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62歳の初体験(マスク顛末記)

 薬剤師歴40年。

 もうすぐ創業百年を迎える、田舎の薬局の三代目。
息子夫婦(どっちも薬剤師)に徐々にバトンタッチをしていたところで、この新型コロナの流行騒ぎ。

 「マスクありませんか?」
 「すまんなぁ、手に入らんのじゃ。薬局のおじさんが、手作りマスクをしちょるのを見て、察しておくれーー」
 「じゃぁ、体温計は?」
 「すまん、それもない」
 「消毒アルコールだけでもないの?」
 「それは、ちょこっとだけあるので、お分けできまする」

 さすがに、体温計は手作りしてますとも言えず、約3か月、このやりとりに、疲れました。
 これまで仕入れに使っていたメーカー商社も、お手上げ。


 次男坊(これも薬剤師)の学生時代の友人が、中国との貿易経験豊かな商社に勤めていて、そのつてで、15000枚のマスク確保が5月連休明け。

 通常仕入れ価格の7倍!!
 それでも、マスクない疲れから、思い切って発注をかけました。

 原価でお分けしますといっても、2月初旬まで在庫にあった分は、50枚600円の販売価格で販売していたものを、赤字覚悟で4000円とは商売人の良心が許しません。

 そこで、10枚に小分けして、773円(税込850円)で販売しようと決め、85歳になる母親(これも現役薬剤師)に小袋詰めの作業をさせ、小学校2年生の孫娘(さすがに、この娘は薬剤師ではござりませぬ)にも、コロナ休校を利用して自給10円で手伝ってもらいました。

 あのシャープでも、送料・税込で50枚約4000円なんだから、お客様は分かってくれるはずと思いつつも、店頭に並べてみました。

 「あっ!マスク来たのね」
 「ありがとう、助かるわぁ」のお得意様の声に、嬉しさを噛みしめつつも、ちょうどその頃、ニュースや新聞で「マスクバブルはじける!」の記事。東京では、一気に値下がりという話題に、信用第一でここまで来た田舎の薬局経営者は、心が病んでおります。

 ここで、爺ちゃん薬剤師から政府にひとこと言わせちょくれ!

 マスクの値付けに、消費税の重さをつくづく感じております。
 国民が、命を守るための、アフターコロナの世界では、マスクや除菌液などは必須アイテム。それのすべてに10%の税金かけるということは、命に税金とるのと同じことなんじゃ!
 税金を徴収するのは、あんたたちの仕事のはず。消費税は、政府や行政に代わって税金徴収業務を私たちが店頭で、手数料もいただかずボランティアでやっとるのです。
 少しでも、お客さん、患者さんに負担をかけずに、この苦しいコロナの時間を一緒に乗り越えようと苦心して、これまで続けてきた薬屋稼業のお礼にと、損は覚悟をしちょります。
 でも、消費税は、そんな苦心の値付けの上に、ポンと10%の上乗せの非情な税金なのでありますぞ!

 はじめましての、NOTE初投稿に、愚痴の話はしたくなかったのですが、武漢発のコロナ流行であったのに、中国は戦略的に日本向けの出荷許可を制限していることは、中国との付き合いの古い知り合いの経営者何人もから聞いております。
 今後、治療薬やワクチン開発競争にも勝利をしようというのが、みえみえである、かの国の戦略を、マッチポンプ(自分でマッチで火をつけ、大騒ぎをして、自分で火を消す)などと揶揄している暇はありません。

 田舎の薬局のじぃさん薬剤師でさえ、危機感を肌身に感じる今日この頃です。


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