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【#一日一題 木曜更新】 二日酔い

山陽新聞の「一日一題」が大好きな岡山在住の人間が、勝手に自分の「一日一題」を新聞と同様800字程度で書き、週に1度木曜日に更新します。

しゃべりすぎたと寝床で反省するのは、もう何度目になるだろう。翌朝目覚めてからも、何かが胸につかえていて、コミュニケーションにおける二日酔いとでもいおうか。最中は存分に楽しんだのに、昨夜の自分の振る舞いに後悔を覚えることが多い。

コロナのせい。大人数での集まりでの振る舞いがへたくそになったのは、ぜんぶあの疫病のせい。こんなふうに私は悪くないですよそれはこのご時世のせいですよぜんぶ世の中が悪いんですよと言えばラクだけど、何もかもをコロナのせいにするには、そろそろいい大人のすることではない。

属性の違う人の集まり。人数が多くなればなるほど、全員が知っていそうな話題を探す。自分語りが許されるのは少人数でしっぽりやるときに限られるので、大勢の集まりなら共通項の何かを話す。便利なのは「皆が知るあの人」の自分だけが知る情報。もちろんプライバシーに関わるものではなく、雑多で当たり障りのない話題。時には面白く、時には悲しく。

しかし最近それをやると、冒頭の二日酔いになる。特に後ろめたいことなど話していないのに、寝床で「あれは別に私が話すことでもなかった」「あの場所であの話をする必要があったのか」と反芻し、安酒の如く体に残る。

かといって、大勢の場で自分語りをするものでもない。酒席での自分語りは話者がバトンタッチするからこそ楽しいのであって、ひとつのテーブルを10人近くで囲んでいる場合なら、そこで自分語りを披露できるのは押しの強いキャラクターに限られる。

せいぜい5人くらいだろうか。贅沢をいうなら4人。この人数なら横の彼女も目の前の貴方も斜め前に座るキミも、全員の話が漏れなく聞ける。「昨日食べた南関揚げのいなり寿司がすこぶるうまくて」と言われたら、お店の場所が聞ける。「マヨネーズのストックが棚に3本以上ある」と言われたら互いのうっかり話でうっかり対決ができる。

これなら、いない人の話ではなくあなたの話が聞ける。解決も正解も知り得ないような二日酔いになる話ではなく、あなたの話を聞いて、また話したいなあと思いながら眠りにつけるのである。

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