射的に原始脳との回路が強化されているので

その為、
「人の気持ちを考える」
「社会的に適した行動かを判断する」
「この行動を起こすことで、どういう結果になるか」
などの、人間脳で”考える”行為が欠落した行動をとることになります。

このように、原始脳を使う回路が強化された依存症の人の脳は
原始脳以外の部分、特に人間脳を使うことが減ります。
結果、人間脳の部分が萎縮・麻痺していくんです。

そうするとどうなるかというと、
その人の人格の部分を司っている、人間脳の機能が低下するため別人のようになってしまうんです。
その人の、人格的良さがなくなってしまう、あるいは悪い方へ変わってしまい、「最近人が変わったよう」だと言われるようになることも少なくありません。

ただ、この脳の回路は実は作り変えることが可能です。

人間脳の働きである、喜びや感動や共感で心の痛み(ストレス)を和らげることを繰り返すことで、新しい回路が形成・強化され発散されていきます。

脳の可塑性により、いくらでも脳の回路は作り変えることは可能なんです。

もちろん、依存所は、まず本人が「自分は依存症であり、病気である」ことを認識することが難しい病気です。
そのため、回復する方法があっても、そこにたどり着けずに多くの患者さんが命を落としています。

日本の、依存症に対する治療方法は相当遅れを取っているのが現状で、
医療の現場ですら、正しい知識を持っている人は一握りでしょう。
そんな中で、回復できている人は、またさらに一握りとなっているのです。

でも、治療法はあるし回復もできるんです!

もし、依存症の人が友人や家族にいて、どうにか今の状況を打開できないものかともがいているなら、諦めないでほしいです。
*ただし、依存症は一度なってしまったら完治はしません。
例えば、アルコール依存症になれば一生お酒は飲めないのです。

しかも、依存症という病気は、本人も身近な大切な人たちもとてもつらく悲しい経験をし、傷つきます。

だからこそ、予防可能なこの依存症という病気を、まずは知ってほしいと思います。
そして、予防の方法を学び習得し、生活の中で活かしてください。
あなたが、あなたらしく素敵な毎日を手に入れられることを、約束します。


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