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バッカスの憂鬱 「ローヌファン至福の一本「コート・デュ・ローヌ レゼルヴ・デ・ダンテル ヴィエイユ・ヴィーニュ」

 Cotes du Rhone " Reserve des Dentelles " Vieilles Vignes (コート・デュ・ローヌ・" レゼルヴ・デ・ダンテル " ヴィエイユ・ヴィーニュ)

 造り手のRemy Ferbras(レミーフェルブラス)は、 シャトー・ヌフ・デュ・パブのグラン・ド・セル地区に本拠を構える大手生産者ル・グランド・セール社の所有するブランドで、産地の個性を重視したラインナップを得意としている。

 ル・グラン・ド・セール社は、シャトー・ヌフのドメーヌ・サン・プレフェのオーナー、カミーユ・セール氏によって1997年に設立され、現在ではブルゴーニュのシャトー・シャサーニュ・モンラッシェなど5つのドメーヌのオーナーであるミシェル・ピカール氏率いるフランス屈指の大手生産者ピカール・グループの一員である。

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 使用されているブドウ品種はグルナッシュ80%、シラー20%。いかにも南ローヌらしいセパージュである。

 しかもブドウは、ヴィエイユ・ヴィーニュのブドウが使われている。

 ヴィエイユ・ヴィーニュ(Vieille Vignes。V.V.と略されることもある)とはフランス語で「樹齢の高いぶどうの木」を意味する言葉である。

 一般的に古木から採れたぶどうから造られたワインは、そうでないものよりもクォリティーが高いと言われている。ブドウは長寿の植物で、大体120年くらいは生きるとされているが、樹齢を重ねるごとに(20年目あたりから)木に成る果実の量が減少し始める。

 そのため、少ない果実や葉は十分に太陽の光を受けることができ、また土の中のミネラルなどの栄養分もひとつひとつの果実に行きわたるので、若木に比べてクォリティーの高いぶどうが出来ると言われている。

 Vieille Vignesのラベル表記に関しては、フランスでは大体30~40年以上の樹齢のものを指すが、実際その樹齢が古木と呼ぶにふさわしいかどうか、生産者によって随分意見が異なる。

 またフランスをはじめ他の国においても「古木」に関して特にこれと言った明確な表記基準はなく、場合によっては商業上の目的だけで使われることも少なくない。

 しかしながら、ブルゴーニュやシャンパーニュをはじめ特にフランスの一流ワイン生産者の間では、古木に対して強いこだわりを持つところも多く(例を挙げればComte Georges de Vogue、Domaine Ponsot、Georges Roumier、Joseph Roty、シャンパーニュではBoillinger等々)、古木のぶどうから非常にクォリティーの高いワインが造られていることも事実である。

 ローヌ河右岸の各畑から収穫されたブドウからは、ヴォークルーズよりの畑から骨格のしっかりした味わいが、ガール側の畑からはエレガントな味わいがそれぞれ得られる。

 ピカール・グループがブルゴーニュで培ったこだわりのワイン醸造法はこのワインにも活かされている。

 適度に熟したブドウを房選りし、グルナッシュはフラッシュ・デタント(真空内でブドウを破砕する技術)でフレッシュな果実味を活かし、シラーは軽いマセラシオン・カルボニックを施し果実味を抽出。温度管理したタンクで醸造し、セメント槽で熟成複製した後に瓶詰めしている。

 開栓し、例によってバカラのグラスに注ぐ。色合いは明るみのある真紅、5分ほど空気に触れさせて開かせ、まずは香りを楽しむ。

 まず感じるのは、濃縮されたベリー系の芳香とプラム、ナツメグといった濃厚な果実の芳醇な香り。

 口に含むと、こだわりの醸造法によるフレッシュな果実味があり、ローヌらしいスパイシーな香りも感じられる。味わいは豊かだが重すぎず、口にするとシルキーなタンニンが舌の上に広がる。

 ローヌの真髄を見るような味わいに思わず頬が緩む。

 フランスワインの中でもローヌが最も好きな自分にとっては至福の一本である。

 因みにこのワイン、130年の歴史を誇り、毎年約1万点のワイン出展されその品質を争う " CONCOURS GENERAL AGRICOLE DE PARIS(パリ農産物コンクール) " において、見事金賞に輝いている。

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