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【#一日一題 木曜更新】 ファッション引退感

山陽新聞の「一日一題」が大好きな岡山在住の人間が、勝手に自分の「一日一題」を新聞と同様800字以内で書き、週に1度木曜日に更新します。ほらいつか岡山在住ライターとして一日一題から依頼が来るかもしれないし……し…? 

 月に一度、歯科医院で診察中の子を待つ30分にVERYやCLASSYのような女性ファッション誌を眺める。誌面を飾るのは、華やかでリッチでどこか突っ込みどころのあるライフスタイルの紹介。本当にこんな人たちいるのかと思いつつも、これだけ輪郭くっきり描かれると、働く女性・働く母の暮らしはこれが最適解なのかと錯覚する。なわけないんだけども。

 カバーモデルが笑う。雑誌の顔である表紙ロゴにモデルの頭をかぶせる形って、いつからやってるんだっけ。20年くらい前?もっと前かな。
 この表紙スタイルを初めて見た時、私はうら若きグラフィックデザイナーだった。雑誌の象徴でもあるロゴを隠してしまうとは!東京の出版社には、なんて斬新なことをする人いるんだろう。北海道の田舎で、私は日本の知らない中心地に思いをはせた。
 そんなロゴの扱いも、今ではすっかり雑誌表紙の主流である。ある事象が「斬新」から誰も気にかけない「スタンダード」になる。これってとってもすごいこと。これを初めてやった人はすごいなあと、20年以上経った今、なんだか突然しみじみした。

 あらやだ。湿っぽい。
 
 最先端(であろう)のファッション誌を眺めていると、なぜだか昔のことを思い出す。決して近い過去の自分ではなく、うんと昔の若い自分。今だって普段から多少身なりには気を付けているつもりだけど、流行のファッション誌を眺めて若い頃を思い出すなんて、なんだこのファッション引退感は。
 
 明日は、新しく買ったピンクの麻のパンツを履こう。
 ピンクにくっきり映えるロゴTシャツを着よう。
 すっぴんはロゴに負けるからアイラインもきっちり引こう。
 
 ファッション誌からは、なにやら得体の知れないエネルギーがあふれている。おそらくこれは、雑誌に携わる常にトレンドを追う人たちのエネルギーではなかろうか。私の枯れかけたファッション欲は、月にいっぺん開くこのファッション誌によってどうにか枯渇せずに済んでいる。

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