SMGの概念を変えたエポックメーカー " H&K MP5 "
世界中の特殊部隊がメインウェポンとして採用しているH&K(ヘッケーラー&コッホ)社のSMG(Sub Macine Gun)MP5。
1980年、LAPD(ロサンゼルス警察)SWATチームの友人が、「河原の石ころをピンポイントで撃てる凄いSMGがあるんだぜ!」と連絡してきたので、LAに出向きMP5をテストシュートしたことがあるが、その時の感動は今でも鮮烈に覚えている。
MP5の特徴として、そのリコイルの軽さが挙げられる。それ故、非常にコントローラブルだ。連射してもマズルジャンプで狙点を外すことはまずない。特殊部隊で叩き込まれる高度な射撃技術ダブルタップ(ターゲットに対し、必ず2発続けて撃ち込む)がいとも簡単にできてしまう。まるで自分の射撃技術が向上した様な錯覚に陥る。
リコイルの軽さは特にフルオート時に最大のメリットとなる。30連のマガジンに収められた9mmパラベラム弾を連射して、半径10センチのグルーピングに収めることも可能。
もちろん、シングルショットでの命中精度もそれまでのSMGとは雲泥の差、例えれば、既存のSMGが拳銃ならばMP5はライフル。河原の小石を点射できるは事実だった。
そ れほどまでに高精度な射撃が可能なのは、MP5が採用しているメカニズムによるとことが大きい。
既存のSMGは構造が単純なオープンチャンバーのストレートブローバック式がメインであったが、MP5はH&K社独自のローラーロッキング・ディレイドブローバック(以下ローラー遅延式機構)とクローズド・ボルト式とクローズドチャンバーを採用している。
ローラー遅延式機構は、同社の傑作アサルトライフルG3でその優秀性が実証されたメカニズムをそのまま流用している。
H&K社のローラー遅延式機構は、ボルトの左右に取り付けられた2個のローラーが、複座ばねにより前進したロッキングピース先端の傾斜部に押し出されて、銃身延長部の溝に嵌合する構造となっている。
発射時の圧力は薬莢と遊底に伝わり、その力はボルトヘッドからローラーを介し銃身延長部とロッキングピースへ分散される。前記二か所は共に傾斜が付いているため、後方への力はローラーをボルトへ押し込む力と、ロッキングピースを後退させる力に分散される。
このため薬莢と遊底の後退速度はローラーが完全にボルト内へ押し込まれるまで低減され、弾丸が銃口を離れるまでは薬室から薬莢が完全には抜け出さないようになっている。
そしてローラーの抵抗がなくなった後、薬莢と遊底(ボルトグループ全体)は慣性により後退していく。
さらに、H&K社のローラー遅延式機構は、ロッキングピース先端の傾斜面角度を変更することにより遊底の後退速度を制御できるため、威力の異なる弾薬でも大幅な設計の変更をせずに対応が可能となっている。
弾丸が銃口から発射されるまでロッキングを解かないこのシステムこそがMP5の高精度なグルーピングと優れたコントロール性の秘密なのである。
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