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【アーカイブ】李小龍没後50周年~黙殺された"ブルース・リー役"俳優秘話(本論&大結局)

ブルース・リー(役)は、スクリーンにのみ登場したわけではありません。ココではあえて名前は挙げませんが、香港や台湾で放送されたTVドラマにもブルース・リーを演じた俳優たちが数名確認できます。
そうした映像作品でブルース・リーを演じてきたなかに、デビット・リー(李尚文/李尚義/李煒尚)という香港の俳優がいたことを憶えている人が、果たしてどれ位いるでしょうか。彼は2001年に日本で制作された『G.O.D 死亡的遊戯』の再現ドラマ部分でブルース・リーを演じていたのです。

『G.O.D 死亡的遊戯』のデビット・リー①
『G.O.D 死亡的遊戯』のデビット・リー②
『G.O.D 死亡的遊戯』のデビット・リー③

…画像を見ればわかる通り、全く似ていません。ブルース・リーというより某皇女と結婚した御仁とか、かつて「コロナは風邪」とのたまっていた某政治団体の頭のような、あまり感情移入できるようなルックスではございません。必ずしも似ている必要は無いんですけど、演技の”熱量”みたいな何かが、我々観客に全く伝わってこないんですよね。身体も作ってきてはいないですし。即興と言えば聞こえはいいですけど、要は片手間、取って付けた感が拭えない演出でした。
劇中の立回りもひどいシロモノでした。腰の引けた突きや蹴り、ヌンチャクを振り回すカットは何とデビット・リー本人ではなくダブルだったのです。ダブル・ヌンチャクではなく”ヌンチャクはダブル”…哀し過ぎます。

ショボい蹴り…
ほとんど”猫パンチ”な突き
ダブル・ヌンチャク…ではなくヌンチャクはダブル。デビット・リーではありません。

ただコレは必ずしも彼の責任ではなく、現場にちゃんとした武術指導が付いていなかったためと思われます。そうしたことも含めこの再現ドラマ部分は、公開当初から批判され、改編後の再発売以降も黙殺され続けたのでした。

当時は自分もデビット・リーのことを単なる無名の役者としか捉えていませんでした。しかし、実は『死亡的遊戯』出演時点で、10本を超える映画に出演していた”ネクスト・ブレイク”候補の若手有望株だったのです。しかも出演作はB級どころか、実力派の監督の下、名のあるスター俳優たちが主演する話題作に次々と抜擢されていたのです。(下記3枚の画像はいずれもデビット・リー出演作です)

王晶監督、アンディ・ラウ(劉德華)主演映画『激戦』(98年)のビデオジャケ。中央左の男性がデビット・リー
リンゴ・ラム(林嶺東)監督、ラウ・チンワン(劉青雲)、レオン・カーフェイ(梁家輝)出演作『ヴィクティム』(99年)のDVDジャケ
マルコ・マック(麥子善)監督、ダニエル・ウー(吳彥祖)主演作『潜入黒社会』(2001年)DVDジャケ

この時期デビット・リーが競演したスター俳優をざっと挙げると…アンディ・ラウ(劉德華)、ジジ・リョン(梁詠琪)、ラウ・チンワン(劉青雲)、レオン・カーフェイ(梁家輝)、イーキン・チェン(鄭伊健)、フランシス・ン(呉鎮宇)、レオン・ライ(黎明)、セシリア・チャン(張栢芝)、ダニエル・ウー(吳彥祖)、スー・チー(舒淇)、ジョーダン・チャン(陳小春)、カレン・モク(莫文蔚)、サム・リー(李燦森)…といった、実に錚々たる面々。そうしたスターたちとの共演の最中、デビット・リーは『死亡的遊戯』でブルース・リーをひっそりと演じていたのです。

その後も2002年の出演映画(日本未公開)で、香港電影金像奨の助演男優賞にノミネートされたこともありましたが、次第に俳優業に行き詰ったのか、2006年に投資関係の仕事に転身したのです。その頃から俳優時代共演が多かった7歳年上の元女優スーキー・クワン(關秀媚)と交際を続けていました。

スーキー・クワン(左)とデビット・リー(右)
映画『潜入黒社会』(2001年)で共演したダニエル・ウーを挟んだスーキー・クワンとデビット・リーのプライベート・ショット
左からデビット・リー、スーキー・クワン、そして映画『激戦』(98年)で共演したサム・リーを交えてのプライベート・ショット

スーキー・クワンは、1987年度ミス香港のファイナリスト後芸能界入りし、97年以降は日本ではバリー・ウォンの通名で知られる香港映画界のヒットメーカー、ウォン・ジン(王晶)監督の作品に起用されるようになり、それなりの本数の映画出演をこなしていました。そして人気を定着させようとしていた矢先の2002年、飲酒運転で衝突事故を起こし、当時の恋人に責任を取らせようとしたため双方とも公務執行妨害で14日間拘留される事案にまで発展してしまいます。このスキャンダルが契機となり、2005年には芸能界から退き、直後前述のようにデビット・リーと交際するようになりましたが、2020年に関係を解消するに至りました。(この項おわり)

※本稿は、SNS「Facebook」ホームへ2021年1月15日に寄稿した内容を大幅に加筆・修正したものです。

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