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Essay

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鳴海邦彦が思いつくままに、そして気ままに綴るフリーエッセー。
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#日本映画

エッセー 「めくるめくバブルの記憶 "波の数だけ抱きしめて"」

 バブル景気が弾ける直前の1991年に公開されたホイチョイプロダクションの「波の数だけ抱きしめて」。  「私をスキーに連れてって」や「彼女な水着に着替えたら」など、幾多の名作を生み出してきた馬場監督率いるホイチョイプロダクションだが、この作品こそ、その白眉と言っても過言ではなかろう。  湘南、夏、FM放送、洋楽、恋、青春。134号線流しながら、メンソールのSometime吸ってたあの頃。 映画の中の時代設定はバブル真っ只中の80年代。何もかもが可能だった素晴らしき時代。

エッセー 「18年の時を経ても未だ輝きを失わない傑作 "Returner(リターナー)"」

 2002年に公開された金城武主演の映画「リターナー(Returner)」。公開から18年を経ようとしているが、未だ想い出深い作品である。  金城武も鈴木杏も若かった。超ブチ切れイカレ役の岸谷五郎、最高だった。彼はこの映画で新境地を開いたと言えるだろう。  公開当時は「マトリックス」のパクリだとか酷評する輩もいたが、VFXを担当した" 白組 "のレベルは超高かった。正直、並みのハリウッド作品よりも完成度は遥かに上だ未だに思っている。  18年前の作品ながら、現在見返して

エッセー 「70年代末期を駆け抜けた松田優作の異色作 " 俺達に墓はない "」

 松田優作主演の東映映画 " 俺たちに墓はない " は、ヒット作となった遊戯3部作(最も危険な遊戯、殺人遊戯、処刑遊戯)に続いて製作されたクライム・アクションである。  予告編では、あたかも遊戯シリーズと関連がありそうな思わせぶりのコピーが踊るが、実際は全くの別作品である。  松田優作、志賀勝、岩城滉一、山谷初男といった強烈な個性の主役・準主役もさることながら、内田稔、石橋蓮司、阿藤海、山西道広といった一癖も二癖もある脇役、そして竹田かほり、山科ゆり、岡本麗、森下愛子(友

エッセー 「70年代の荒ぶる青春群像を描いた異色のカーアクション映画 "ヘアピン・サーカス "」

 キャッチコピーは「真夜中のハイウェイ 愛に飢えた2台の車が絡み合う いのちを燃やして疾走する男と女」である。  「青春の門」で有名な直木賞作家・五木寛之原作を元に映画化された異色のカーアクションムービー ' ヘアピン・サーカス ' は、70年代モンドムービーの中でも一際異彩を放つ快作である。  なにしろキャストが凄い。  主人公の元レーサー・鳥尾俊也を演じるのは当時人気絶頂期の現役レーシングドライバー・見崎清志。  相手役の小森美樹役には富士グラチャンシリーズのレ

エッセー 「藤原竜也のキレた演技が最高! " カメレオン "」

 2008年に公開された阪本順治監督、藤原竜也主演の映画「カメレオン」は、松田優作の主演作品を数多く手掛けた脚本家の丸山昇一が、遊戯シリーズ第2弾として執筆した「カメレオンの男」がそのベースとなっている。  30年前に書かれた作品の映画化にあたり、原作者である丸山昇一自身により現代風にリメイクされた。  主演は他界した松田優作に代わり、若手の演技派藤原竜也が抜擢され、変化の激しい役を見事に演じきっている。  ざっとストーリーを紹介すると、カメレオンのようにいくつもの顔を