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白井カヲル
2022年2月2日 18:25
月宮にとって『ピアノ』というものは無くてはならない物だった。感情を感じられず、上手く伝えられない彼にとって、人とコミュニケーションを取るための唯一の「架け橋」だったからだ。 幼い頃から家庭に恵まれず、心を殺して生きてきた。『あの子、ずっと無表情よねぇ』『旦那さんが凶暴だと聞いたわ……可哀想に』可哀想--自分はそうなりたくないという時に使われる言葉だ。月宮はその言葉が嫌いだった。『月宮