見出し画像

初めて技術同人誌を書いた話 ― 「Voiceflow&VUI 〜虎の巻〜」ができるまで ―

こんにちは!kun432といいます。

普段は関西を中心に、VUIやスマートスピーカーのイベントや勉強会に参加・登壇・運営したりしています。あと「Voiceflow」というカナダ発、ノンコーディングでAlexa/Google Home向けのアプリを作れるサービスの Global Ambassador みたいな感じで、いろんな情報を日本語で発信したりしています。

今回、はじめて技術書典向けに「Voiceflow」をテーマにした技術同人誌「Voiceflow&VUI 〜虎の巻〜」を執筆することになり、いろいろな紆余曲折を経て販売開始にいたりました。すでに多くの方にご購入いただいているようで、大変感謝しております!ありがとうございます!

そこで今日は少し執筆記というか裏話的なものをここで少し時系列も含めてまとめてみたいと思います。

9月

きっかけは、9月初旬に大阪で行われたVoiceflowハンズオン後の懇親会でした。Voiceflowがまだ日本ではそれほど知られてなかった頃からブログ記事を書かれたりハンズオンをされていた「もっちゃん」さんと初めてお会いして、私もVoiceflowについてのLTAdventCalendarをやっていて、このノウハウをまとめて技術書典とかに出したいですねぇ、という話をしたのが最初です。

で、そこから、本の内容はこういうのがよい、執筆メンバーはこういう人に書いてほしい、とかのざっくりした話をして、9月末頃の技術書典7に既に参加されていたもっちゃんさんがそこで得た知見を踏まえて、最初に企画書的なものを作りました。本格的に始動です。

10月

ここからいろんな方にお声がけが始まります。

Voiceflowはエンジニアじゃなくても簡単に使えて高機能というのがウリです。エンジニア向けの技術書ということだけではなく、初心者向けの入門的な内容や、VUIデザインとかいろんなユースケースでの活用事例、とかも書籍としては書ければいいなという観点で、お声がけさせていただきました。皆様、お忙しいにもかかわらずご了承いただき、結果的にものすごくバラエティ豊かでかつ豪華な執筆陣になりました!しかも技術書典参加経験者が多いというのも非常にありがたかったです!

画像1

11月

メンバーもほぼ固まったので、ここから本格的に書籍の内容を検討開始します。最初の頃は繋がりやすさもあってFacebookメッセンジャーでやりとりしてました。最初に決めたのはだいたいこんな感じのことです。

・各自分担で好きなテーマで書く。
・ただしかぶらないように事前に何を書くか?を共有
・印刷コストと会場搬入等を踏まえて150〜200ページぐらい。
・1人あたり20〜30ページぐらい。
・連絡はslackで。

ページ数については印刷コストにも影響しますので、ある程度のラインを決める必要があります。特にVoiceflowの場合、ブラウザでのGUI操作が基本なのでどうしても画面キャプチャが多くなりページも増えがちです。加えて、どんどん書きたいことが増えてページ数が増えることもあります。ただ書きたいという気持ちを抑えるのはもったいない、ということもあって、この辺はあくまでも目安な設定としてました。その代わりページ数の最低ノルマというのもなくて、そのあたりがバッファみたいな感じですね。た。

次にざっくりのスケジュールと値付けです。スケジュールはこんな感じですね。

・11月:テーマ選定、出店応募
・12月:執筆開始
・1月:最終調整、末に執筆締め切り
・2月:印刷業者へ納入、開催に向けて最終準備

値付けの方は、印刷業者の価格表を見て、ページ数・印刷部数・販売価格・販売予測部数を、Googleスプレッドシートを使って複数のパターンでシミュレーションしました。売れない場合は赤字になるリスクもあるわけです。複数メンバーで頭割りだとそれほど大きい額になるわけではないですが、最低でもこれぐらいのリスク感はある、という前提を踏まえた上で執筆に入りましょうということで。もちろんページ数もこのシミュレーション結果と照らし合わせてます。

あと、日本国内初のVoiceflow本だし(といっても同人誌ですが。ただそれを差し引いても実は単独テーマとして扱ってる世界初の書籍じゃないかな?と思ってたりします。)、せっかくなのでVoiceflow公式からもちょっとコメントもらいたいということで、この辺で頭出ししてました。

月末に技術書典への出店応募を行いました。

12月

12月半ばに技術書典から出店に当選した通知があり、ここから本格的な執筆作業です。

執筆環境は、多くの他の方々と同じようにre:view-starterを使っています。PDF生成まで自動で行えるCI/CD設定済のgitレポジトリをもっちゃんさんが構築してくれたので、各執筆者はそれぞれの環境で執筆してpush、PDFで確認、みたいな一連の流れを各執筆者内ですすめることができるようになっていました。このあたりは非常に楽チンでとても助かりました!

また、この少し前ぐらいからやりとりはslackに移ってました。slackだと、スレッドも使えるし、コードブロックも使えたりするので、gitの操作だったりre:viewの記法の質問・疑問、TIPSみたいなのものも全部slackでやり取りしてました。

執筆作業は年末年始で8割ぐらい完成するようにがんばりましょう、という感じでした。ちなみに某「がおってる」人はこの時点で、すでに執筆完了してたりします・・・

個人的にはこの頃すごく忙しくて、

・Voice Con Japan 2020の運営スタッフとして準備
・#VFJUG 東京ハンズオンの資料作成
・東京でのAlexaスキルLearning Dayに参加、夜は#VFJUG 東京ハンズオンの講師
・QiitaのAdvent Calendar記事2本
・腰のヘルニアになった
・仕事も忙しかった

と、いろいろ並行でやりすぎてかなり頭おかしい感じになってて、執筆の方は構成づくりしか進めれてなかったですね・・・このカオスは1月も続きます・・・

1月

ということで、私の方は本格的な執筆開始は1月でした。私のテーマは「Googleスプレッドシート連携」。初心者でもVoiceflowだと簡単にスキルが作れるのですが、ある程度慣れてくるとデータベース的なものを扱いたくなります。そこで初心者から中級者に向けてのステップアップみたいなところでGoogleスプレッドシートの使い方を取り上げました。

構成だけは大枠で決めていたのとAdvent CalendarでもGoogleスプレッドシートは取り上げていたので執筆自体は早かったと思います。

ただ、ちょっと苦労したのは、ページ送りです。re:viewではページ送りとかもよしなに調整してくれるんですが、画面キャプチャの画像サイズによっては空白がたくさんできるページになったり、一つの次のページに跨ってしまっていちいちページをめくる必要が出てきてしまったり。直してはpushしてPDFで確認、というのを繰り返してましたが、一つ直すと後ろのページに影響が出たりで、かなり手間がかかりました。ただここは実際に読んでいただく方が書籍を見ながら手を動かすときに影響してくる部分なので、できるだけ読みやすさを損なわないようにしたつもりです。

そんなこんなでなんとか1月末のちょっと前には自分のパートは完成できました。そしてこの頃には、表紙デザインやVoiceflow公式の前書きも届いてました。

表紙デザインは数パターンも作っていただいてどれもクオリティが高くて捨てがたい感じだったのですが、多数決で決めました。素晴らしいデザインありがとうございました!>小嶋さん

Voiceflow公式からの前書きもとても素晴らしいものでした。よくあるシンプルで短い前書きを想像していたので、Voiceflow黎明期からここまでの苦労みたいな話をがっつりと写真なども交えて書いてもらえてて、これだけでも読んでもらう価値があるのではないかなと思っています。
Thanks!!! Voiceflow team!!!

1月末には全員のパートが揃ったのでマージしてみんなでそれぞれをチェックして微調整です。この時点で、スケジュールもほぼ予定通り、あとは印刷業者さんに納入すればOKという感じでした。当日の売り子対応どうしましょう?とかすでに心は開催日に向かっていました。

が、ここからいろんな事が起こります・・・

2月

納入直前になって大変なことが2つ起きます・・・

①Voiceflowのアップデートによるデザインの変更

なんとVoiceflowのアップデートでUIデザインが変わってしまったのでした・・・特に大きかったのはVoiceflowで使用することが最も多い、アレクサに発話させるためのブロックと、ユーザからの発話を受け取って対話モデルを作るブロックのデザインが変わってしまったことです。

今回の書籍のターゲットは、エンジニアだけではありません。デザインや企画に携わる方や、特にこれからVoiceflowを始めてみようという初心者の方も含まれます。出たばっかりの本で内容が違う、そこをうまく読み替えてほしいというのは非常に苦しいです。電子書籍なら更新すればいいのですが、印刷物の場合はそうはいきません。

特に大変なのは画面キャプチャの取り直しです。どの章も、サンプルスキルをステップバイステップ形式で作りながら説明するような内容になっているため、スキルも1から作り直しつつ、キャプチャ撮って、さらに画像内に説明を追加、みたいなことをすべてやり直す必要が出てきます。私の章だけでも約70枚ほどのキャプチャ画像がありましたのでこれを全部撮り直すのはかなりキツい・・・

とりあえず変更内容と新しいインタフェースの使い方をざくっとまとめてslackで共有、修正範囲を洗い出しました。その後、印刷業者さんへのスケジュールを再度確認して、一旦は修正する方向で進めて、もし修正がおっつかない場合、現時点で納入・電子版もセットにしてそっちを更新する等を検討する、ということで、各自修正作業に入りました。

ここからが怒涛の修正作業、なのですが、なんと素晴らしいことに皆さん1週間程度で新しいインタフェースへの修正を完了するという神業!いやぁ、もうほんとすごいメンバーだなと改めて思います。私の方もキャプチャ取り直したり説明文修正したりをなんとかかんとか2月半ばにまでに完了し、再度納入OK状態まで行きました。

が、それだけでは終わりませんでした・・・

②コロナウイルスの影響拡大

はい、皆様にも現在いろいろと生活への影響が出ているこれです。このニュースが広がるにつれて、技術書典への出典を見送るサークルもちらほら出てきました。参加者への健康影響ももちろん懸念されますが、イベントが開催されないとなると、書籍の売れ行きにも影響し、それはコストや値付けにも影響してきます。

この時点ではイベント開催中止は確定しておらず、印刷納期も近づいていたため、一旦ここで印刷部数を当初より減らして納入しました。そして数日後に正式にイベント中止が決まりました・・・

同時にオンラインでの「技術書典応援祭」が開催されることが発表されましたが、この時点ではいつから始まるのかもまだ決まってなかったのと、対面でのイベントがないことにより本に触れていただく機会が減ることが予想されました。そこで応援祭が始まるまでに知って頂ける機会を少しでも増やそうということでランディングページを作りました。

画像でもご紹介しておきます。

画像3

ちなみにランディングページは以下のツールを使っています。

・Mobirise(https://mobirise.com/
・GitHub(https://github.com/
・Netlify(https://www.netlify.com/

Mobiriseはノンコーディングでおしゃれなサイトが作れるツールです。いろんなパーツのテンプレートを選択して、テキストや画像などを修正、出力するだけでサイトができます。この出力データをNetlifyと連携させたGitHubのレポジトリにpushすることで、自動的に反映・公開までが行われるようにしました。Mobiriseもかんたんだし、GitHub+Netlifyの組み合わせも楽ちんなので、シンプルにランディングページ作るならオススメです。

そんな感じで、書籍の内容やウリ、執筆者の紹介、また技術書典応援祭の日程確定後を踏まえて販売サイトへのリンクなどを用意して、ここを中心に事前に告知して、応援祭開始に備えます。

そしていよいよ応援祭の日程の発表です!

3月

3/7の夜、待ちに待った「技術書典 応援祭」が開催されました!

開始直後は少し不具合があったものの徐々に解消され今は何も問題なく購入ができる状態になっています。開催中止決定からほんの数週間でここまで来るとは思いませんでした。ほんと運営の皆様の努力には頭が下がります。ありがとうございます!

そしてご購入いただいた皆様の声!ほんとは全部ご紹介したいぐらいなのですが、長くなってしまうので少しだけ・・・(ご紹介できなかった皆様、ごめんなさい!)

他にも多数の方にご購入いただいた旨のツイートを頂いており、またそれ以外にも購入していただいた方や、本の感想等を頂いている方もいらっしゃって大変感激しております。

ここまで来れたのは、ご購入いただいた方、そして色々大変な中で応援祭開催までご尽力された技術書典スタッフの皆様のおかげです。この場をお借りして感謝の意を伝えたいです。本当にありがとうございました!

まとめ

改めて振り返ってみると、たった数ヶ月だけどいろいろあったし中身が濃かったなーという感じです。書籍の執筆は大変だったし、いろいろ予想外のこともたくさんあったけど、実際に本が完成して、それを購入していただけるというのは達成感があると同時にとても嬉しいものです。良い経験をさせてもらいました。

また、これを書くにあたって過去のFacebookメッセンジャーやslackでのやり取りを見直してみたのですが、改めて素晴らしいメンバーに恵まれたなと思いました。各自がそれぞれの仕事をしながら、同時に他のイベントや勉強会の準備とかも並行でやってたりするので、ホント大変だったと思うのですが、パワフルかつポジティブな皆様に助けられてここまで来れたと思います。ほんとありがとうございました、そしてお疲れ様でございました。

そんな私たちの苦労が詰まった「Voiceflow&VUI 〜虎の巻〜」、もしご興味があればぜひぜひ手にとって見ていただき、皆様の音声アプリ開発のお役に少しでも立てれば幸いですし、ご批判やご意見等も今後の書籍執筆や日本でのVoiceflowの普及に生かしていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

4/5まで引き続き「技術書典 応援祭」にて販売しておりますので、ご購入は↓からどうぞ!

また、もっとVoiceflowについていろいろ知りたい、という方は、「Voiceflow Japan User Group(#VFJUG)」という日本語ユーザグループで情報交換してますので、興味があればぜひこちらにもご参加ください。

来年もやるぞー!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?