【アーカイブ】レビュー:「放課後日誌/仔猫契約」

90年代、飛ぶ鳥を落とす勢いだったビデオメーカー・ケイエスエスグループの「セイヨー」レーベルから発売されたビデオ用映画「放課後日誌」シリーズ(96年)。当時「ヤングジャンプ」のグラビアなどで活動していた清水里香、麻生かおり、原田志乃を売出すため、それぞれ単独で主演する3部作が作られ、どのエンディングにも3人が歌う「AFTER SCHOOL」という共通の主題歌が流れていました。
今回取り上げる「仔猫契約」はその第1作で、清水里香の主演作です。

「放課後日誌/仔猫契約」(96年)ビデオジャケ

自分はミレニアム前後にたまたまCS放送の深夜枠で眼にして、ずっと引っかかるモノを感じていた1本でした。ビデオのジャケットを見ると、アンニュイな表情を浮かべた主役の女の子のアップの横に「清く正しい援助交際」というキャッチコピーが付けられています。中身を確認しなければ、どう見てもそっち方面のビデオと勘違いしてしまう外観です(笑) 実際、中古ビデオ販売店でまれに眼にすることがありましたけども、ほとんどの場合"そっち系"の棚に置いてありました。

実はこの作品、いわゆる当時のビデオ用映画としてはとても珍しい、極めて真っ当な"青春アイドルドラマ"だったんです。当然ヌードや性行為シーンは一切ありません。
しかも「仔猫契約」は、年上の男性との交流という、よりホームドラマ色の濃い展開になっています。同世代との恋愛譚という、ありきたりのプロットをなぞっただけの麻生かおり&原田志乃編に比べて全体の出来も抜け出ており、これは清水里香の魅力というより、彼女と交流する中年男に扮した田山涼成氏の好演によるところが大きいと感じました。今でこそ名バイプレーヤーとして映画やTVに引っ張りだこの田山氏ですが、当時はまだそれほどブレイクしていなかったように思います。

ドラマの冒頭、清水里香の母親役でワンシーンだけ登場するのが、70年代の日本映画界が産み落としたカルト女優のひとり・芹明香さん。"反逆のヒロイン"とも称され、ヌードやからみも辞さない体当たりの演技と、反権力的な言動に走るなど物怖じしない強烈な個性で、一時は服役と復帰を繰返しかなりふっくらしていたそうですが、ここでは往年と変わらないすっきりしたラインで、スーツでキメたキャリアウーマンらしい妙齢の美貌と雰囲気を振り撒いています。芝居も落着いた感じで、かつての出演作をご覧になった方なら、ホッとされる場面になってるのではないでしょうか。

しかしながら、当時既に過激さや極端なインパクトを求められていたビデオ用映画において、「放課後日誌」シリーズのような正当な青春アイドル物は、やはり的外れだったのか、さしたる話題を呼ぶこともなくひっそりと埋もれていくのですが…、21世紀に入り、突如として「放課後日誌/仔猫契約」のタイトルがとある実話系雑誌上に登場します。それは主演の清水里香が芸能界を引退後風俗嬢に転身していたことをセンセーショナルに伝える記事で、彼女が某俳優の愛人だったという噂や、当時のグラビアアイドルたちの乱行ぶりが彼女自身が赤裸々に暴露するという内容でした。自分も当時その記事を読みましたが、買うところまでは至りませんでした。
それにしても『トルコ渡り鳥』という主演作を持っていた女優の娘を演じたタレントが、風俗嬢に転身していたなんて、下手な洒落にもなっていないエピソードです…。

そういえば、この「放課後日誌」シリーズ、内容は清廉でもどこか淫靡な匂いがするのは、「仔猫契約」での芹明香さん出演や清水里香の"素顔"のみならず、にっかつロマンポルノにつながるキーワードが色々散りばめられてるからなんですね。
まず、主演を演じる3人組のひとり「麻生かおり」。彼女は1980年代のロマンポルノ末期にSMモノで印象的な演技を見せた麻生かおりさんと同姓同名なんですね。
そして、もうひとり原田志乃(彼女のみ芸名を変えて、現在も芸能界にいるようです)が主演する「女子高生日記/いけない放課後」で、彼女の母親役だたのが、やはり末期ロマンポルノの代表的なSM女優のひとりである長坂しほりさんだったんです。ちなみに麻生かおりさんも長坂しほりさんもロマンポルノでは元祖「花と蛇」シリーズに出演しております。

しかし、波乱万丈な女優人生だった芹明香さんですら霞んでしまうリアルにズベるタレントが跋扈していたドロドロの裏事情こそ、リアル「花と蛇」といえなくもないかもしれません…。
お後が、よろしくないようで。

※本稿は、2010年9月に寄稿した旧外部ブログの内容に大幅な加筆・修正を加えたものです。

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