見出し画像

エッセー「ノルマンディ上陸作戦(D-day)前日の1944年6月5日、アメリカ陸軍第三軍司令官ジョージ・パットンが自らが指揮する第三軍兵士に対し行った演説全文」

画像1


着席。

 諸君、アメリカについての話題で、戦いを望まないとか、戦争から逃れる事を望んでいるとか、その手のものは全てデタラメだ。アメリカ人は闘争を愛している。全ての真のアメリカ人は、戦いの痛みやぶつかり合いを愛している。諸君が子供だった頃、諸君ら誰もが賞賛したのはビー玉遊びの王者とか、一番足の速い奴、大リーグの選手、最強のボクサーだった。アメリカ人は勝者を愛し、敗者を認めない。アメリカ人は、常に勝つためにプレイする。これこそ、アメリカがこれまでも、そしてこれからも負けを知らぬ理由だ。やたらと負けを考える事はアメリカ人に対する冒涜である。戦いとは、男が熱中できる最も重要な競技と言える。戦いは素晴らしいもの全てを発揮させ、それ以外の全てを消し去るのだ。

 諸君ら全員が死ぬのではない。今日この場にいる者のわずか2%が、やがて大きな戦いで殺される事になる。誰しも最初の戦いを怖れる。違うと答える奴が居るなら、そいつはとんでもないホラ吹きだ。しかし、真の英雄とは恐れながらでも戦える男のことなのだ。何人かは戦火の元で恐怖を乗り越えるだろう、数分、数時間、あるいは数日を費やして。だが、死の恐怖という奴が、真の男の名誉、祖国への使命感、そして生来の男らしさを乗り越える事は決してできない。

 諸君は軍隊生活の中で、諸君の言うところの「鳥の糞みたいな教練」についての文句を喚き散らしていることだろう。あれには目的がある。すなわち命令に対する即応と、一定の注意力を作り上げることだ。これは全ての兵隊が備えねばならない。私は自分の足で立てない奴に褒美をくれてやるつもりはない。しかし、あの教練が諸君ら全員を古参兵に作り替えた。諸君の準備は万端だ!生き延びたいのなら、警戒を怠ってはならない。さもなくば、ドイツのクソッタレが背後に忍び寄り、クソで殴り殺してくれるだろう。シチリアには名の刻まれた300個の墓碑がある。軍務を終えて眠る男のものだ。ただし、ドイツ人の墓だ。我々は向こうの士官がやる前に、ロクデナシどもを捕まえて眠らせてやったのだ。

 軍隊とはチームだ。共に暮らし、共に食べ、共に眠り、共に戦うチームである。ここでは個人個人の英雄気取りはクソだ。サタデー・イブニング・ポストに投書した腹立たしいロクデナシは、ファックのやり方も本当の戦争も知らないのだ。そうだ、我々は最高のチームだ。最高の食事に装備、最高の精神、そして世界最高の男たち。我々に逆らう貧相なロクデナシに同情してやる理由などどこにあろうか。

 本物の英雄というものはお伽話の戦士などではない。軍隊では各々が各々、重要な役割を果たしている。だからこそ、その手を止めてはならない。諸君の仕事が重要でないなどと考えてはならない。もしも全てのトラックの運転手が、砲弾の飛翔音を嫌って臆病になって排水溝に真っ逆さまに飛び込んだとしたらどうだ?その臆病なクズはこうも言うだろう、「地獄だ、奴らは私を見逃さない、何千の中のただ1人の男を!」と。全ての男がそんな事を言ったらどうだ?次の瞬間、我々はどうなっているだろうか? ああ、神よ感謝します、アメリカ人は決してそんなことを言うまい。全ての者が務めを果たしている。全ての者が重要だ。武器科の者は銃を供給する為に必要だし、需品科の者は食料や衣服を供給する為に必要だ。我々の行く先には大して盗めるものなどありはしないからな。それに食堂にいるマヌケどもだが、奴らは我々が官給のクソを作り続けられるよう、湯を沸かし飯を作ってくれる。

 誰もが自分のことだけではなく、共に戦う戦友のことを考えなければならない。我々は腰抜けの臆病者が軍に居る事を望まない。奴らはハエのように殺されるべきだ。さもなくば奴らは戦争が終わった後、最低最悪の腰抜けとして家に帰り、より多くの腰抜けを生み出していくだろう。勇敢な男は、より多くの勇敢な男を生み出す。最低最悪の腰抜けを殺せば、我らは勇敢な男の国を手にする。

 私がアフリカ戦線で目にした勇敢な男の1人は、チュニスを目指している最中、猛烈な銃火の中で電柱に登っていた。私は立ち止まり、何をしてるんだと彼に尋ねた。すると彼は「電線を直しています、閣下」と答える。「今やるにはちょいと危険じゃないかね」と私は応じる。「はい、閣下。しかしこのクソ電線を固定しなければならないのです」と彼が言う。「敵機の機銃掃射は気にならないのかね?」と尋ねると、「いいえ、閣下。けれど、必ずやり遂げてご覧に入れます」と答えた。ああ、そこに本物の兵隊がいた。本当の男だ。あまりに大きな代償にも関わらず、一見して些細な任務にも関わらず、その任務に命を捧げた男だ。

 諸君もガベスへ向かうトラックを見た事があるはずだ。あの運転手たちときたら実に見事だった。昼夜を問わずクソ道路を這うように進んでいたのだ。そこら中に砲弾が降り注ぐ中、道を外れる事も無く、止まる事も無く。ほとんどの者は40時間以上もぶっ続けで運転した。我々は古き良きアメリカの根性で成し遂げたのだ。彼らは戦闘要員ではなかった。だが、使命を持った兵隊だった。チームの一員だった。彼らが居なければ、あの戦いには負けていただろう。

 無論、我々は例外無く帰国を望む。加えて、我々は例外なくこの戦争の終結を望む。しかし諸君が倒れ横たわっていては戦争に勝利する事はできない。これを乗り越える最も単純な方法とは、つまりこれを始めたロクデナシを倒すことだ。我々は必ずや奴らを倒し、最低最悪な一切合切を一掃し、それから性病持ちのジャップどもを倒すのだ。とっとと奴らを引っ叩いてやれば、我々はとっとと帰国できる。祖国へ至る近道は、ベルリンと東京を経由する。だから進み続ける。そしてベルリンに到達したならば、私は直々にクソッタレのヘボ画家ヒトラーを撃ち殺してやるつもりだ。

 砲弾穴に飛び込んだとして、そいつが一日中そこにいたとすれば、やがてドイツ野郎が彼を打ちのめすだろう。そして地獄を見る。私の部下は蛸壺壕を掘らない。蛸壺壕など攻勢を遅らせるだけだ。動き続けろ。我々はこの戦争に勝利する。しかし勝利はドイツ人と戦い、我々が奴らよりも何よりも根性を持ちあわせている事を示してこそ得られるのだ。我々はロクデナシどもを撃ち殺すだけではなく、生きたまま奴らの皮を剥ぎ臓物を引きずり出し、戦車の履帯を磨くグリスにするつもりだ。クソのブッシェル・バスケットでお粗末なフン族のコックサッカーどもを皆殺しにするのだ。

 諸君の中には戦火の中で臆病風に吹かれないか心配しているものもいるだろう。安心しろ。私は諸君が諸君の義務を果たすだろう事を保証する。戦争とは血塗れの仕事、殺しの仕事だ。ナチは敵だ。奴らに血を流させるか、諸君が血を流すかだ。根性で奴らを撃て。奴らの腹を搔っ捌いてやれ。諸君の周りに砲弾が降り注ぎ、その後に顔の汚れを拭ったとして、それが泥ではなくかつての唯一無二の親友の成れの果てである血反吐と臓物だと気づいたなら、何をするべきかは誰だって理解する。

 私は「現地点を保持」なる報告を望まない。我々はいかなるクソも保持しない。我々は常に前進し、敵のタマ以外の何を保持しようとも一切の関心を持たない。奴らのタマを"保持"してケツを蹴っ飛ばして、それからクソを漏らすまでタマを捻って蹴りつけてやれ。我々の作戦計画とは前進、前進し続けることだ。格好だけは立派なクソの敵どもを突破するのだ。

 我々が諸君に対してあまりにも困難な要求を行っているといった不満があるのも知っている。私はそうした不満に文句をつけるつもりはない。私は1オンスの汗が1ガロンの血液を救うと信じているのだ。我々が困難を乗り越えれば、より多くのドイツ人を殺す事に繋がる。より多くのドイツ人を殺す事は、我々の戦死者を減らす事に繋がる。つまり困難の達成は戦死者の減少を意味するのである。諸君がこれを確実に覚えてくれる事を望む。私の部下は降伏しない。撃たれてもいない者が捕虜になったという報告など聞きたくはない。撃たれたとしても、諸君はまだ戦えるはずだ。ふざけて言っているのではない。リビアにいたある中尉は胸をルガーで撃たれて脇腹を蜂の巣にされていたが、ヘルメットを脱ぐとそれでドイツ野郎を殴り殺してみせた。私は彼のような男を求めている。その男は銃を拾うとさらに別のドイツ兵を殺した。その間、男の肺には銃弾が突き刺さっていた。諸君の模範だ!

 忘れるな、私はいつでもここにいる。この事実を別の言葉で言い換えることもできる。世界は私が諸君以外を率いて地獄を作り出すことを予定していない。私は諸君以外の軍隊を指揮することを予定していない。そして私は英国に居座ることを予定していない。さあ、最低最悪のドイツ人を探す為に馬鹿をやらかしにいこう。私はいつの日か、小便まみれの後ろ足で立ち上がった連中が「ああっ!糞の第3軍とパットンの糞野郎がまた来たぞ!」と遠吠えする様を目にする事を望む。

 この戦争が終わって諸君が国に戻ったならば、やがて語れる事が1つある。今から30年後、炉辺で膝に孫を抱いて座っている時、孫が「大戦の時に何をしていたの?」と聞いたなら、こう答えたくはあるまい。「ええと、お前の爺さんはルイジアナで糞掘りをしていたんだよ」と。そうではない、諸君は彼の目をまっすぐ見てこう言えるだろう。「孫よ、お前の祖父は偉大なる第3軍にいたのだ。ジョージ・パットンという最低最悪のクソッタレの元に!」と。

 よし、クソッタレども。私の気持ちはわかっただろう。いつも、どこでも、諸君のような素晴らしい男たちを率いて戦えたことを私は誇りに思っている。以上。

宜しければサポートをお願い致します!