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【アーカイブ】李小龍没後50周年~黙殺された"ブルース・リー役"俳優秘話(序章)

早逝のスーパースター、ブルース・リー(李小龍)を演じるというのは、アジアの俳優にとってのステータスでもあり、ファンやマニヤにとっては、究極の夢とも言えることです。

リーの死後、いち早く彼を演じたブルース・リィ(黎小龍)こと何宗道は、90年代に制作されたアンソロジー「死闘伝説TURBO」インタビューで「恥ずべき過去、本人に申し訳ない」と俯いていましたが、近年は海外のマニヤと笑顔でツーショット写真に収まる姿がSNSなどで確認されています。

所謂"ソックリさん"を含め、ブルース・リーを演じてきた俳優たちは、中華圏を始め東南アジア、そして遠くハリウッドまで含めれば50人前後はいるかもしれません。前述の何宗道は台湾出身ですし、彼の後に登場したブルース・リ(呂小龍)は、元々香港でショウ・ブラザース作品に出演していました。そのショウ・ブラザースではダニー・リー(李修賢)が『実録ブルース・リーの死』(76年)リー本人を演じています。

『実録ブルース・リーの死』(76年)日本公開版ポスター

韓国からはドラゴン・リー(巨龍)と、本家ゴールデン・ハーベストのリー関連作品に出演した唐龍こと金泰靖を輩出していました。ちなみに何宗道主演デビュー前の台湾では、唐龍という芸名のアクション俳優が「第二のブルース・リー」として一時期売出されましたが、その正体は80年代なかば一部のマニアのみにニンジャ映画の若き気鋭として知られたアレクサンダー・ルー(羅鋭)の実兄だったという逸話もあったりします。

ドラゴン・リー(巨龍)
『死亡の塔』(80年)の唐龍(金泰靖)

フィリピンにもレイ・マロンゾというソックリさん俳優がいましたし、名前は失念しましたが、インドネシアにもその手の俳優がいたはずです。更にハリウッドを見渡せば、旧くは『ケンタッキー・フライド・ムービー』(77年)のエヴァン・キムに始まり、家族公認の伝記映画『ドラゴン/ブルース・リー物語』(93年)に主演したジェイソン・スコット・リーや、『バース・オブ・ザ・ドラゴン』(2017年)のフィリップ・ン(伍允龍)。タランティーノ監督作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)では、韓国系のマイク・モーがリーを演じて、その描写が物議をかもしたことも記憶に新しいところです。

そして何より中華圏でも香港返還後の本土から石天龍なるアヤシいソックリさんが登場したり、熱心なリーのファンであるスティーブン・アウ(歐錦棠)が『1959某日某』(99年)で若き日のリーを演じ、ダニー・チャン(陳國坤)やアーリフ・リー(李治廷)が伝記作品でリーに扮してもいます。今や大スターとなったチャウ・シンチー(周星馳)やドニー・イェン(甄子丹)もリーの映画へのオマージュを繰返しており、この辺は枚挙にいとまがありません。

スティーブン・アウ(歐錦棠)主演作『1959某日某』(99年)日本版DVDジャケ

…ということで、ココまで実はほんの前振りなのです。ブルース・リーを演じた俳優数あれど、日本では全く触れられない”ブルース・リー役”がいるのです。というか、この”ブルース・リー役”は、日本でしか知られていないと思います。ただし、話題に挙がることはありません。次回、ある作品で”ブルース・リー”を演じたひとりの俳優について明らかにして参りましょう。(続く)

※本稿は、SNS「Facebook」ホームへ2021年1月15日に寄稿した内容を大幅に加筆・修正したものです。


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